表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/141

第24話:先生VSアレットの生理2日目

ぽんぽんぺいん「生理が1日で終わるといつから勘違いしていた?」


ルクレシウス「なん……だと……!?」


アレット「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛……」


「う゛ぅう゛え゛ぇぇぇぇ……痛ぐで、ぎぼぢわるい゛……」


「本日は宿屋でゆっくり休みましょうね」


「あ゛ぃ……」


 アレットいわく生理2日目。

 当のアレット本人は、脂汗を流しながらベッドの上でうずくまっている。


 食事が当たってしまったわけではないようだから、そこは安心だけど……そうか、2日目は、こんなにつらいのか……。

 痛み止めを飲ませても尚、こんなに苦しそうなのだ。



 ウスティナは今、買い出しと試作型魔導ナプキンの配布に出かけている。

(ちなみに女性からのファンレターにも、追記のメッセージを添えて同封し、送付しに行くそうだ)


 つまりこの部屋にいるのは俺とアレットだけだ。

 今の俺にできる事を、やるしかない。


 ――対象を設定、アレットの下腹部。

 魔力量のルーチンを設定、微量、巡回……。

 ……――“鎮痛アンチペイン付与エンチャント”!


「うぅ……ぐぐ……ちょっと楽になったかも……」


「気休め程度にはなるかと思います」


「すみません……先生……今月のっ、やつ、すごく、重くて……これじゃ、んぐぐ……冒険者失格です……」


 アレットの手を、俺は両手で包み込むようにして握る。


「大丈夫。決して失格ではありませんし、僕は見捨てませんよ。

 色んな人がいる。手間のかかる人、かからない人。話すのが得意な人、苦手な人。

 同じ人が時期によってそれらを行き来する事だってあります。だから僕は絶対に見捨てない」


「ありがとうございます……あーあ……持ってたら、読んでもらえたのかな……先生は優しいし……」


 ……?

 なんだろう。本かな?


「読んで欲しい本があればいつでも仰って下さい。学術書でも、研究書でも、絵本でも、何でも読みますよ」


「――あっ。その、えっと……今のは、聞かなかったことにして、ください……」


 アレットは顔を真赤にしてシーツで顔を覆った。

 ホントに何だったのだろうか……まぁ、詮索はやめよう。

 きわめてデリケートでセンシティブな内容に違いない。



 ――コンコンッ。


「客人を連れてきたぞ。下の食堂にいた」


 買い物から帰ってきたウスティナの後ろから、デイジーがひょっこりと首を出した。


「デイジーでーす。お二人とも元気してました? んげっ、アレットちゃん!? あらー……重たいの来ちゃったかー……」


「はい、重たいの来ちゃいました……」


 すぐさま部屋に入り、アレットの頭を撫でる。


「よしよし、大丈夫だからねー……」


「わー、わー、デイジーさんのおてて柔らかいですー」


「でしょ~? いいグローブ使ってるから、手の皮が荒れないんだよね~」



 他にも色々な話をした。

 デイジーとカティウスがパーティを組み、それなりにメンバーが集まってきているという事。

 新しく加入してきた、戦士バラドゥは元黒騎士で、雰囲気の変わったロビンズヤードを歓迎しているという。


「鎖の使い方がとにかく上手くて。あと、薬草に関する知識もすごいんですよ。もうちょっとこの近辺でやったら、あたし達も別の所に行こうかなって」


 冒険者ギルドの空気感も、以前と比べて大きく変化したそうだ。

 年長者におもねって、若者達がうやうやしく頭を垂れていたかつてのロビンズヤード冒険者ギルドは無くなった。

 黒騎士達は兜を脱いで堂々と依頼を受けるようになったし、黒騎士とそうでない冒険者が少しずつ気軽にパーティを組めるようになった。



 ……俺のしてきた事は、間違いではなかったと信じていいんだね?

 どうか、信じさせてくれ。


 中には、きっとそれを歓迎していない者もいるだろう。

 彼らの間で争いが無いのは、せめてもの救いだ。



「お水、新しく貰ってきます」


「あー! いえいえ、むしろ客人のあたしが!」


「私が貰ってこよう。どうせ暇だ」


 俺が立ち上がるなり、デイジーとウスティナが俺を両側から掴んできた。

 え、何この状況。


「……ウスティナさんは買い出しの帰りで、デイジーさんはお客人、そしてアレットさんはご覧の通りです。

 僕は女性にばかりお茶汲みをさせたくない。僕に、行かせて下さい」


 俺は至極真面目に言ったつもりだったが、デイジーは変なツボに入ってしまったようだ。

 俺の言葉の途中から、両肩を震わせて笑いを必死にこらえている。


「ほらな、デイジー。私の言ったとおりだろう。この男はいつもそうだ。

 馬鹿のように真面目で、儀にあつく、そこらの男連中がいかに矮小であるかを思い知らせてくれる。

 更に面白いのは、客人の前でなくとも自然体でそう動けるところだ」


「分裂して1人分けて欲しい……あいや、カティウスさんはあくまでもメンバーであってですね」


「大丈夫です、それくらいは解りますよ。

 男女が並んだだけで恋愛に紐付けて考えたりはしません。それがどれくらい危険な考え方であるかも、解っています」


「そういうところだぞ、貴公」


 なんか優しく背中を叩かれた。

 周りで誰もそうしないなら、せめて俺だけはそうしよう、俺の先の世代からはそれが普通になるように、みんなに伝えていこう……俺はそう考えているだけだ。


 俺は特別なんかじゃないよ。

 ……特別であっては、ならないんだ。


「先生ぇ……? せっかくみんなから褒められてるのに、ちっとも嬉しそうじゃないの、どうしてですか!?」


「え、あ。あははは……社会の現状を鑑みると素直に喜べなくて」


「むぅ……わたしの分、りんごジュースで」


 アレットが頬を膨らませながら注文を増やす。


「じゃああたしもそれで!」


「では私はワインで」


 そこで敢えて合わせたりしないのがウスティナらしいや。


「では、貰ってきますね」


「先生やっぱりわたしエールほしいです!」


「おくすり飲んだでしょう。我慢しなさい」


「ぶぅ~……はーい」


 まったく……。

 あ、そうだ。


 せっかくだから、デイジーにも魔導ナプキンの性能テストを受けてもらおうかな。

 本人だけじゃなくて、そのご友人にも普及してもらう。

 交渉役はウスティナにやってもらうとして、どうやって振るべきか。



 皆さまの応援が作者の励みになります。

 感想、ツッコミ、心よりお待ちしております。


 たくさん感想が増えても必ずお返事いたします。

 よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ