表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私鉄沿線恋愛専科 〜幼なじみをくっつけたいけど、どちらもいじっぱりで困ってます〜  作者: 御子柴 流歌
12月篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/39

12月篇第2話: クリスマスの予定が不安だらけで困ってます



「だったら、ひとつ相談があるんだけど」


「いいけど、なに? どしたの?」



 朝の登校ルート、私鉄沿線。

 エリカが小声で言ってくる。


 何だろう。

 話しづらいことだったりするのだろうか。


 ――シュウスケくんとのことだと、半分予想通り・半分想定外だったりするけれど。



「僕が聴いてて大丈夫なタイプのヤツ?」


「んー……」



 ユウイチの疑問には、とても曖昧な返事――返事? 相鎚にもなっているのかよくわからない声を返した。

 別にどっちでも構わないよ、と言っていそうな表情だけど、声はそうでもない感じ。

 エリカにしては珍しい、ハッキリしない答え方だった。


 その様子を察したユウイチは、そのまま歩く速度を速めてシュウスケくんの隣に並んだ。



「それで、どしたの?」


「ルミってさ、ユウイチくんに学祭のこととか話した?」


「ううん」


「そうなるよねー……」


「ってことはエリカも?」



 頷きが返ってきた。


 そりゃそうだ、って話。


 ちょっと、今年のネタは――。


 サプライズで黙っているのとはちょっと違う理由で、できれば当日まで秘密しておきたいモノだったりするわけで。



「ああ、そうだ。今日さ、帰りに本屋行かねえ?」


「全然いいよ。最近あんまり行ってなかったから丁度いいや」


「お? 俺、空気読んでる?」


「珍しくな」


「……うっせーやい」



 男子ふたりは今日の予定を決めているらしい。


 折角だし、私もちょっと動いてみようかしら。





             ○





 ようやくの昼休み。


 閉じた教科書をもう一度開いて、その陰で大あくびをしているエリカ。


 ――腋がお留守だぞ、と。



「眠そうねえ」


「ひぃやあ!?」



 そっと指先で撫でてあげると、教室中に響き渡る悲鳴。

 というか、嬌声。

 集中していなかった証拠。


 ――まぁ、欠伸をしていた人が集中しているわけなんか無いか。



「ちょっと、やめてよ!」


「まぁまぁ。眠気は吹っ飛んだでしょ?」


「そんな実力行使いらないっ」



 ぷいっとそっぽを向くエリカ。



「まぁまぁ。あとでカフェオレ奢ってあげるから」


「……甘いヤツね」


「はいはい」



 ――ここでシュウスケくんだったら『コドモか』とか溢しちゃうんだろうなぁ。



「おふたりさん、やっほーぃ」


「あ、ケイコ」



 廊下から声がしたと思えばケイコ――緑川(みどりかわ)慶子(けいこ)

 去年同じクラスになって以来、今でも仲は良い。

 ――いろいろと面白い話を集めてくるのが大好きな娘だ。

 こちらのプライベートな話題のお漏らしには注意が必要だけど、基本的にはよい子だ。

 わりと扱いやすいし。



「なになに? またカレシとののろけ話でもしてたの?」


「ほんっとにさー……違うって言ってるっしょ?」


「いやいや。何をおっしゃいますやら」



 呆れてものも言えないぜ、というような顔でエリカを見下ろすケイコ。

 何かしらのイベントがあるごとに受けるガサ入れに耐えきれず、ちょこちょこと情報提供をしてしまっているせいで、最近の話題の振られ方はいつもこうだった。


 ――どうして『夫婦円満杓文字』の話を自分からしちゃったかなぁ。


 まぁ、エリカが言わなくても私が言ってたから、展開としてはあんまり変わらなかったかも知れないけど。

 後々のイジられ方が変わったかも知れないとは思うけれど。


 ちょっと、ネタを投下してあげようかしら。


 外堀を、埋めていくなら、今のうち。



「……待ち受けの壁紙、そんな写真にしてるくせに」


「そ、それはー……」


「え? なになに? どんなのにしてるのよ」


「だ、だめ!」


「あのねー。恋する乙女感たっぷりなヤツ」


「ルミ!?」



 わかる、わかる。気持ちはわかるわよー。


 大好きな俳優の画像と、シュウスケくんとユウイチの学祭のときの写真を、アプリ使って作ったお手製の待ち受け画像。

 帰りの電車の中で、何だか一生懸命に作ってるなぁ、と思ってこっそりのぞき見たら、その画像。

 ハートとか文字とかを入れなかったり、いちばん面積を割いているのが俳優さんだったりするのは、何かの意地だったりするのかしら。



空風(そらかぜ)さーん、ちょっといい? 委員会の関係でちょっと手伝いしてほしかったんだけど、お昼ご飯とか大丈夫?」


「あ、はーい。だいじょうぶでーす」



 廊下から再び声がしたと思えば、担任の小山田(おやまだ)先生だった。


 エリカが、ふう、と小さく息を吐いたのは見逃さない。

 今はリリースして上げるけど、ね。



「……ってことだから、ゴメンね。ちょっと行ってくる」


「いってらっしゃーい」


「いてらー、お土産買ってきてねー」


「なんでよ、旅行かなんかじゃあるまいし」



 ケイコの茶化しにため息を返して、小走りに出て行くエリカ。

 何となくふたりで手を振って送り出し終わると、ケイコが勢いよくこちらに顔を向けてきた。



「で? エリカの待ち受けってどんなの?」


「これ」



 ――実は私も、エリカに同じパターンの画像を作ってもらっていたりする。

 私の場合は俳優さんの画像は抜いてあるバージョンだけれど。



「ははー……、にゃるほろねー」



 画像の中のエリカとシュウスケくんを交互に見て、絵に描いたようなニヤニヤ笑いを浮かべるケイコだった。



「なるほど、納得。たしかに恋する乙女感たっぷりだわ。っていうか、男前ね」


「でしょ?」


「……いやいやいや。『でしょ?』じゃないわよ」


「は?」



 呆れ度合いをさらに増やした視線を、思い切りぶつけられた。



「なんでよ」


「エリカとその『彼』を晒してるのはいいんだけどさ。それはいいんだけどさ」


「何よ、まどろっこしいわね」



 テレビの常套句じゃないんだから。



「こっちは?」


「……ん?」



 ケイコが指差した先には、ユウイチ。

 月雁(つきかり)高校の学校祭のときに撮った写真だった。



「っていうか、何勝手に他人の写真フォルダいじってるのよ」


「油断大敵」


「うるさいわねえ」



 間違っていないだけにあまり強く出られない。


 ――でも、よりによって月雁祭最終日、浴衣を着ているときの写真を出してこなくてもいいじゃない。



「で? 誰?」


「それは私の幼なじみ」


「……What?」



 何でそこで英語。

 しかもなんでキレ気味なの。



「ルミ、アンタ全然エリカのこと言えないじゃん!」


「何でさ」


「しかも、こっちもイケメンだしっ!」



 トーンが強まる。

 ――本懐はそっち?



「まぁでも、幼なじみかー。あーあ、『こっちの子分けて』って言おうとしたのに」


「『分けて』ってどういうことよ」



 ――あげないわよ。



「うん、だからそれは諦めるってば」


「なんでよ」


「いや待って待って、そこでその反応はおかしいっしょ」


「何の話してるのー?」


「エリカとルミのイケメン幼なじみの話」


「え!?」


「何系イケメン?」


「写真あんの?」



 色恋沙汰の好きそうなクラスメイトも寄ってきた。


 そして、ふと気づく。

 私のスマホはまだケイコの手の中。


 ――終わった。



「ただいまー……って、何この状況。何があったの?」


「ごめん、エリカ」


「え? ……あああ!!?」



 見せられている画面に気が付いたエリカの絶叫。

 それに気が付いた皆は私とエリカに、妙に熱い視線を送ってくる。



「ねえねえ、このふたりって学祭に来るの?」


「え?」「え?」



 エリカとリアクションが重なる。



「『え?』じゃなくてさ。アンタたちふたりがこのふたりンとこの学祭に行ってるんだから、来てくれないと割に合わないわよ?」


「割に合わないって……。何と比較してるのよ」


「あ? まさか狙ってるとか……?」


「警戒しないでよ。さすがにどっちも取ったりはしないわよー。……たぶんね」



 そう言って、怪訝な顔をしたエリカにウインクをカマすケイコ。


 口調通りに本気で言っているわけじゃないのは察する。


 けれど、最後の台詞にはやっぱり何となく不安感が漂っていて、偶然にもエリカとしばらくの間見つめ合ってしまった。






ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


事件発生の予兆的にはこっちの方がヤバそうですねえ。

乞うご期待。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ