墜ちる㕶星、拾う百萬星。 〜25
バンコク、ドンムアン空軍基地の一画。
一機の三菱F-3Eと四機の三菱QF-3Eに対して、用途変更を主眼に置いた作業を施している。
それは、全機のボディ下部に収められるウエポン・ベイ・ユニットの全交換。
さらに、空気取り入れ口横にある近距離武装・ベイ・ユニットを高高度での機体制御を司るRCSユニットへの交換。
それらの二点が作業内容だった。
ボディ強度を総括的に向上させる効果をもたらすサブ・フレーム入りのウエポン・ベイ・ユニットが取り外され、ボディ内に生じた空間へ、容積量だけが自慢の華奢なウエポン・ベイ・ユニットが押し込まれてつつある。
これらの作業は、三菱F-3Eの用途を軍事用途から民間用途へと変更する為に行われている。
軍事用途ユニットであれば、中距離空対空ミサイル×4本または準長距離空対空ミサイル×2本しか収納出来ない。それは、三菱F-3Eのボディの応力と歪みのバランス(※)を取る用途で設けられているサブ・フレームが悪さをしているせいだ。
ーーー悪さとは、サブ・フレームが有限の収納スペースの一部を占有してしまっている事を指す。
ボディ下部中央の膨大な体積を、何の構造物のない、構造力学的には無為な空間=収納スペースでありながらそこを支柱が無為に占有している。
しかし、サブ・フレームは無くてはならない構造要素でもある。もし、サブ・フレームを入れずに高いGがボディを見舞う高機動を行うと、メイン・フレームだけでは支えきれずにボディを歪めたり、重要構造物に罅を入れたり、梁部などを粉砕してしまう怖れがある。また、油圧系統の配管を屈曲させるどころか破断させたり、動力付きワイヤーを引き千切るかサーボのベアリングを潰したり、情報伝送系の配線までをもねじ切りかねない。
そんな惨事を予防してくれるのが取り外し可能なサブ・フレームだ(正確にはサブ・フレームを付け加えたウエポン・ベイ・ユニットである)。
軍事用途、空戦専用のウエポン・ベイ・ユニットの各部には、圧縮応力、曲げモーメント、剪断応力、引っ張り応力などを増進して、高機動時に機体全体を襲い蝕む歪みの抑制に大変有効な支柱が、ユニット外枠に沿うなどして張り巡らせられている。
また、三菱F-3シリーズの機首部には、最大3度ほどの可動域を持つ「間接」が採用されている(流星迎撃専用のC型を除く)。その機構は、応力の増進を目的としていると言うのがミリオタ界隈が弾き出した鉄板回答だ。
一部の先進的なミリオタによれば、ウエポン・ベイ・ユニットのサブ・フレームは、異例にしか見えない「間接」機構を用いてなお解消出来なかった、三菱F-3シリーズの特異な機動性がもたらす高G問題を解決する為の回答であるとされていた。
だが、そのサブ・フレームを今回は取っ払っている。それはベイ空間を最大限に有効利用する為だ。
サブ・フレームを取っ払うことで、手っ取り早くウエポン・ベイ・ユニットの実用的な内部容積を増やす事が可能なのだ。サブ・フレームを取り除いて捻出する新たな容量・容積の御陰で、通常の空対空ミサイルよりも遙かに太く大きい対流星破砕ミサイル(事実上の対衛星攻撃ミサイル)一本を完全に機体内に収められる。
これは三菱F-3Eから「牙」を抜く作業だ。自動車に例えるなら、峠を攻める"走り屋仕様"から、高速道路を延々と真っ直ぐに走り続ける用途に特化した"荷物輸送仕様"への用途変更作業とも言える。
しかし、この「牙」を抜く、旋回Gが最大4Gまでに制限される仕様変更にもメリットがない訳ではない。先にも述べたが、対流星破砕ミサイルを完全に機体内に収められる様になるのだ。
第5.5世代戦闘機と評される三菱F-3シリーズによる流星迎撃と、第4.5世代戦闘機によるそれの大きな違いの一つは、大型のウエポン・ベイの有無だ。
超大型ミサイルを主翼下などの懸架させず、ウエポン・ベイ内に収める事が出来れば機体の上昇効率や加速効率が目を見張るほどに向上する。超大型ミサイルを大気に露出しながら飛行すると、それが大きな空気抵抗を作り出す。当然、ミサイル発射高度である高度2万0,000mまで上昇するのも難しくなる。
三菱F-3シリーズは、ウエポン・ベイの御陰で流星迎撃任務時に高度2万0,000mのミサイル発射ポジションに着いた後であっても、まだ幾分かの機動力を発揮出来るくらいの余裕を持っていた。狙った空域に向けてズーム上昇を仕掛ける一発勝負しか出来ない第4.5世代戦闘機と比較すると、運用面で圧倒的に優れていた。
三菱F-3シリーズであれば、実際に、ズーム上昇を掛けると同時に機首方向だけでなく、上昇ベクトルにさえ手を加える余裕があった。ミサイル打ち上げ空域に着いた後の滞空時間も長かった。また、多少であれば、その場から新たに設定された空域の移動だった
これは大気圏に突入した後の流星の落下軌道が、事前の観測結果から推定された数値通りでなかった場合に大きなアドバンテージとなる。第4.5世代戦闘機であれば、状況の変化に追従出来ずに地上の基地へと帰還する以外の選択がないのだから。
これは無理して第2世代戦闘機を長年使用し続けて来たドゥクパ王国・空軍の様な、国土防衛に先進国並みの予算を捻出出来ない社会国家にとっては垂涎の性能だった。
ボディ下部に、容積がでかいだけの頼りないウエポン・ベイ・ユニットが収まった。特殊ボルトによる固定だけでなく、各所にスポット溶接を追加で施し終わったらしい。
情報伝達系の電子信号の開通が確認され、時間を惜しんだ合衆国技術者が、ぶっとく長い対流星破砕ミサイルを持ち上げクレーンでウエポン・ベイへ収めている。三菱F-3Eからは触れる事が出来ないコア・システムへ有線接続して何かパネルを叩いている。
ーーー核弾頭の起爆コードを打ち込んでいるのだろう。
朝間ナヲミは、擬体経由の優先接続で「連合スペースガード」のサーバーから送られて来る状況情報を閲覧しながら、我が子達に施されレ手居る作業の様子を見守っている。
対流星破砕ミサイルの所有権は合衆国にあり、「連合スペースガード」へと貸し与えられている。そして、「連合スペースガード」が現場の迎撃部隊へ流星迎撃業務を委託し、それに不可欠な道具として貸し与えられている。
核爆弾に関する不拡散条約、核兵器不拡散条約によって、核関連の技術が物質の配布行為は厳格に管理されている。一方で、権威主義国家群はかなりなあなあに融通し合って管理している。正確には人民共和国が脱退済みである以上、かなりフリーハンドでアンダーテーブルな管理を徹底している。正直、核兵器不拡散条約を厳守しているのは民主主義国家群の方だけである。
つまり、「核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)」は事実上の崩壊状態にある。
その状態で、核兵器不拡散条約を厳守し続ける事は、国際政治に舞台で一方的な不都合を被る事になる。
それでも合衆国は核兵器不拡散条約厳守の姿勢を貫いた。
合衆国が、国際社会において、影で、過激なジャイアン仕草が煙たがられているのは間違いない事実だ。しかし、核兵器の拡散の阻止に全力を尽くしている一点だけは、多くの国家が高く評価して然るべきだろう(拡散を望む破落戸国家の視点で語るなら、この一点は無念に尽きるに違いないだろう)。
ーーー悪貨は良貨を駆逐する。
合衆国は、自らの振る舞いをピエロである事に徹する事で、自らが良貨である事を誇示し続ける事で、逆に悪貨の広まりの抑制を試みた。
核弾頭の拡散の完全阻止は無理だったろう。だが、かろうじて世界の国々に対して「核兵器の不拡散に関する条約」が、形骸くらいは残されていると言う印象を共有する事には成功していた。
もちろん、それは、自国の裏庭である近隣国家やその地に蔓延る反政府勢力などが核兵器を入手する事への怯えである事は間違いないだろう。しかし、それでも、重ねて言うが、イデオロギーとして不拡散を誇示し続ける態度にブレがないがないと言う点に関してのみは、高く評価して然るべきだろう。
日本国としても、合衆国のその態度は望ましかった。重篤な核アレルギーに苦しむ極一部の国民達が巣くう自国領内に、流星迎撃専用とは言え核弾道を常に配備する上での、野党や不思議な人達に対する格好の言い訳となるからだった。
だいたい、流星が落下軌道に乗った事を確認してから、「迎撃に不可欠な道具」を自国領でへ運び込めるのかどうかの検討を始めるなんて余裕はない。そんな政策を採れば、十中八九、「迎撃に不可欠な道具」を自国領へ運んでいる真っ最中に流星が地表や海面へと到達してしまう。
また、積み重ねられた経験だけで無く統計された数値によれば、核爆発の威力を利用しない通常弾頭では、流星脅威を排除する上で、極めて効果が薄い事が判明している。それどころか、排除効果は極めて限定的であると言う結論も出てた。だから、流星迎撃をしたければ、核弾頭の使用と言う選択するしかなかった(それでも嬉々して文句を垂れ続ける野党議員による演説や、彼等の支持者によるツイートには事欠かなかったが)。
「あのクソ共、本気で世界最終戦争でも始めるつもりか・・・」
朝間ナヲミは、誰も立っていないどこかへ向かって、悪態を突いた。クソ共とは、マスメディアや教育者が大好きな共産主義者達が作り上げた政府の事である。
広徳ロケット発射場や酒泉衛星発射センターが騒がしいのは、それを見せ付ける=強いメッセージを込めたジェスチャーだろう。
実際、雲南省や青海省に陣取る準中距離弾道ミサイル(MRBM)などの固体燃料ロケットを装備する部隊だけでなく、ロケット軍のラスボスに相当する"第二砲兵群"の動きが顕著だ。
隠せていると信じているらしい、長距離弾道ミサイル(ICBM)を含む、山中や僻地に設置されている公然の秘密ミサイル・サイロでも、ミサイルへの液体燃料の注入開始が確認されていた。
しかも、燃料と酸化剤の両方を注入中であるらしい。
普段は空の状態で保存されているタンクへ注入する液体の内容が問題なのだ。人民共和国は、日本国と違って、高圧ガスタンク、酸化剤タンク、燃料タンク、パイピングへの攻撃性のがほとんどない液体酸素、ケロシン、液化天然ガス(LNG)、水素などの自然や人体にソフトな物質の使用を好まない。彼等が好むのは、もっと自然や人体にハードな物質の方だ。
ソフトな方であれば、注入後も気楽に抜いてしまえる。抜き出した物質も通常の手段で処理して破棄出来る。しかし、ハードな方であれば、注入後に抜き取る事は最初から考慮されていない。もし、着火中止となって物質を抜いても、ミサイル(或いはロケット)を再使用する上でのハードルがとても高い。平たく言えば、再打ち上げ時にまともに機能するかどうかはかなり怪しい。
共産主義者達は、自分達のミサイル(或いはロケット)に使用する物質に、我々の感覚では耐え難い物質を好んで使う。猛毒の非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)の燃料とし、四酸化窒素(NTO)を酸化剤として、燃焼室でぶつけ合う。それらが爆ぜて推進力となる。
自然や人体にハードな物質ではあるが、大きなメリットもある。
ーーーミサイル(或いはロケット)の撃ち上げ準備期間をかなり短縮出来る。
しかし、それによって類い希な技術を持つ作業員達を無駄に消耗させたり、打ち上げるブースターへその物への負担を大きくしてしまっては、民主主義国家群の価値観では「元も子もない」ない事態へと転がってしまう。
このあたりの考え方の違いにも、民主主義国家群と権威主義国家群が相互理解を果たす上での大きな障害が横たわっている。
使い切り前提で設計・大量生産されている多数のミサイルに危険物質を惜しみなく注入している以上、たった今行われている攻撃準備は決してブラフではない。もう引き返せない選択をしていると見て間違いない。
或いは、この特級呪物なみにヤバイ自分達の醜態を民主主義国家群の指導者達に見せ付ける事で、権威主義国家群に対して「即時無条件全面降伏」を促しているのかも知れない。
ーーー戦争は好まないが、決して怖れない。
このコメントにこそ、マスメディアや教育者が、「絶対的平和国家」であると唱える、人民共和国の真実の姿勢が表れている。
もちろん、これほどの明白で決定的な証拠を山の様に積み並べたとしても、マスメディアや教育者の鉄のハートはにはかすり傷さえ付く事はない。それは本当に強固な信仰心を持ち合わせているせいである。
正直、その「強さ」をもっと建設的な事へと振り向ける事はできなかったのだろうか? まあ、出来なかったからこそ、我々にはとても真似できない、無類の「強さ」を獲得出来たのかも知れない。
ーーーきっと、近所の沢山の子供が戯れて遊ぶ"隠れんぼ"で、全ての子供達が夕食目当てで帰宅した後になっても、鬼役の子供がまだ見付けてくれない事を理由に、何の疑いも持たずに、辺りが真っ暗になっでもそのまま必死に隠れ続けてしまうタイプの子供だったのだろう。
朝間ナヲミは、子育ての経験を通じて、そう言った理解困難な価値観を持つ人類が、彼女の想定を遙かに上回る程に多数を占めていると言う事実に気付いていた。そして、そんな手に負えそうにない人々を、集めて、指導し、纏め上げていた、政治家「万条 菖蒲」の人並み外れた手腕には驚嘆を禁じ得なかった。
もっとも、その手腕を誇った人間は、彼女が守ろうとしていた人々の手により、散々な悲惨を見舞われた末に三途の川の向こうへと追いやられてしまった。
話せば分かると言う理想は理解出来る。共感したい。しかし、支持は出来ない。人民共和国の偉大なる党の様に危険なイデオロギーを誇示する者に対しては、平和を望めばこそ、常に武装の維持を心掛けなければならない。それが政治家「万条 菖蒲」が、日本国の国民に身を以て呈してくれた教訓であるらしかった。
少なくとも、政治家「万条 菖蒲」を看取った朝間ナヲミ本人には、そう思わずにはいられなかった。それこそが、救いようのない現実であり、打ち勝つべきとても身近な脅威だった。
「ナヲミちゃん。小隊全機の換装作業が終わったよ」
貧相なパイプ椅子に座って、一人でブツブツ文句を垂れていると、突然に後ろから声を掛けられた。いつの間にか、一連の作業の全てが完了していた。
秘密結社「フシミ00ファンクラブ」のメンバーの爺さんだ。
「時間があったから、剥げ掛けていた"ドルフィンスキン"の応急的な補修をやっておいたよ」
孤立無援の窮地に立たされた朝間ナヲミを救うつもりで、老体に鞭打って南国タイまで馳せ断じてくれた男達の一人だ。
「ありがとうございます」
ーーーこれで、流星迎撃のスクランブルが掛かれば何時でも行動を開始出来る。
パイプ椅子から立ち上がって、朝間ナヲミ渾身の一例を返す。昔と言って差し支えない過去、彼女が難民として日本国へ辿り着いた頃とは比べようがない程に、日本人らしい礼儀作法を体現して見せた。すでに、合衆国人として生きた人生より、日本人として生きた人生の方が軽く倍を超える程に長くなっていた。
気が付くと、秘密結社「フシミ00ファンクラブ」のメンバーの爺さん達に取り囲まれていた。
「これが終わったら一緒に日本へ帰ろう!!」
誰かが言った。
「そうだ。ナヲミちゃんはもう十分に働いた!!」
誰かが言った。
「そろそろオレ達爺さんの相手でもしてくれよ」
誰かが言った。
「そうだな。日本で反省会を開くから、冥土の土産に酒のお酌でもしてくれよ」
誰かが言った。
「それは良いな。そうしよう」
誰かが言った。
「そうしよう」
誰かが言った。
「そうしましょう」
朝間ナヲミが言った。突然に、そんな事を口走った自分自身の振るまいに戸惑う。
彼女の言葉は、モンシロチョウの羽ばたきの様にひっそりしたものに過ぎなかった。
それでも、秘密結社「フシミ00ファンクラブ」のメンバーの爺さん達は、そのか細い返答を聞き逃さなかった。
「良し!! 決まり!!」
「聞いたぞ!!」
爺さん達の熱気がどっと沸き上がる。
その様を見て、朝間ナヲミも「ま、良いか」と思えた。帰国したら宴会でも開くか、と言う気分にもなった。ここに来て、今までの自分とは違う心の持ち様に驚いたが、今の彼女は今魔の自分とは違う自身に対して嫌な印象は抱かなかった。
朝間ナヲミの軟化しつつある振る舞いに気付いて、爺さん達がはしゃぎ始める。それまで少し暗い雰囲気で包まれていたドンムアン基地のハンガー内の空気が確実に変わり始めた。それが、周辺にいる者達の視線を朝間ナヲミとその一団へと引き付ける。
対流星破砕ミサイルの起爆コードを打ち込んで、手錠付きのアタッシュケースを左腕にぶら下げている合衆国のエージェントも「盆踊りでも始める気か?」くらいに不思議な表情を浮かべて成り行きを眺めている。
その時、突然にアラート音が鳴り響いた。アンノウンを目標としたスクランブルのものではない。流星警告のアラート音だった。
機体付きの整備兵がヘルメットを抱いて現れる。生身のパイロット用の高高度用ヘルメットではない。擬体用の、酸素マスクを追加で付ける通常作戦用のヘルメットだ(擬体保持者は、高高度に上がる前に窒素抜きなどの事前準備が不用である。)。
「じゃ、行って来ます」
朝間ナヲミは、秘密結社「フシミ00ファンクラブ」のメンバーの爺さん達に向けて敬礼を送った。
出発の挨拶を送られた方は、全員が無言で見送った。ここで気が利いた台詞でも言おうものなら、それが不愉快なフラグを立ててしまうかも知れない。そう言う心配りだった。
朝間ナヲミは、ヘルメットを受け取って、三菱F-3Eのコックピットへ通じるタラップに右足を掛けた。
かろやかに。そうであって、なお、力強く。
機体の空気取り入れ口や、排気口周辺から、規定の距離まで全員が離れた。
それを確認した自律人工知性が、自己の判断で五つのAPUが起動させる。
続けて、朝間ナヲミからの指示を受信し、各自が自己の判断でそれぞれの機体に搭載されたメイン・エンジンに点火する。
朝間ナヲミは、既に自分がいなくても、この五機は勝手に任務を遂行出来るんじゃないか? との疑いを抱き始める。
「それはそれで良い事か」
独り言を漏らしてから、朝間ナヲミは擬体をハーネスで固定し、愛機のインターフェイスとの有線接続を終えた。
ーーーさあ、久しぶりに世界でも救うか。
そう唱える事で、既に喪失して久しいある種の情熱をもう一度取り戻すべく、自身に発破を掛け続けた、
それが無駄な努力である事を十分に知りながら、やらずにはいられなかったのだ。
※= 固すぎても脆すぎても行けない。強すぎても弱すぎてもいけない。柔よく剛を制する。上手にしなって過分な力を外へと逃がす構造である必要がある。




