表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オールトの雲にいるなにか

作者: 有音 凍

 私は辺境と称するにもおこがましい、全てがまばらな場所にいた。


 隣人がいるはずであるが、暗く沈んでいるから見つけることができなかった。私自身もご同様であるから、お互い様ではあるが。


 認識できぬ存在よりも、遥か彼方で光り輝く存在の方が、よほど隣人と呼べると思う。100光年先にある手の届かぬものであっても、だ。


 私にできるたのは、遠い星々を眺めることだけだった。私にはそれだけが許されていた。


 ああ、同じように輝く存在になりたい――そのような想いを抱いたこともある。だが、それはかなわぬ夢であった。私は矮小で熱を持たない、単純な混ざりものに過ぎないからだ。


 諦観を諦念で塗り固めた重々しさと共に、私はただ時を過ごしていた。


 だが、ある時の事だった。スッともフッとも感じることのない微小な力が私に作用したような気がした。


 それは本当に小さなもので、ただの錯覚か気の迷いだと思っていたが、何かがゆっくりと、しかし確実に変わっていたのだ。


 10年が経ち、100年の時が流れ、それが10回ほども繰り返されて、私はようやく理解と確信を得たのだった。


 太陽系外縁部に私を縛り付けていた物理的な均衡が崩れ、どこかに向かって落ちていることを。虚ろ気な光を放っていた恒星の姿が、じわりと大きくなっていた。


 水素と酸素、炭素や窒素の化合物で出来た私の肌に、太陽風の微かな圧を感じる。いずれ私は、ほうき星(コメート)になるのだろう。


 私は輝く星となるのだ――




 ――俺っちの先にいた彗星の事知らないすか?


 あ、先に挨拶しねーと……ちぃーっす! 俺っちはクールな彗星っす。太陽系の外れも外れ、超ぉド田舎、オールトの雲って所から来たっす。


 産まれた時はもっと太陽系の内側にいたんすけどね。かなーり昔のことすけど、超デカくて超重力の強い木星先輩(パイセン)に、ちょっとどけやコラって突き飛ばされたんすよ。


 俺っちのカラダなんて1キロくらいしかないクソゴミナメクジっしょ。142,984倍もある先輩の重力に振り回されて、遠くまで飛ばされたっす。

 

 で、いい感じにバランスがとれちゃって1光年くらいのところで暇してたっす。随分長い時間だったな――ええと、1000万年くらいか。そんな俺っちみたいなのが、オールトの雲に結構いるんすよ。


 でね、こないだ――つっても数万年くらい前っすけど、なんかカラダに違和感を感じたっす。なんかね、随分遠くのところを恒星がさーっと通り過ぎたんす。


 俺っち勉強できねーからわからねーけど、重力波の影響ってやつすかね? それでちょいとカラダを揺らされて、太陽系の内側に落ち始めたっす。


 そんで、今ここにいるわけっす。立派なほうき星ってやつになってね。


 ああ、そうだった。俺より先に落ちていったヤツの事っす。さっきまで、バリバリ輝いていたっすけど、なんで消えちゃったっすか?


 え? 地球にぶつかりそうになって、核で爆破(アルマゲドン)されたって……マジっすか――!


 あ、俺っちは大丈夫っす。見た目チャラいっすけど、ちゃんと進路(スジ)通してる箒星っすから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ルビなのですが、木星「先輩」に「パイセン」と振ったほうが見た目のバランスが良いように感じましたが、いかがなものでしょうか? 同じく「核で爆破」で「アルマゲドン」。差し出がましい意見かと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ