(3)
ティオはふと目を覚ました。
「・・・・女がいねえな。」
少し早い時間に起きてしまったのか。ロザリオはまだ夢の中にいるようだったが、シトの毛布はもぬけの殻だった。
「まあ。気にするこっちゃねえか。」
ティオは朝の風に当たるべく後部者労に足を運ぶ。
「ん?先客か?」
車輪と線路が奏でる振動のひときわやかましい後部デッキには一人の女性がたたずんでいた。
「なんだ・・・シトか・・。」
ティオの声に気がついたのか、彼女は振り向いた。そして、ティオの姿を見つけると安心したような表情を浮かべる。
しかし、ティオは少し困ったような表情を浮かべていた。
列車はかなりのスピードで走っている。だから、当然風がかなり強い。
シトは柔らかで清楚な雰囲気を持つスカートを身につけているわけで・・・。
「おい、裾を押さえたらどうなんだ?」
「・・・・・?」
シトはスカートの裾をつまんでみるが何も分っていないらしく、小首をかしげるだけだった。
「中身が見えてるってんだよ!年頃の女が少しは恥じらいってもんを・・・・。」
ティオはそこまでいうと、はっと気づいた。
「なんでこんなこと言ってんだ?俺は・・・。」
「・・・・・?」
シトはさらに小首をかしげるとティオじっと見つめた。
「ここはいいから・・・ロザリオを起こしてきてくれ。」
「・・・・・!」
シトはロザリオのなを聞いたとたんに輝かんばかりの笑みを浮かべ、うれしそうに頷くと軽快な足取りで車内に入っていった。
「まったく・・・どうせ、目的地に着いたらお別れだってのに・・・。」
ティオは煙草を取り出し火をつける。口からはき出される白い煙が風になびいて空に去ってゆくのを眺めながら彼はふと思った。
「本当に・・お別れなのか?」
ティオはそんな自分の思いを打ち消すように煙草を乱暴に放り投げると足の裏で火をもみ消した。
「バカな。俺は何を考えているんだ。どうかしてるぜ。」
その日は穏やかな夜だった。
「列車の旅ってのはいつもかったるいもんだな。」
プラットホームに降り立ったティオは列車のはき出す白い蒸気を眺めながら呟いた。
「そう?僕は結構好きなんだけど。」
荷物を重たそうに抱えながらロザリオは周囲を見回していた。
「さて。これからどうする?」
二人の後ろで物珍しそうな目で周りを見ているシトをチラッと見ながらティオは煙草をくわえた。
「まずは宿を三人分取って。それから二人で依頼主のところに行こう。」
「まあ、妥当だな。」
二人はそういって歩き出す。
二人は既にシトが一緒だと言うことに疑いを持っていなかった。
「・・・・・。」
シトは二人の後を見守るようにただその場で立ちつくしていた。
「どうしたの?」
シトがついてきていないことをいち早く気がついたロザリオは振り向いた。
「・・・・・・?」
シトはロザリオをみた。
「早く来い!時間の無駄だ!」
ティオはため息混じりでシトをみる。
「・・・・・・!」
三人の視線が混じり合ったとき、シトは今まで以上の満天の笑みを浮かべて二人の方に向かって駆けだした。
「とりあえず宿を取ったら依頼主の前に朝飯だ。」
「うん。そうだね。お腹空いたよ。」
「・・・・・♪」
シトもうれしそうに何度も頷く。
三人は霧のたなびく街へと歩んでいった。




