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第10話:先生とダンジョン奥地の祭壇

本日の豆知識:

 メインヒロインのアレットは意外と(意外と?)口が悪い。


 短縮術式呼び出し……対象をパーティメンバー全員に設定。

 ――“障壁バリア付与エンチャント”!

 “漸復リジェネレーション付与エンチャント”!

 “筋力マッスル付与エンチャント”!


 続いて短期術式呼び出し……対象をウスティナに設定……――


「――“抗響アンチエフェクト付与エンチャント”」


「この魔術は、少し粘つく(・・・)な」


「でしょうね。魔力量の多い方々にはあまり使わないほうがいいたぐいのものです。

 動き方はお任せしますが、言うまでもなくホーリー・ボルトの射線上には出ないよう、ご注意下さい。同士討ちは、心が痛みます」


「ああ、心得たよ」


 大丈夫だとは思うけど、一応念の為、ね。

 いくら相手がAランクでも、僕はその看板に甘えないようにしないと。

 ぶつけて笑いを取る、そんな下衆にはなりたくないし、アレットだって本意じゃない筈だ。


「アレットさんは僕から離れないようにお願いします」


「は、はいっ、喜んで!」


 そんなに嬉しそうにされても、その。

 反応にね、困るんだ。満更でもないと思う自分もいて、ね。

 駄目だ、集中しなきゃ……醜いなあ、俺の性根は。



 スケルトンを一列に誘導して、アレットのホーリー・ボルトで一掃させる。

 至近距離まで接近しているものはウスティナが粉砕してくれる。

 近接専門職がいると、安定性が段違いだ。


 下層まで一気に進む。

 辺りのスケルトンを一層して、小休止。


「ところで先生、その袋は何ですか?」


 引き摺って持ってきた麻袋は、スケルトンを倒せば倒すほど重くなる。

 もちろん“浮遊フロート付与エンチャント”である程度は軽減させているが。


「このスケルトン達の残骸を、しっかりとした墓地で弔ってあげたいなと思いまして」


 何やらアレットが「すごいや……死体にまで優しいとか、聖人君子かよ……」などと呟いているが、聞かなかった事にしよう。


「埋葬の方式は、アレットさんに指揮して頂いてもいいですか? あなたの知識が必要です」


「――! もちろん、お任せ下さい! 経典のストーリーはクソですけど、聖職者としての心得の辺りはわりかしガチな出来だと思いますので!」


 そんな堂々と神を貶していいのかな……。

 いや、神そのものを貶しているわけじゃなくて、それを解釈している物語に異を唱えているから大丈夫か。

 何はともあれ、アレットに協力してもらえるならきっと大丈夫だ。


「ありがとうございます。頼りにしています」


「いえいえ、こちらこそ!」


 あ、すごい嬉しそう。

 ただここから調子づいて何か失敗した時、おそらくテンションが急降下するだろう。

 それは避けたい。



「ところで、先日の出発前に確認した限りでは、アンデッドの動きを止めたり、気配を遮断したりするスキルまではお持ちではありませんでしたね」


「あれば楽なんですけどねー……」


「スキル開発は、後日ですね」


「愛の共同作業ですか? 大歓迎ですよ?」


 両手でハグをせがむんじゃない。


「ジョークとして受け取っておきます」



 地下の墓地はあちこちが朽ち果てていて、なるほどこれでは死者も安眠には程遠い。

 そもそも壁に窪みを掘ってそこに遺体を寝かせているだけだ。

 当時の死生観や宗教観で言えば、どうだろうか。

 地下墓地を掘り当てた時点でスケルトンが出てきたなら、きちんと埋葬できたとは言えない気がしないでもない。


 ただ、ネクロマンサーが絡んでいる可能性も無いとは言えない。



「それにしても、べらぼうに数が多いですね」


 かれこれ百体は超えている。

 これ以上は袋に収まりきらない。


「鎮魂歌は使わんのか」


「ああ、あれですか……うちの神様の信徒じゃないと効果がまったく無いんですよ」


「なら仕方がない」


 ひょいっと抱きかかえられ、両足が地面から離れる。

 俺が右腕側に。

 アレットが左腕側に。


「あの、何を……?」


 一応、訊いてみる。

 とはいえあらかた想像はつくのだが。


 短縮術式呼び出し……対象をウスティナに設定。

 ――“俊足スプリント付与エンチャント


「その“まさか”だ」


「待って下さい。“まさか”とは一言も申し上げて――」


 ――ヒュゴォオッ。

 景色があっという間に流れていく。

 やっぱり素の身体能力が高いと、エンチャントによるバフの効果も高いな。


 こうして俺達は、地下墓地の最下層と思しき場所へと辿り着くのだった。



 円形の広場の中心部には祭壇があって、祭壇に鎮座する石碑には、青白く光る儀礼用の短剣が何本か刺さっていた。

 アレットが、ハッとして駆け寄る。


「アレットさん、あまりあちこち触らないように!」


 彼女はその儀礼用短剣をまじまじと見つめて、


「……これ、うちの教会で使ってるやつです」


 と、振り向いて一言そう言った。

 彼女の手には、石碑に刺さっているものと同じデザインの短剣が握られていた。



 皆さまの応援が作者の励みになります。

 感想、ツッコミ、心よりお待ちしております。


 たくさん感想が増えても必ずお返事いたします。

 よろしくお願い申し上げます。

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