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(2)

「何とかうまくいったね。」

 ロザリオはシトと名付けられた女性にコーヒーを手渡して安堵の笑みを浮かべた。

「無駄弾を使っちまったがな。」

 ティオは銃からマガジンを抜き取り、チェンバー内に装填済の弾を取り出し、マガジンに再度装填する。

 そして、鞄のポケットの中から新しい弾を一つだけつまみ出すと、これもマガジンに装填しそのままそれをグリップ内にしまい込んだ。

 マガジンキャッチのカチッという小気味のいい音を聞くと彼はハンマーを支えながらトリガーを引き、そのままハンマーを元に戻す。

 この銃にはデコッキングレバーがないのでこの一連の作業をわざわざ自分でしなければ行けない。

「・・・・?」

 シトは不思議そうな目でそれを見ていた。

「なんだ?銃がそんなに珍しいか?」

「・・・・・。」

 シトはこっくりと頷く。

「そうか・・・。」

 シトは口がきけないらしいがコミュニケーションをとるには問題ないだろう。YesかNoか。逆にこっちの方がわかりやすいとティオは思う。

「だけど・・・大丈夫だった?」

「あの男か?」

「うん・・・。」

「まあ、女を金で買うようなフラレ男にゃ俺たちにつきまとうような度胸はねえよ。」

「そうだよね・・・。」

 ロザリオは安心したような笑みを漏らす。

「・・・・?」

 シトは二人をみながら困惑したようにおどおどしている。自分のことが話題にされていることは分っているのだろうが、それに対してどんなリアクションをしていいのか、まったく分らないといった様子だ。

「大丈夫だってこと。君を縛り付けるものはもうない・・・君は自由ってことさ。」

 ロザリオの言葉にもシトはキョトンとした表情を崩さない。

「言葉からだな。まずは。」

 ティオは軽く手入れをすませた銃を鞄にしまい込むと思いっきりのびをしてみせた。

 気がつくと車窓の外には夜のとばりが早くも漂いつつあった。

「俺はもう寝るぜ。朝になったら起こしてくれよ。」

 ティオは毛布を引っ張り出すとシートにごろんと横になった。

「あ。うん。分ったよ。お休み。」

 列車の奏でる規則的な振動を肌に感じつつ、ティオは微睡みの世界へと落ちていった。


    ※


「それからどうしたんで?」

 時計の針は既に日付変更線を越えていた。

 男はさらに酒をあおる。すでにそれが何杯目なのかすら覚えていない。

「別にどうもしやしねえよ。後は普通に寝て次の日も順調だった。順調に街に着いたさ。」

 マスターはとたんにつまらなさそうに鼻を鳴らした。

「だけど、女を買ったていうその男ですかい?とんでもねえ奴らに喧嘩を売っちまったもんでげすね。」

「あいつは何もしらねえ世間しらずってやつだ。結局あの後姿が見えなくなっ他と思ったら。窓から飛び降り自殺してやがった。」

「はあ・・まあ、納得いく気もしねえでもねぇんですが・・・。」

 男はグラスを軽く振ってみた。ゆらゆらと揺れる水面が光を反射し、薄紅色に輝く。

「それで?そのシトって女はいったい何者だったんで?」

「さあな。その時は何も分らなかった。何せ、あいつは口がきけねえだからよ。」

 男はさらに話を続けた。


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