第6話:先生はパーティメンバー募集中です
モンハンで言うところの救難信号の野良に行くほうが、集会所で人を待つより楽ってありませんか?
ほら、なんというか、テンポとか、メンバーの武器の傾向が読めると、こっちも装備を整えやすいというか……
軽食の間に、お互いのスキル情報を開示する。
こっちから開示できるのは各種バフ系の付与術。対象の能力を強化したり、武器に属性を付与したりするものだ。
対するアレットは、ヒールの回復量が低い代わりに、対アンデッド系スキルは充実している。
……だが。
「いくら得意とはいえ、支援職が二人です。筋力は、僕は付与術込みでも判定はB+が限界です」
「うっそだ~?」
両手で指をさすんじゃない。
なんだその変顔は。
君を助けた時は、遠心力とか運動エネルギーとか諸々を足してああだったというだけだ。
「付与術込みの攻撃力は所詮、長続きはしません。魔力も無尽蔵ではないので、スケルトンの規模によってはジリ貧に陥り、最悪、物量に押されて壊滅します」
「ひっ……」
「内容的に行けると思っていても、保険は必要です。そこで、近接の心得があるメンバーを誘ってみましょう」
「でも、どうしてメンバーを探すほうが後なんですか?」
「性に合う依頼とメンバーが初めから揃っているのを見てからのほうが安心する人も、世の中にはいます」
まぁ、王国ではあまり流行っていないかもしれないけど……。
「なるほど……要するに、お互い面倒くさがり屋さんって事ですね!」
「違います」
「うっそだ~?」
おい。
なんだその変顔は。
「では、僕は暇そうな人に声を掛けてみます」
……そう。
暇そうでなおかつアレットに手出ししなさそうな奴に、ね。
◆ ◆ ◆
う~ん、駄目だ。
良さそうな人はみんな加入済みだった。
「――というわけで、是非ともお力をお借りしたいと思うのですが! ですが!」
アレットも元気にスカウト中かな。
……って、ちょっと!
その人は駄目だ!
万年ソロの、謎めいたAランク冒険者……“鉄仮面のウスティナ”!
異名の通りの鉄仮面の他、全身にボロ布と包帯を纏って肌を全く晒さない徹底ぶりから、凄腕の暗殺者という噂が立ったほどだ。
テーブルに立て掛けた大剣といい、投げナイフで敵の首が吹き飛ぶことといい、とにかくパワフルな逸話に事欠かない。
あと、とにかく全く喋らない。全部筆談だ。
「――遠慮させて貰う」
喋った!!!!!????
声は、くぐもっているが、意外と高い。
「へ!? だ、駄目、ですか?」
「ククッ……私は貴公らに興味が無い。さあ、連れ合いが戻ってきたぞ。泣き付いて慰めてもらうがいい」
「は、はあ……」
危害は加えてこないようだ。
けれど目を付けられたら面倒だ。
本当は、あまり偏見の目で見たくないけどね。
「アレットさん、ありがとうございます。もう行きましょう」
「はい……」
アレットはしきりに振り向いて、ウスティナを見ている。
そして釈然としない表情で、ぽつりと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
「あのひと、嘘ついてる音がしたんだけどな……」
――と。
その真意は解らないが、出会ったばかりの俺を信じてくれたのも、君の直感なのだろうか?
なんて考え事をしている間に、ウェイトレスの悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!?」
さっき注文を受けてくれたウェイトレスさんだ。
スカートを押さえるウェイトレスさんを、犯人らしい優男が得意げに茶化す。
「白ねぇ。顔の割にウブでやんの」
「や~だ、キーくんシンラツすぎ~! アハハ!」
そしてそのガールフレンドも随分と楽観的だ。
ギルドの敷地内での攻撃魔術の行使は禁止されている筈だが、相変わらずガバガバだな。
止める人は、いないようだ。
「アレットさん。もう少しゆっくりしていっていいですか」
「……わたしも、ゆっくりしたいと思ってたところなんです」
「ありがとう」
起点、ウェイトレス全員……――
危害対象、明確な意思を持って起点に攻撃系魔術を行使した者……――
効果を設定……頭皮に睾丸型の焼印、および魔力痕の色付け……――
――“因果応報”
よし、奴らはまたやるぞ。
俺の付与術は相手に悟らせず使う事だってできる。
結果どうなるかというと。
「ぎゃあああ、頭が熱い! なんだこれ!?」
「ちょ、ま、焼印!?」
こうなる。
同じ人が相手か……ウェイトレスさん、ごめんなさい。
この手の下衆共に口頭で注意しても逆恨みしてくるだけなのは、教師生活で嫌というほど学んできたんだ。
「ルクレシウス・バロウズさんですね」
おっと、ギルド職員か。
こういう時ばかり目ざといな。
「何でしょうか?」
「当施設内での戦闘行為は固く禁じられています。あなたには罰金と、ギルドカードの一定期間没収が課せられます」
これが戦闘行為に見えるなら、奴らのイタズラは何だったのか。
「お言葉ですが、彼らがギルドの大切なスタッフに対して危害を加えようとしていたので、それを防ごうとしただけです」
「危害だって? ……余計な事を。その程度、ウェイトレスなんだから我慢すればいい。彼女らが何か言いましたか? 助けを求めましたか?」
背後からも「そーだそーだ!」「いい子ちゃんぶってんじゃねーぞ!」「テメーの女じゃねーだろうがよ!」だのと聞こえてくる。
「彼女達の身体は彼女達自身のものでは?」
「それとこれとは話が別です」
……別かどうかはさておき、マズい流れかな。
俺のせいで件のウェイトレスさんがクビになったらどうしよう……。
その時は責任を持って新しい職場を一緒に探さないと。
「もういい。凡骨職員、その辺で終わりにしろ」
先程の凛とした声――ウスティナの一声によって辺りが静まり返る。
「ぼ、凡骨って――ていうかあんた喋――」
職員の胸ぐらを、ウスティナは片手で掴み上げた。
「二度は言わん。ここで今すぐバロウズ氏の処分の撤回を宣言しろ」
「は、はひ……当ギルドは、ルクレシウス・バロウズおよびそのパーティメンバーに課した罰則を、この場で撤回します……」
「軽食エリア内の魔力の使用履歴を隈なく調べつくせ。真に罰せられるべきは誰であるかが、それで解る。
もし、それでも何ら証拠が見当たらないならば、私に処分を下せ。よろしいか?」
「はい……」
「なら結構」
ウスティナは職員を放り投げると、俺に振り向いた。
「ルクレシウス・バロウズ。貴公の手際と勇気、見事だったぞ。
存外、人間の男も捨てたものではなかったようだ。
もし貴公らが良ければ、私の力を貴公らの旅に役立ててくれるだろうか」
「「よろしくお願いします」」
ペコリ。
……けれどまず俺は、さっきのウェイトレスさんに、大事にしたことを謝りたい。
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