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第46話:先生と作戦会議


 作戦は、こうだ。

 まず、幾つかのチームに分かれる。


 船を島に停泊させ、全体的な損壊状況を確認・修理する。


 乗客を全員、見晴らしのいい大食堂に集めて待機。見張りと護衛をする。

 集める際、同時にフランソワーズの捜索も並行。



 その間、島をくまなく探索。

 もしも海賊の拠点があるなら、これを無力化。

 あるいは遭遇前に全速力で脱出しておくのが望ましい。


 まかり間違って、海賊船と遭遇して砲撃など受けようものなら、どんな被害が出るか判ったものではない。


「あとは、本土に迅速な連絡ができるなら、非常に助かるのですが……マルギレオさんは、何かそういった手段はお持ちですか?」


「手紙をしたためて郵便ギルドを通じて送ってもらう以外の方法があるというのか?」


「水晶球通信は無いのでしょうか?」


「何だそのいかにもコストばかり嵩みそうな連絡手段は」


 カネは掛かるかもしれないけれど、払ったカネ以上の活躍はしてくれるよ。多分。

 敷いている布の魔法陣をいじくれば、他の水晶球ともチャンネルを合わせられるし。


 いや……それはさておこう。

 コストカットの基準が到底まともじゃないマルギレオなんて、もう知らん。


 別の連絡手段を考えないと……いっそ、矢文に付与術で飛距離を与えて飛ばしてみるか?



「――連絡手段なら、あるわ!」


 バンッ、と焦げたドアを開けて入ってきたのは、シャノン・フランジェリクだった。


「「「な、なんだって!?」」」


 思わず、俺とアレットとマルギレオが立ち上がる。

 他の人達は、呆気に取られていた。(唯一、ウスティナだけは落ち着き払っていた)


 シャノンは、ふと見回してから「んんっ」と咳払いをした。

 よく見ると銀髪はところどころが跳ねているし、メガネにもヒビが入っているようだけど……大丈夫かな……


「自己紹介が遅れました。私はシャノン・フランジェリク。バロウズ先生の元教え子の姉です」


「おお、あなたは先日の! その節はどもです……」


 アレットが、ペコリとお辞儀すると、


「いいのよ」


 と、シャノンはアレットの肩をぽんと叩いた。

 どうやら俺の知らない間に、何かしらあったようだ。


「……えっと、それで解決策なのだけれど。私の召喚魔術で、使い魔を通じて手紙を受け渡しできるわ。現在の状況を手紙にまとめれば、弟の手元に渡す事が可能よ。バロウズ先生はご存知でしたよね?」


 ああ。もちろん!


「はい。シャノンさんの弟、エミールさんの協力があれば、国防騎士団を派兵して貰える線も見えてきまし――」


「――ちょちょちょちょちょちょちょ待て待て待て!!!」


 どうしたどうした。何度も口を挟むもんじゃないよ。


「私の船だぞ!! 勝手に決めるな! 国防騎士団の手を借りねばならぬとは、そこまで大ごとなものか! 独力で済ませられる範囲なら、独力で済ませねば!」


「お言葉ですが、オストラクル卿……既に乗客からも不満が噴出しているようです」


「だいたい、何だ貴様は。ボランティアの分際で、差し出がましいと思わ――」


「――さっきから黙って聞いてりゃ……テメエいい加減にしろよ?」


 グレンがマルギレオの胸ぐらをつかみ、声を低くして凄む。


「ひっ、ひゃい!!」


 などと、マルギレオは顔面蒼白になって飛び退いた。

 いい気味だ。今まで散々、怒鳴ったり殴ったりした相手に凄まれる気分はどうだ? マルギレオ。



 悪いが、あんたの背負ってきた責務とか、挟持とか、そういったものは……人を殴って悲しませる理由になんてならない。

 どうあっても、追い詰めて狂わせる理由になんて、ならないんだ。




「では、海賊と遭遇した際は、こちらの本拠地に辿り着く前に迎撃に徹し、騎士団の到着まで時間を稼ぐということで」


「だが貴公は、大角鬼熊デーモンベアーを素手で倒すような猛者だろう。クククッ……万一、うっかり貴公が殲滅してしまった場合の事は考えてあるのかな」


「どうもしませんよ。その時は船の修理が少し早くなるだけです」



「いやいや、待ってくださいよ先生!?」


「アレットさんまで、どうかしましたか?」


「単身殲滅プランについてちょっとはツッコミ入れましょうよ!? “それは無理です”とか“現実的じゃないですね”とか! なに“そんなこともあるんじゃないですか”的なニュアンス醸し出してるんですか!?」


「危険は先刻承知です。大切なのは、この船に海賊を入れない事です」


「……ぶぅ。もういいです」


 心配してくれてありがとう。でも、これが一番手っ取り早い。

 ふと見れば、チェルトがアレットの手を掴んで、見上げている。


「アレットおねーちゃん、ルクレシウスおにーちゃんのこと好きなんだー!」


「へぁ!? えっ、いや、べっつにー!? す、好きですけどォ!?」


 ……うん。

 急に、部屋が暑くなってきた気がするな。

 緊張はほぐれたけど。


 複雑な家庭環境で育ったからなのか、チェルトは空気の読み方が上手いらしい。


 よし、作戦開始だ。



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