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「相変わらず、古くさい銃を使ってんな。」

 武器屋の店主はティオの持つ二丁の銃を眺めながら呟いた。

 ティオの持つ銃、一つは口径9mmの銃、ブルーエトランゼmg98と12,5mmの大口径拳銃のラストジェノサイ12,5スペシャルだ。どちらもかなりの旧式の拳銃だ。

「古くさくても、これが俺の相棒なんでね。」

「そりゃ、いえねえことはねえが。」

 店主は肩をすくるようにため息をつく。

「いっそのこと、こいつをうっぱらって新しい銃を買ったらどうなんだ?こんだけ旧式だとそれなりにいい値段を付ける奴だっているだろうに。」

「俺にとって、こいつはいくら積まれても手放す気にはなれねえな。あんただってそうだろう?長年使い慣れてきた工具を高値で売ってくれって言われて手放したりするか?」

 店主はまたため息をつく。

「そりゃそうだがな・・・。だけど、銃ってのは手前の命を預かるもんだからよ。新しい銃の方が信頼も増すってもんだろうが。」

「だからあんたみたいな優秀なガンスミスがいるんだろうが。」

 ティオは負けじと肩をすくめる。

「まあ、そういわれれば悪い気はしねえがよ。」

 店内には新型から旧式までありとあらゆるタイプの銃が置かれている。それこそハンドガンからライフル、ショットガン、マシンガン、アサルトライフル、サブマシンガン、グレネードランチャー・・・・。数え上げたらきりがない。

「で?いつものでいいんだな?」

 足下の棚をあさっていた店主が声を上げる。

「ああ。いつもの9mmを8ダースと12,5mmを2ダースだな。」

 ティオはカウンターにおいてあった自分の銃を取り上げると脇と腰にしまった。

「12,5mmだって・・・。ああ、50口径の奴か。なんだ?今回は使う機会があるってのか?あんなもん、一つ目鬼を撃ち殺すときぐらいにしかつかわねえだろうに。」

「今回はそれ並みの奴が出そうなんだよ。旧時代の自動警備システムって言う一つ目鬼がな。」

「何?!・・・いってえ!」

 思わず頭を上げてしまった店主の脳天に堅いカウンターの木板が襲いかかった。

「くおお・・・。」

「なにやってんだか。」

 しばらくもだえ苦しんでいた彼を見てティオは冷めた視線を送ってやった。これも彼なりの愛情表現の方法・・・であるはずがない。

「変な文章をつかうな!」

 店主は叫びながら起きあがった。

「なんだ?・・・変な文章?」

「こっちのことだ・・・だけどよ。旧世代の自動警備システムってそんなやばいもんとやりあうたあ・・・おまえ、頭でもやっちまったか?」

「親父・・・それは失礼ってもんだ。」

 ティオは店主の頭を軽くこついだ。

「いて!今打ったところなんだぞ・・ここ・・。」

「知らん。」

「・・ったくよう・・・。それにしてもそんなもんがあるっていったらどこなんだ?」

「この街の近くだ。知らないのか?」

 それを聞いた店主は顔を青く染めた。

「ま、まさか。シルバースターの炭坑・・じゃあねえよな?」

「ご名答。さすがにこの街に住んでることはあるな。」

「バカ!」

 店主はあまりにも気楽にいいのけるティオを諫めた。

「いっとくが、あそこは人の行くところじゃねえ。あそこには悪魔が住みついてんだ。あそこには行かない方が身のためだぜ。今なら遅くねえ。いくらお前でもあそこだけはやめときな。」

「・・・ずいぶん臆病なんだな?」

「そんな問題じゃねえ!俺は忠告してるんだぜ?年上の奴の言うことはきいとくもんだ。」

「聞くわけにはいかねえな。」

 しかし、ティオはそういいきった。

「なに?」

「俺が今ここでひいたら次からはずっと逃げ続けることになる。それは、嫌だ。そんなことになるぐらいなら。ここで死んだ方が1千万倍もましだぜ。」

「そいつは、ちと大げさじゃねえか?」

「いいんだよ。」

 店主は大げさに肩をすくめると注文されていた。9mmの弾丸8ダースと12,5mmの弾丸2ダースを取り出すとカウンターにおいた。

「いつも通り。12レガートもらうぜ。」

「相変わらず高けえな。もうすこし負けてくれねえのかよ?」

 渋々ティオは細部を探り、10レガート札1枚に1レガート札2枚をつけてカウンターに投げ捨てた。

「うちは商売人じゃねえ。技術屋だっていつもいってんだろうが。」

 そういうと店主は懐から煙草を取り出し口にくわえた。

「そういえば。」

「あん?」

「このあたりで徒党を組んでる輩っつったらなにを思いつく?」

 ついでだから店にはいるまでティオを監視していた集団のことを聞いてみることにした。

「なんだ?おめえ追われてるのかよ。」

「こっちは身に覚えがねえんだけどもよ。あたりをうろつかれるのはうざったい。ただそれだけだ。」

「ふん。まあ、ここいらで一番大きな奴らはレイクナットって奴らだ。」

「レイクナット?」

「自称はマフィアって言ってるけどな。一般的にはレイクナット。バカ野郎どもって意味だ。」

 店主は息を潜めてにやりと笑った。

「ふーん。で?そのバカ野郎どもはなんのために俺たちを?」

「さあな。街に入った連中は全員一度はあいつらの監視下に置かれるってらしいが。こっちが手をださねえかぎり何もしてきやしねえよ。」

「もし、手を出したら?」

「地の果てでも追いかけてくるわな。あいつらのちんぴらどもはまったく問題にならねえが。私刑役って奴がいてな。そいつらは少しやっかいだ。まあ、お前に比べれば糞ほどにもねえが。ただ・・・。」

「ん?なんかあるのか?」

「そこの幹部クラスとなると・・・やっかいだぜ。たぶん。お前でもやべえんじゃねえか?」

 ティオは”ほお・・”と、歓声を上げた。

「それは・・・少し楽しみのような気もする・・・。」

「バカ野郎が。」

「へへへ・・・。冗談だよ。触らぬ神に祟りなしってな。いらんやっかいごとはごめんだぜ。」

「もう手遅れかもよ?」

 店主はいやみったらしい笑みを浮かべた。

「あんたのその顔、俺は大嫌いだぜ。」

「相変わらず口のへらねえ野郎だぜ。」

「ふん。それじゃ。そろそろ俺は行くぜ。」

 カウンターに乗せられた弾薬を鞄に詰め込むと彼は、それを肩にかけると親父のポケットから煙草を一本奪った。

「まあ、それは俺からの選別にしといてやる。」

「安っぽい選別だぜ。」

 ティオはそういいながらもそれに火をつける。

「ほんじゃな。生きてたらまたよってやるよ。」

「その日が来ねえことを祈っててやるぜ。」

 ティオは背中向きに肩をすくめると、

「せいぜいかなわないようにしてやらあ。」

「さっさと帰れ。店が汚れる。」

 店主の捨てぜりふを背中に受け流しながらティオは店を出た。

「ん?なんだ?野郎どもの数が増えてやがる。まあ、ほっとけば害はねえか。」

 ティオは鞄を背負い治すと細くて暗い裏路地を歩いていった。


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