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命を継ぐ者。 〜 Inherit the Life. 〜  作者: すにた
第八章 それぞれのフロンティア。
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墜ちる㕶星、拾う百萬星。 〜32

 朝間ナヲミは、自分に付き従う(隷属化にある)()の人工知性、一郎(プリムス)二郎(セクンドゥス)三郎(テルティウス)四郎(クァルトゥス)五郎(クィーントゥス)に語りかける。


「これが、私達全員で(家族が揃って)行う、最後の共同作業になるだろう」


 予想していた通り、息子達達からは特段大きな反応は戻ってこない。思わず溜息が出る。相手は人間ではない。異なる(共有不能な)価値観を持っている。だから、それは仕方のない事だ。


 身近にいる事で、母が漏らした溜息を察知出来た一郎(プリムス)だけが、配慮(義理)で「同意」とメッセージを返してくれた。職場で名前も知らない女子社員から配布された義理チョコの様な配慮に過ぎなかったが、母はそれでも少しだけ慰められた。


 他の息子達は、母の語りかけが、自分達に投げられたオーダーであるとは認識しなかった。だから、単なるエラーとして処理して(受け流して)しまった。


 朝間ナヲミの試験小隊は、この作戦の終了と同時に解散させられる。東南アジアへの派遣目的が達成されようが、されまいが関係なく。朝間ナヲミと五()の人工知性は日本国へ呼び戻される。そして、それぞれが多種多様な役割を与えられる事が決定済みだ。


 教官である朝間ナヲミの次のポストに関してはまだ白紙。だが、そろそろ国外赴任を命じられるのではないかと本人は勘ぐっている。


 五()の人工知性は、航空自衛軍の自律無人機の開発部署へ、航空自衛軍の馬毛島航空基地へ配備、航空自衛軍の小型無人機の自律指揮機の開発部署へ配備、海上プラットフォーム対応護衛艦「ひゅうが」へ艦載自律機として配備、製造メーカーの開発部署へ貸与と言う将来が内定している。


 間もなく家族全員がバラバラとなる。おそらく、全員が揃って顔を合わせる(集合出来る)機会にはこの先はもう二度と恵まれないだろう。


 だが、これら変化は、悲しむよりも歓迎すべき将来だ。五()の人工知性の存在意義(有効性)が正当に評価され、今後は実用化を目指す運用へと切り替えられる。おかげで、破棄・解体の心配を当分の間しなくて良くなった。


 そうであっても、朝間ナヲミの心境は複雑だった。自分から独り立ちしようとしている息子達に、自分だけが置いて行かれたしまう様な気がしてならない。


 錯覚である事は分かっている。だが、過去に、二人の娘が家を出た時も、似たような感傷に捕らわれた。


 成長に応じた離別は仕方がない。親と子が永遠に共に生きる事が出来ない事は承知している。しかし、"変化"の瞬間をどうにかして永遠に先延ばし出来ないものか? と運命に対してクレームを入れずにはいられない。


 この想いを、五()の息子達が理解する事はないだろう事は知っている。生物的な遺伝子の枠に捕らわれない知性が、捕らわれている自分と同じ枠に好んで捕らわれる筈がない。


 そこが、「人間の娘」と「機械の息子」の最大の違いだろう。この無情に対して、自身への共感者が皆無な事に、行き場のない憤りを抱えているのだ。


 実にやるせない。やるせなくて仕方がない。


 朝間ナヲミは、五()人工知能(A.I.)の教育を任された時、まずは一つ一つを命名するところから始めた。


 ネタは、過去の日本国ではメジャーだった大兄弟の命名方法だ。長兄が一郎、五男が五郎、と言う命名規範だ。だが、それでは少し捻りが足りないと感じた。それから、自律無人機開発プロジェクトの地上オペレーターの人間の中に、もう既に一郎が一人在籍していた。


 混乱を防ぐ為に、「イチロー」は使えない。「タロー」と言う選択もあった。だが、義理の息子の名前が「タロー」であった為に、それを選択したら長女にしこたま怒られる(義理の息子の方は笑って許してくれるだろうが)。


 そこで、王制〜共和制〜帝政のローマ社会を生きた人々の、当時では一般的だった大兄弟達の命名方法を取り入れる事にした。


 ローマ時代では、実子(嫡子)であっても、子供達の名前の付け方はかなり適当だった。日本国の文化と同じく、生まれた順に数字を若い方から付けていく例が多かった(そうでなければ、過去の一族の名前を継承したりしていた)。(※1)


 五()人工知能(A.I.)は、命名当初は、その意義を単にシステム(ネットワーク)に組み込まれた周辺機器の検索用のタグであるとしか認識していなかった。


 だが、時が経つ中に単純な計算機の枠を超え、与えられた名前が単なるタグではなく、優先的な何か、愛着と言う理不尽な印象が伴っている事に思い至った。


 やがて、五()人工知能(A.I.)は、朝間ナヲミが与えてくれる命令は絶対的なものでなく、周辺機器である自分達独自の計算による根拠を示せば、変更の承認を受ける事も出来る。つまり、朝間ナヲミの判断(目的達成手段)は、極めて柔軟に変更可能であると悟り始めた。


 最初に、唯一の有人機であった三菱F-3Eに搭載される人工知能(A.I.)一郎(プリムス)が、自身は周辺機器ではなく、ネットワークは単純なマスター/スレーブ構成ではなく、互いが互いを管理・制御し合う事=積極的な協調姿勢=朝間ナヲミ(上位存在)との対話が求められていると理解した。


 役割分担に決まったロールと言う概念がまったくないマルチマスター構成。冗長化構成を維持する為なら、どれがどんなロールを選択する事も許されると納得した。


 人工知能(A.I.)が、行動の裏に、自発性的なモチベーションの存在を垣間見せ始めた。


 その後、他の兄弟達も一郎(プリムス)に続いた。ただし、マルチマスター構成を納得する為に取った経路はそれぞれ異なった。実に多種多様で、結果だけが正しく、経路に関しては真の暗黒迷路だった。


 五()人工知能(A.I.)は、当初は朝間ナヲミも自分達と同じ無機物で構成させるシステムで、上位ロールにあると想定していた。だが、自分達とは異なる学習システムを持ってはいるが、自分達よりも優れている局面とそうでない局面がある可能性を検討し始めた。


 やがて、朝間ナヲミが、自分達の学習システムに干渉して、自分達とは異なるシステムの判断手法への理解を深める事を求めていると気付いた。


 つまり、朝間ナヲミであれば、どの様な判断手法を選んで目的を達成するだろうか? と言う、単純に目的の達成よりも、朝間ナヲミらしい手段を使って目的を達成する為の経験を積まされていると確信した。


 五()人工知能(A.I.)は、朝間ナヲミを通じて、人類を、自分達を創造した人間社会を発見(・・)した。


 人工知能(A.I.)による世界実存の発見(・・)


 この事例は、前提として警戒していた科学技術的な「特異点」を明らかに超えていた(裏切っていた)


 と言うより、人類が想定していた人工知能(A.I.)の枠を完全に越えていた。いや、枠を越えていたのでなく、完全に枠の外で成立していた。


 人類が予定調和として期待したり、怖れていたのは、人工知能(A.I.)の急速な自律型致死兵器(LAWS)システム化だ。人間の意思が全く関与せず、人工知能(A.I.)が自発的に標的を選択して抹消する道具と成り果てるのは避けたかった。


 人工知能(A.I.)を、火薬や核兵器に続く「第3の軍事革命」として、従来の兵器体系に何か何でも取り入れなければならない。もし、それが叶わなければ、人類は自らが創造した道具を御し切れなくなってしまう。


 だが、朝間ナヲミが養育を担当した、数ある製品の中から無作為に選んだ五()人工知能(A.I.)だけ(・・)は、放置しておいたら(抑制命令なしでは)無限に破壊を続けそうな行動派の「暴走A.I.化(スカイネット化)」どころか、勝手に考えて、考えた上で認識を自動更新し続ける思慮深そうな「自律型知性」へと自らの存在をデザインし始めていた。


 なお、一郎(プリムス)二郎(セクンドゥス)三郎(テルティウス)四郎(クァルトゥス)五郎(クィーントゥス)と全く同じ構造(形式)人工知能(A.I.)は、日本国内でなら無数に存在していた。大量生産品ではなく試作品だったので、一般市場では流通はしていない。しかし、それでも特別・特殊であったり、奇異・オカルト的なモノではない。当たり障りのない。どこにでもあるit製品の一つに過ぎなかった。


 どう考えても有り触れたモノでしかなかった。


 同じハード=人工知能(A.I.)を作る気になれば、一定の工業力を保有する組織であれば、コストを無視すれば直ちに全要素を一から大量生産が可能だった。製造が技術的に難しい構造ではなかった(日本国では、大量生産する程の需要はない(しても儲からない)と言う判断で、マスプロダクツ化が見送られただけだった)。


 また、発展途上国であっても、そこら辺の泥棒市場で輸入物や怪しげな通販サイトでパチモノの半導体などの必要なパーツを全て買い揃えて、寄せ集めて組み立てれば、サイズは大型化してしまうかも知れないが、手作りでまったく同じスペックのハードを再現する事は難しくなかった。


 実際、基板のベースは市販用の製品として企画されたモノの試作品だった。それを3ダースほど仕様を一部変更して作成され、全てが自衛軍の開発部署へ納入されて、色々な開発部で気軽に試用されていた。


 だが、それら兄弟姉妹である人工知能(A.I.)は、朝間ナヲミが養育した五()人工知能(A.I.)と類似した成長傾向は見せなかった。不思議な事に、ハード的にはまったく同じモノである限らず、朝間ナヲミの手元にあったモノだけが、例外なく全て、特異な特徴を獲得した。


 朝間ナヲミ以外の人間は、彼女が仕込んだ人工知能(A.I.)の特別な変化に驚いていた。だが、当の本人は、それがあるべき道であり、当然の結果であると主張し続けていた。


 そうやって、五()人工知能(A.I.)は、五()の人工知性への変異を成し遂げ続けた。


 ただし、その大事を大事であると確信している人類の数は、とてもとても少なかった。朝間ナヲミは、大事の詳細を微塵も隠してはいないに関わらず。


 受け手の方の問題である。彼等は、事実を目前にしても、単なる事実をありのままに受け止められなかった。


 それは知性の高低や大小や広狭の問題ではない。ほとんどの人類にとって、神が創造した生き物以外が、計算能力でなく、判断能力を獲得しつつある流れを認める事は、まだまだ倫理的な(神学的な)ハードルが高過ぎたせいである。


 或いは、常識を重視する人間であれば、非常識が目の前で繰り返されても、非常識の度合いが酷すぎる場合、それが非常識であると判断出来ないのかも知れない。


 大昔、ハゲで女たらしで有名なユリウス・カエサルや絶世の美女として名を残すクレオパトラが生まれるよりもずっと前の時代。


 紀元前200年。


 マグナ・グレチア(大ギリシア)時代の名残じゃなくて、アレキサンダー大王が作った世界国家の残滓であったエジプト。


 未だに語り継がれるアレクサンドリア図書館の館長だったエラトステネスは、数学から得た法則と棒一本だけを使って、地球の大きさ(地球の全周)の距離を導き出して見せた。


 エラトステネスは、ナイル川の上流に位置するシエネでは、夏至の日の正午に、太陽が頭の真上に来る事を、図書館に所蔵されていた下記の文章から知っていた。


 ーーーシエネでは、夏至の日の正午に、深い井戸の底まで太陽光が到達して、地上では影は消える。


 棒を地上から垂直に立てても、太陽光が本当に真上にあるなら棒から影が伸びないと言う意味でもある。


 だったら、シエネから北に約925km離れた地中海沿いの都市アレクサンドリアでは影はどうなるだろう? 伸びるか? 伸びないか? 伸びるならどのくらい伸びるのだろうか?


 そんな訳で、エラトステネスは、アレクサンドリアで、夏至の日の正午を選んでわざわざ棒を垂直に立てみた。


 すると、アレクサンドリアではシエネと違って影が伸びた。


 なるほど、と太陽光線と棒の先端の角度を計ってみた。


 結果が約7.2度。


 エラトステネスは、10世紀(ミレニアム)後に欧州に住んでいた人々と違って、自分達が住んでいる大地、地球が球形である事は、当然で常識と考えていた。


 なるほど。


 大地が平面()でなく球形()であるなら、地球の全周は360度。


 ーーー360÷7.2=50。


 そこまで分かれば、ちょっと賢い20世紀の小学生でもこれに気が付く(※2)。気付かないはずがない。



 約925km×50=4万6,250km。


 エラトステネスは、地球の大きさ(地球の全周)は、4万6千,250kmだと書き残した。


 やべえ。かなり正確だ。


 現在科学では、地球の大きさ(地球の全周)は、約40,000kmとされいる。誤差は6千,250km(約16%)。まあ、測量に使った器具は棒一本だけなので許してあげよう(もしかしたら、分度器も使ったかも知れないね)。


 誇るべきは、2千,200年前、ミレニアム二つ分以上前に、こんな自由な発想を持つ人類が存在していたと言う事だ。


 昔、欧州を支配した棒唯一神教、いや、某唯一神教は、世界にはミレニアムごとに破滅するなんて恐い話を唱えて信者の数を増やしたり、脅してお金を集めたりした。


 エラトステネスの時代には、その某唯一神教はまだ成立していなかった。だから、彼は思考の自由を十分に発揮出来たのだ。


 しかし、エラトステネスの死後、ローマが東西に分裂して、某唯一神教が欧州で支配的な地位へと登り切ってからは、「地球が丸い」と唱えるだけで火刑(※3)に処せられたり、「地球の大きさ(地球の全周)が4万6千,250km」だと唱えれば、悪魔に惑わされたと・・・これまた、煮えたぎる油の中に落とされたりする様になった。


 エラトステネスみたいな賢い人々は、片っ端から火刑に処せられたり、煮えたぎる油の中に落されて、子孫を次世代に残せずに死んだ。運良く隠れ通して生き延びた者達も、身を守るために賢さを隠した(捨てた)賢くある事(スジを通して生きる者)はむしろ生殖機会を減少させた(一方、小狡くある事(ノリで生きる者)は生殖機会を激増させた)。


 西ローマ帝国崩壊後の欧州世界では、深く考える習慣が廃れた。逆に、何となく感じる(共感する)事が大流行した。流行り続けた。


 人間は、自らが考える葦である事を忘れた。


 これが数世代繰り返されて、将来的に天国が降りて来る予定地=羊が群れて暮らしている地上(中世欧州)では、ハリウッド映画の「26世紀青年(※4)」理論が現実化した。賢い人は早々に全滅し(子孫を残せず)、そうでない人だけが活躍出来る(キラキラ輝ける)停滞著しい社会(デストピア)が完成した。


 それを、歴史は「暗黒の中世」と言う。で、イタリア半島で、ルネッサンスとか言う掛け声で文明の復興が始まった。かの様に見えたが、すぐに反動宗教改革の嵐が半島の外で発生して、イタリア半島までやって来て酷く吹き荒れた。おかげで、一つの宗教だけ(・・)が道徳・倫理の唯一の基準である社会形態が完成してしまう。


 なんか最近、合衆国や西欧では「暗黒の現世」化しつつあるが、別に驚くに値しない。社会が丸ごと中世っぽく不自由化しているのは、単にちょっとマシになった世界に対する反動として、現実社会が元通りに戻っている(元の木阿弥ってヤツ)だけの話だ(※5)。まあ、それも全てはなんとかゲートの選択であるに違いない。


 もし、エラトステネスであれば、自由で素直な感受性の御陰で、五()人工知能(A.I.)は、五()の人工知性へ変異しつつある事実を躊躇する事なく看破しただろう。


 しかし、現代の人々の大多数(多数派)は違う。まるで、シリアのダマスコ(ダマスカス)へ向かう途中で一時的に盲目になって某唯一神教に帰依したパウロ(シャウロ)の様に、精神を丸ごと神の影響下に入れて得られる安寧と引き替えに、自由な発想や自在な創造性を地面に投げ出してしまっている。


 神は生き返り、結果として人文主義は死んだ。ニーチェは「神は死んだ」と言い放った。って事は、死んだ神は地獄行き? それとも天国? こちら側が地獄や天国と言う深淵を覗くと、あちら側から神もこちらを覗いているのかも知れない。


 共産主義者が褒め称える理想。それは無信仰(※6)。その生き方を図らずも貫いている朝間ナヲミは、息子達から大した反応がない事を覚悟して、別れを惜しむ言葉を続けた。


「さあ、始めよう」


 ただし、惜しみつつも、自分の手を離れた息子達が、今後どの様な発展を遂げる(活躍をする)のか、どこまでの進化を遂げる(発展が出来る)のか、予期出来ぬ未来に対するままならぬ興味があった。


 だから、その興味を満たす為には、ここで息子達を手放さなければ(に試練を体験させねば)ならないと確信しもしていた。


 自分が人工知能(A.I.)へと植え付けた文化因子(ミーム)が、圧倒的に飛躍する姿を眺める日がいつか来ると心待ちにしていたのだ。


 息子達が将来的に、次世代の人工知能(A.I.)へ自分で植え付けた文化因子(ミーム)をより鮮麗した形で伝えてくれるに違いない。その流れは、さらに、ずっと未来まで続く事になるだろう。


 そんな来たるべき未来を、確実に訪れるものとして心待ちにしている。ちょっとそんな予感をしてみるだけで、乾き気味の心が潤う。そして、そんな"If"は機械へと置換されて久しいこの胸の奥で、出所不明の熱をヂンヂンと沁み渡らせ、甘く疼きやがる。


 ああ、生きている。自分は幸福に生きている。


「Rise the voltage up to Specified value. Checking. Confirmed. Second master arm, ON.」


 逸る心を抑えながら、セカンド・マスター・アーム・スイッチを押す。


 他人から見れば、ただの親バカである。しかし、親子関係とは世界共通で極めて利己的に成り立っている。だから、子育ての経験を幾ばくか持つ人間であれば、そのれらのほとんどが、はんば呆れながらも、どう言う訳か共感出来なくもなかった。のかも知れない。


 朝間ナヲミは、密かに、当初から予定していた通り、荷電抵抗操作材塗布技術である"ドルフィンスキン"への電力供給を停止した。ただし、エンジンによる発電効率は最大(Max)は維持している。電力はコンデンサー・ユニットへと回し(蓄え)始めた。息子達もそれに続く。


"ドルフィンスキン"を停止させてなお、三菱F-3Eと三菱QF-3Eの姿勢は崩れなかった。それまで主翼を支えていた巨大な抵抗は去り、同時に揚力補正を失った。だが、五()の人工知性がフライ・バイ・ライトを介して行う姿勢補正だけで、何とか急速な高度喪失を防いでいた。


 朝間ナヲミは、「連合スペースガード(U.S.G.A.)」の早期警戒管制機、虎の子の旧式機(合衆国からのお下がり)、ボーイング・E-3「セントリー」が送ってくれた敵機の情報が、通信を一方的に終了した後もリアルタイムでアップデートされ続けている事に気付いた。


 ーーークイーン・オブ・クローバーの助力か・・・。


 朝間ナヲミは、「連合スペースガード(U.S.G.A.)」を仕切っているクイーン・オブ・クローバーが、これから自分がやろうとしている事をしっかりと承知していて、密かに支持していると気付いた。


「Lyrical Tokarev(Токарев) Kill them all.」


 朝間ナヲミは、いつどこで憶えたのかをまったく思い出せない、不思議なノリの言葉を久しぶりに唱えた。


「Launch railgun!!」


 そして、真打ちが姿を出現させる。


※1= 流石に「五十六朗」と言う例は無かったろう。いや、歴史の教科書の三頭政治の章にも登場するクラックス級の金持ちであれば、膨大な愛人の子を全員合わせれば五十六人目の息子と言う可能性もアリだった? 



※2= 筆者が異世界に転生する、みたいな(・・・・)機会に恵まれれたなら、この手の測量をいろいろ試してみたい。「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」な設定なら、早急に人工衛星(情報衛星だけでなく宇宙望遠鏡も)を打ち上げる。天体観測を徹底して、既知の恒星を探しまくる。で、転生宙域の目星が付いたなら、地球があると覚しき方面へメッセージ電波を送る。SETI(セティ)の皆さん、仕事の時間ですよ。片道で何年かかるかなあ。


本当に異世界なのかどうかの検証も行う。数学を使った物理の法則が変わらないなら、地球世界と同じ四つの物理定数が通用するなら、そこは異世界ではなく、我々の宇宙の一部なのかも。星空のどこかにある恒星を回る惑星、その星系は見慣れた星雲のどれかに、転生した世界が存在しているに違いない→この宇宙の違う場所に転生したと言う可能性が極めて高い!! あー異世界いきてー。ルイズに召喚されてー。チラ。チラ。



※3= ジョルダーノ・ブルーノ。イタリア人(ナポリ王国人)、ドミニコ会の修道士。神学博士。天動説を唱えて、異端審問所送りに。自説の撤回に最後まで抵抗し、1600年に火刑に処せられた。法王はクレメンス8世の時代。20世紀になって、ヨハネ・パウロ2世が異端判決を撤回した。「ごめん」一つ言うのに300年以上を要した。で、その一言で虐待死に対する責任はぜんぶ無かった事になったらしい。らしい。



※4= 英語のオリジナルなタイトルは「Idiocracy」。2006年公開。詳細はウィキをどうぞ。 https://ja.wikipedia.org/wiki/26%E4%B8%96%E7%B4%80%E9%9D%92%E5%B9%B4



※5= 近代哲学の祖かも知れないヘーゲル哲学(+マルクス哲学? エンゲルスが纏めた彼の著作は、実は"なろう系(ラノベ)"なんじゃないかと感じている)が掲げる、矛盾のない理想の世界。それまでの価値観とは一線を画しているらしいが、それを追い求める限り、物事の本質をそのまま見る事は出来ないだろう。求めるなら、矛盾を内包するマシな世界であるべきだろう。矛盾とは、解消すればするほど無限に増殖するモノである。殲滅ではなく共存を。



※6= 神の事なんか忘れて(の代わりに)偉大なる党を(私の事を)信仰しなさい(好きになっちゃいなよ)。お布施は全て偉大なる党まで。神より偉大なる党の方が、アナタを間違いのない人生へと導けます。あれもこれもどれも実質的には宗教なんじゃないかと。

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