07.
「僕は、違法ドール使用者、なのか?」
「あぁ、そうだよ?君のドールは国に登録されてないでしょ?」
そうだ。ドールを使うには、国に報告し許可証を出してもらわなければならない。それに、呪術者になるにも、一定の実力がないとなれない。
もちろん、悠も許可証を貰っているし、許可の範囲外のことはしてはならない。もし許可されていないことをした場合、ドール剥奪、呪術者免許剥奪、最悪の場合、逮捕にいたる。
「許可されていないドールで、しかも呪術者として未熟な君に暴れ回られると、困っちゃうんだよね。それに、このプロトタクト。」
真司はそう言いながら、少年の身につけていた十字架のネックレスを机に放り投げる。ガシャンと大きな音を立てて落下したそれは、照明の光を受けて鈍く光った。
「これさぁ、相当力強いよ?君なんかがこれ使ったらいつか暴走して、君の命も危なかったんだよ?」
ネックレスを見つめた少年はそっと手に取り力を込めた。しかし、既にそのプロトタクトからは真司の呪術で呪力が抜かれている。いくら力を込めても、もう呪力を発揮することは無いのだ。少年はうなだれるとポツリポツリと話し出した。
「このネックレスは、父さんの形見なんだ。父さんは呪術者として立派に働いていた。でも病気で死んだ。死ぬ間際、父さんはこのネックレスをくれたんだ。僕は父さんがドールを使うところをよく見てたから使い方はわかった。父さんの真似をしたら直ぐにドールは動いた。許可証がないと使っちゃダメなんて知らなかったんだ。どうか、ドールとネックレスの呪力を返して…。父さんのような立派な呪術者に必ずなってみせるから…。」
そこまで言うと、少年はしくしくと泣き始めた。
「悠!社長!ドールくん、イケメンになったよ~!この子、僕が名ずけても…」
とんでもなく間が悪いやつである。梓の言葉がどんどん小さくなっていく。梓は真顔で悠をドール保管所へ引っ張っていく。
「ねぇちょっと!今どういう状況?!少年起きたなら呼んでくれるって言ってたよね?!」
「あぁ、悪い悪い。とりあえず今はあっち行かない方がいい。」
コソコソと梓と悠の会議は続く。戻らない、という選択肢を選んだ2人は、保管所で静かに待つことにした。
程なくして保管所の扉がノックされた。
「梓?悠?こっちへおいで」
社長のいつも通りの優しい声に呼ばれ、事務所の方へ戻る。すると、さっきまであんなにも重苦しかった空気がまるで別の部屋のように変わっていた。ソファには目をきらきらさせた少年の姿。
「悠さん!これからよろしくお願いします!!」
「ちょ、待て。全く話が見えない。」
「僕!雪見勝斗って言います!絶対絶対立派な呪術者になるんで!悠さん厳しいご指導よろしくお願いします!!」
厳しいご指導だと?もしかしてこれは、と嫌な予感のし始めた悠は、社長に視線を向ける。
「勝斗くんは、今日からうちの社員です!悠、指導よろしくね!」
「やっぱり!!!絶対嫌っす!拒否!!」
悠は30分程、勝斗のキラキラしために追いかけられたのだった。
はなちゃんです。
今回1回もドール出てこなくてすみません。
勝斗くんは、現実だと義務教育を受けなければいけない時期ですが、そこは何も考えないでください。勝斗くんの名前のアイデアは雪見だい〇くです。社長は「社員!」とドヤ顔で言ってますが、正しくは、「悠に弟子入り!」ということです。悠は勝斗くんのキラキラ目から逃げきれたのでしょうか。次回、ドール沢山出ます。友達に大人気のティーちゃんもいっぱい出ますので読んでやってください。