第8話:先生ビックリです……
投稿の時間が開いてしまい申し訳ございません。
予約投稿していたつもりがすっかり忘れていたため、手動で投稿いたします。
今回はビキニアーマーに、自分なりに納得できる理由を付けてみました。
「お待たせして申し訳ございません、それで、見せたいものとは何でしょうか?」
「ククク……」
試着室のカーテン越しに、ウスティナの含み笑いが聞こえてくる。
「驚け、ルクレシウス。貴公には初めて秘密を明かす事となろう」
そこまで……?
あなたは一体、俺に何を見出したっていうんだ。
カーテンが開いていく。
「大丈夫です。僕は大抵のことにはドン引きしませ――んんッ!!?」
くそ、心臓が跳ねそうになった!
何故あなたまでそういう事をするかな!?
ほぼ下着みたいな革鎧なんて!
腰には申し訳程度の前掛けが付いているだけじゃないか!
そこにロングブーツじゃ太ももと肩と腕は丸出しだ!
「引いたか」
面白そうに言うな。
「うぐぐ……引かない……引いてなんか、ない……ただ、ちょっと、狼狽しているだけです……」
くっ……!
馬鹿野郎、冷静に観察しろ、俺……。考えろ!
彼女がどうして肌を晒してくれたかを考えるんだ……!
鉄仮面は口元のパーツだけ外している。
髪はプラチナブロンド。
フードを取ったから、茶褐色の尖った耳は露出している。
そう。肌は、この国の人間とは異なる、茶褐色。
……ダークエルフ、或いは黒エルフと呼ばれる種族だ。
傷跡はそこかしこに見られるが、奴隷の紋章や首輪のたぐいはまったく見当たらない。
それは、冒険者――および一個人として独立しているという事に他ならない。
「好奇の目で見られるのに嫌気が差していたが、貴公なら安心できると思った」
「高く評価していただいた事は光栄ですが……」
「それに、こうやって肌を見せておけば、他の黒騎士達を勇気付けられると思ってな」
なるほど一理ある。
王国の冒険者は、エルフやドワーフ以外の種族を極端に忌避する。
ウスティナさんと俺達が上手く冒険者をやっている事が知れ渡れば、肌を隠している黒騎士達も少しは希望が持てるかもしれない。
けれど……やっぱり見せすぎでは。
「顔を出せば充分だと思いますが」
「なるべく、奴隷紋章が無いことを証明したい」
「せめてズボンを……」
本人にそのつもりは無いと思うが、目のやり場に困る。
「女性の冒険者用の長ズボンは無いぞ」
「嘘!? ちょっと見てきます」
ラインナップを確認。
ホントだ……。
なんでショートパンツかホットパンツしか無いんだ。
せめて7分丈くらいは用意しろよ!
「わかりました……では」
ブワサァ……
「肩当て付きのマントか。悪くない」
これでよし……多少は心のざわつきを抑えられる。
わかっているよ、わかっているんだ。
あなたが自分のためにその革鎧を選んだ事くらい、わかっている。
でも、俺ですら心を乱されてしまう。
他の人だったらなおさら、あなたを好奇の目……つまり性的な目で見てしまうだろう。
だから、ごめん。
「いつか必ず、肌の露出がなくとも奴隷紋章が無い事を証明する方法を見つけてみせます」
「気軽に待っているよ。もっとも、89年ほど生きてきて、そんな方法は一度たりとも見つけられなかったが」
「無いなら僕が作ります」
「フッ……そういうところだ、ルクレシウス。
私の戦い方は身軽なほうが性に合っている。それに、当たり前のように見せ続ければそのうち慣れる。いや、慣れろ」
むちゃくちゃ言ってくれる……けど。
「よくよく考えれば、男性の剣闘士でも同じように露出している方はいましたね」
と、見方を変えれば納得できる。
「私の場合も似たようなものだと考えてくれればいい」
アレットが同じことを言い出したら流石に止めるけど。
ウスティナはAランク冒険者。自立した、立派な大人だ。
「む~……先生、わたしが同じことしたら絶対止めるでしょ。なんでそこで妥協するんですか」
こら、アレット。
ローブの裾を引っ張るんじゃない。
「胸ですか! 胸なんですね? ふっふ~んだ。どうせわたしはお子ちゃまですよ~だ。えいっえいっ」
胸を腕に押し付けるんじゃない。
俺が胸で人を判断する浅はかなクソおっぱいベイビー野郎みたいに言うのをやめろ。
「はいはい、ちょっと離れてね……あと3年経つか、或いはAランク冒険者になれば考えますよ」
「いつか大人の綺麗なお姉さんになったら、その時は覚悟してくださいよ!
清楚系の魅力を見せつけて、虜にしてやるんですからっ! 脱いだら凄いのは証明済みですし……ね?」
いや、そんな目で見られても困る。
脱いだら凄いのは……否定できないし、今でも充分に綺麗だけど、それは言えないよ。
ので。
「その時までに、或いはその後も続けて、あなたの尊厳をお守りするのが僕の仕事です。
さて、さっさとお会計して、消耗品も揃えましょうね」
当たり障りのない言葉を精一杯の努力で探し、お茶を濁すのだった。
「その後も……!?」
何やらアレットは深読みしているようだけど。
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