オールトの雲にいるなにか
私は辺境と称するにもおこがましい、全てがまばらな場所にいた。
隣人がいるはずであるが、暗く沈んでいるから見つけることができなかった。私自身もご同様であるから、お互い様ではあるが。
認識できぬ存在よりも、遥か彼方で光り輝く存在の方が、よほど隣人と呼べると思う。100光年先にある手の届かぬものであっても、だ。
私にできるたのは、遠い星々を眺めることだけだった。私にはそれだけが許されていた。
ああ、同じように輝く存在になりたい――そのような想いを抱いたこともある。だが、それはかなわぬ夢であった。私は矮小で熱を持たない、単純な混ざりものに過ぎないからだ。
諦観を諦念で塗り固めた重々しさと共に、私はただ時を過ごしていた。
だが、ある時の事だった。スッともフッとも感じることのない微小な力が私に作用したような気がした。
それは本当に小さなもので、ただの錯覚か気の迷いだと思っていたが、何かがゆっくりと、しかし確実に変わっていたのだ。
10年が経ち、100年の時が流れ、それが10回ほども繰り返されて、私はようやく理解と確信を得たのだった。
太陽系外縁部に私を縛り付けていた物理的な均衡が崩れ、どこかに向かって落ちていることを。虚ろ気な光を放っていた恒星の姿が、じわりと大きくなっていた。
水素と酸素、炭素や窒素の化合物で出来た私の肌に、太陽風の微かな圧を感じる。いずれ私は、ほうき星になるのだろう。
私は輝く星となるのだ――
――俺っちの先にいた彗星の事知らないすか?
あ、先に挨拶しねーと……ちぃーっす! 俺っちはクールな彗星っす。太陽系の外れも外れ、超ぉド田舎、オールトの雲って所から来たっす。
産まれた時はもっと太陽系の内側にいたんすけどね。かなーり昔のことすけど、超デカくて超重力の強い木星先輩に、ちょっとどけやコラって突き飛ばされたんすよ。
俺っちのカラダなんて1キロくらいしかないクソゴミナメクジっしょ。142,984倍もある先輩の重力に振り回されて、遠くまで飛ばされたっす。
で、いい感じにバランスがとれちゃって1光年くらいのところで暇してたっす。随分長い時間だったな――ええと、1000万年くらいか。そんな俺っちみたいなのが、オールトの雲に結構いるんすよ。
でね、こないだ――つっても数万年くらい前っすけど、なんかカラダに違和感を感じたっす。なんかね、随分遠くのところを恒星がさーっと通り過ぎたんす。
俺っち勉強できねーからわからねーけど、重力波の影響ってやつすかね? それでちょいとカラダを揺らされて、太陽系の内側に落ち始めたっす。
そんで、今ここにいるわけっす。立派なほうき星ってやつになってね。
ああ、そうだった。俺より先に落ちていったヤツの事っす。さっきまで、バリバリ輝いていたっすけど、なんで消えちゃったっすか?
え? 地球にぶつかりそうになって、核で爆破されたって……マジっすか――!
あ、俺っちは大丈夫っす。見た目チャラいっすけど、ちゃんと進路通してる箒星っすから。