幕間:プチ女子会
(※申し訳ございません、時系列を間違えておりました。この話の一つ前に第25話を割り込み投稿しております……)
今回はアレット視点でお送りします。
女子会というと、他にももっとこう、様々な話題があると思いますが、まずは入門編の恋バナから描写していきたいですね!!!!
メンツの傾向的にこういう話題になったって事で、ここはひとつ! はい!
(過去に短編で、生理について話す女子会を書いた作家とは私のことです)
わたし、アレットは……――生理2日目で寝込んでいる。
ううん……この感覚は何と形容すべきか……お腹の中で木の皿が何枚もぶつかり合いながら、ドロドロの唐辛子粥の川を流れていくような……くるぶしを鈍器で殴られた痛みがお腹に行ったような……。
とにかく、痛み止めと、先生の付与術による鎮痛のおかげでだいぶマシにはなったけど、正直それでもまだ足りない。
今月は本気でつらい……起き上がるのも億劫なくらいに。
ところで、先生がお出かけ中なので、プチ女子会をやろうって流れになった。
今の議題はズバリ、わたし達3人のそれぞれが気になっている人だ。
言い出しっぺのわたしは、ルクレシウス先生への恋心を、これでもかってくらいに大演説した。
「……じゃ、続いてはウスティナさん、どうぞ!」
とバトンタッチ。
「恋愛的な意味で、だろうか」
「特にいなければ、貰ったラブレターの紹介とかでもいいですよ」
あんまりグイグイ行くのは、その……わたしの本意ではない。
わたしだって、その手のグイグイ系には何かと悩まされたし、そいつらのせいでわたしは……――やめよう。思い出したくもない、あんな場所。
ウスティナさんは腕を組みながら俯く。
「私は、ふむ。困った。貰った手紙は皆、私やルクレシウスへの尊敬の念が書かれたものばかりだったぞ」
そんなウスティナさんに対し、デイジーさんは目を輝かせていた。
「やっぱりですね! ほら、ウスティナさんはミステリアスな風貌だった頃から、なんやかんやでファンがいっぱいいたし!」
「では、ファンレターと呼称するのが正しかろうな。正直なところ、色恋沙汰はよく解らんのだ」
お! 意味深な発言!
嘘をついた音がしなかったから、どうやら本心からそう言っているらしかった。
そうだよね……人によって得意なものは違うもん。わたしったら、ちょっと軽率だったかも。
「なるほどねー……ルクレシウスさんも、あんなに優しいから、きっとファンがどんどん増えるんだろうなぁ。アレットちゃんも隅に置けないな!」
露骨な話題逸らしの上に、わたしに振った!?
いや、気を使ってくれたんだな……わたしも、ご厚意に応えないと。
「どうもどうも! ……デイジーさんは気になっている人いますか?」
「そうだなー……ザナット・ブランキー様が気になってるかな」
「パーティメンバーじゃないんですね」
「仲間内で付き合うとさ、別れた後がしんどいんだよね……故郷にいた頃の元彼も、そいつを勧めてきた友達の“もういっそ付き合っちゃったら?”って言われてその場の雰囲気に流されて付き合ったけど、そいつが毎晩毎晩、暴力が酷くて。マグカップ投げつけられた時はマジで夜逃げしようかと思ったんだから!
なのにさ~、別れたら別れたで、周りから“あんなにいい人なのに”とか“騙されたお前が悪い”って責められる。もうヤんなるっての……」
あ、すご……――めっっっっっちゃ喋るぞこの人!!
だいぶ苦労してるなぁ~……。
「辛かったですね……よしよし~」
ベッドに顎を乗せるデイジーさんの頭を、なでなでする。
そしたら今度は「えへへ~」と表情を崩したりなんかして、もう! うがぁー可愛い!
でも本人としては余計な奴まで釣れたり、いけ好かない同僚から嫉妬されて妨害されたり……。
ええい、ネガティヴ思考をやめろ、わたし!
「……うん。で、それが嫌でさ。最初は女の子だけでパーティ組んだの。そしたら、くそオヤジ共が“男がリーダーじゃないと苦労するぞ”とか抜かしてきて! あいつらマジ死んどけって――あ! そういえば連中、“すまなかった”とか言ってきて、すっかりおとなしくなったけど、どんな魔法を使ったの?」
というのはさておいて。
「実はですね、先生が色々と教育したみたいで」
「なるほど! 道理で快適になったわけだ! ありがとって伝えないとだね」
「はい。それで、ザナットさんについて、続きを!」
「ザナット様は、ほら。人間関係を大切にしそうだなって。
実はあたし昔からファンで、よく教会にお祈りしに行く時は聖堂騎士団の広報誌を3部は買っちゃうんだけど、昨年に見た広報誌で初めて明かされたの! 彼の、原典が!」
デイジーさんが明後日の方向を向きながら、なんか始めてしまった。
「幼き日に仲間と離れ離れになったトラウマから、今いる仲間は決して蔑ろにしないと神に誓われた……ッ!! ああ、お労しやザナット様……!! きっとドーチック商会との係争を聞き入れてくださったのも、かつて離れた仲間を偲んでの事なのだわ! あの時のカティウスさん、マジでグッジョブだった……!!」
自分の世界に入っちゃった。
「でも、それだけ出来た人だと、競争率も高いんじゃ――あ。ハーレムっていう手がありましたっけ?」
「あ~……あったねぇ~ハーレム」
おっ。現実に戻ってきた。
「一応、認識の摺り合わせをしていいですか? わたしの知るハーレムと解釈違いがあったら困りますし……あ、もちろん、わたし達のパーティは違いますよっ!」
「……大丈夫。わかってるよ。あの先生なら、絶対にそんなこと言わないもんね」
「はい」
それがわたしにとって嬉しい事なのか、それとも先生の決断の遅さとして責めていい事なのか。わたしには、解らないけど。
「確か冒険者ギルド本部が提示した、女性の冒険者が活躍する為に、かつての勇者に倣って男性のリーダーが女性のメンバー達を養うっていう方策ですよね」
「そそ。女性のソロもフリーランスも、言うまでもなく危険。
女性のみのパーティだって、連携をしっかり取らないと冒険者の中で孤立する。
男女混合パーティは痴情のもつれで問題になる。
でもハーレムなら。柱となるリーダーを失えば崩壊するから、そこを軸に団結しようと動く……っていうね」
「はい」
輪星教の修道女達にも、そのように伝えられている。
強者のハーレムに加わる事は、巡礼者の女性にとってこの上ない名誉であるとすら。
「クククッ……だがそのハーレムとやらの大半は、世辞で褒めるのも憚られる程に杜撰を極めるがな」
と、ウスティナさんが苦笑する。
「ですよね~……」
「う~ん! 色々語ったけど、あたし恋はしばらくいいや! まず人間扱いされたい」
「おー、よしよし……うちはいつでも歓迎ですよ」
「際限なく甘えちゃうからダぁ~メっ……あ、でも定期的にごはん誘ってね? このメンツだと腹の探り合いとか空気の読み合いとかしなくて済むからすっごい楽」
「あー……わかります」
この人の話からも嘘の音がしなかった。全部、事実だった。
たぶんこの人、能天気っぽく見えて人間関係すっごい苦労したんだろうなっていうのが伺えて。
……そういう意味でも、有意義なプチ女子会だった。
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