私のいない彼の部屋
ある日突然「私」は、死んだ。それはもう呆気なくそして避けようと思えば避けれたのかもしれない出来事でだった。
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あの日の朝「私」は同居していた「彼」と久しぶりに大喧嘩した。最初は些細なことだった。でも、どんどん言い合いがひどくなっていて気づけば「私」は「彼」の部屋から飛び出していた。
そしてマンション――「彼」と「私」はマンションで暮らしていた――を飛び出して道路に出たときだった。「私」の前からフードをかぶった人が何か朝日の光を反射して鈍くヒカルモノを持って走ってきて
グジュッ
まず最初にその音が耳に届いた。
そのあとに誰かが叫ぶキンッとした声が届いた。
そして急にみぞおちの少し下がものすごく痛くなって身体から力が抜けて…
遠退く意識の中誰か「彼」の声にものすごく似た声で「私」を呼ばれた気ガシタ……
仏教では人が死ぬと49日間、あの世とこの世とをさ迷うらしい。
水の中から浮上するように遠退いていていた意識が戻ってきた。起きてすぐ目に入ったのは喪服を着ている家族や友人、「彼」、そして遺影写真とおぼしきものに写る「私」だった。
どうやらあの話は本当らしい。