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命を継ぐ者。 〜 Inherit the Life. 〜  作者: すにた
第八章 それぞれのフロンティア。
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墜ちる㕶星、拾う百萬星。 〜15

 敵占領地の奥深くに取り残されていた「ナム・ウゥー水力発電所・配備部隊」の無事が確認されてから、約6時間後。


 ラオス・タイ連合軍は、夜明けと共に、雄鶏の鳴き声と共に行動を開始した。


 同盟国が保有する低軌道衛星が誇る、超高感度赤外線や超精細撮像素子とレンズ膨張補正システム協業によって、敵地にあるナム・ウゥー水力発電所・配備部隊の状況は1日に16回ほどアップデートされた。


 これは"地球観測衛星"のカテゴリーを名乗る同盟国のスパイ衛星が、地球を24時間で約16周すると言う意味でもある。


 そして、リアルタイム情報の方は、度切れ途切れではあるが、衛星コンステレーションによる民間サービスの借り上げで収拾されていた。


 それによると、総勢22人だった部隊は、3つの小隊へ分割され、それぞれがバラバラの方向へと散った。これは、人民共和国による追撃の手を三分割する事を狙っての事だ。


 たった22人だけの部隊である。それも、タイレベルで装備している兵器も両手で持てる程度だ。両手で抱えられる程度ではないのだ。


 最も重武装した兵でも、9mmパラベラム弾仕様の短機関銃(サブマシンガン)一丁に予備弾倉一つだけ。そうれなければ、拳銃一丁と手榴弾を少々(予備弾倉は無し)。更に、徴用された民間技術者に限ってはゼロだ(十分な訓練を受けていない者には武装させない。デメリットがメリットを上回る為だ)。


 全戦力を一箇所集中させて当たっても、人民解放軍側の空からの襲撃の難易度を下げるだけだ。この少人数であれば、もし、追い付かれたら、待ち構えられて鉢合わせたら、直ちに包囲されてしまう(少数で大人数からの攻撃に耐えるには、要塞戦に持ち込むしかない)。


 そこで、メコン川で沈み行くボートから必死で陸揚げした兵器を、更に厳選の上で減らして携帯し直した。可能な限り軽装になって山中を逃げ回る事にしたのだ。


 険しい地形の上では、軽装こそが正義。重武装した大軍を振り切るには、空身になって必死に逃げるしかない。


 ラオス・タイ連合軍による最初の行動は、三つに散らばった友軍の進路を予測し、それぞれの予測路上に食料や医薬品をばらまく事だった。ドローンなどの無人機を多用して、救助部隊の人的損失ゼロ方針を貫いた。


 人民解放軍は、それらのドローンに対して電波妨害やUAV用弾頭(榴弾砲)による破壊を徹底した。そして、ラオス・タイ連合軍が特殊部隊などを()領土へ浸透させて、自分達がぶら下げているエサに向かって引き寄せられるラオス・タイ連合軍を根絶やしにするつもりだった。


 その本気度は、虎の子の「機械化特殊部隊」を各所に布陣させたことで分かった。


 機械化特殊部隊。人体改造によって、より優れた能力を後天的に付与されたサイボーグ兵士だけで構成される戦術部隊である。


 しかし、これは彼等にとっては想定外にも上手く機能しなかった。


 ラオス山岳地帯とは言え、東南アジアはやはり高温多湿である。そんな過酷な環境は、サイボーグ兵士の設計者達が想定した運用条件から激しく逸脱していたからだ。


 サイボーグ兵士は、基本的に、低酸素・低温度と言う環境下で運用する事を想定されてデザインされていたせいだ。


 その辺りのゴタゴタもあって、「ナム・ウゥー水力発電所・配備部隊」の存在が確認されてから約24時間はラオス・タイ連合軍による脱出支援作戦は上手く事が運んだ。人民解放軍による占領地から脱出する為に南下する距離を順調に稼げた。


 しかし、その後は物量が圧倒的に勝る人民解放軍が一方的に巻き返した。


 体制を整え終えた人民解放軍は、三つに散らばった脱出部隊やそれぞれの進路を狙って、断続的な空爆や砲撃を充実させていった。


 また、嫌がらせとして、山中一帯に人体有毒物質の空中散布も続けて行った。それは、山中行動に不可欠な水分摂取の阻害と意図して行われた。


 流石に、本格的な化学兵器の散布までは行わなかった。しかし、それは人道的な見地からの自制ではなく、まして世界中の報道機関の好奇心が集まっている為でもない。


 人民解放軍は、「ナム・ウゥー水力発電所・配備部隊」を一人たりとも生きて返すつもりは微塵もなかった。だが、当面は出来るだけ惨めな状態で出来るだけ長く生かし続けると言う、偉大なる党幹部が採用した基本方針があったからに過ぎない。


 しかし、それはラオス・タイ連合軍とって悪い事ばかりではない。救出作戦の対象が長く生きれば生きるほどに、目的達成の可能性が増すのだから。


 ただし、救出作戦の対象である(山中を必死で逃避する)22人にとっては、偉大なる党幹部が採用した基本方針とラオス・タイ連合軍の楽観は迷惑極まりない。しかも、この種の嫌がらせは、偉大なる党と人民解放軍が最も高く才能を発揮する種の行動だったので、本当に溜まった物ではない。(なぶ)り手の圧倒的な、世界一とも評価出来る、実に天性(奇跡)としか思えない才能(ギフト)は、その種のハラスメントに対して最大・最多・最高の親和性を誇っていた。


 ーーー類い希な才能とある特定の状況が、理想的な形で出会う(完全にマッチする)と言う希有な例。


 才能と状況がもっとも華やかに交差したとも言える。


 好きこそものの上手なれ。


 だから、甚振(いた)ぶられ、(なぶ)れる方としては、体験の全てが生き地獄(魔女裁判的拷問)となる事だけは確定だ。


 やがて、三分割された元ナム・ウゥー水力発電所・配備部隊の最初の一つが、ラオス・タイ連合軍がヴィエンチャンを離発着するヘリコプターの行動半径内へと入った。


 ラオス・タイ連合軍も人民解放軍も、ここからが本当の勝負である。


 ラオス・タイ連合軍がヘリコプターや徒歩へ送り込んで来る救助隊を、人民解放軍は次から次へ迎え撃つ(擂り潰す)段取りが出来ていた。侵略者側は、掠め取ったばかりの新領土(※主観的には)を利用して片手間に(・・・・)消耗戦、あるいは焦土戦を始めるつもりだった。


 確かに人民解放軍にも消耗戦は辛い。しかし、どうしても耐えられない程に辛くはない。一方で、物量の面で圧倒的に劣るラオス・タイ連合軍にとっては辛いどころではない。少しでも長引けば、連合軍にとっての即致命傷となってしまう。


 一日目は、ラオス・タイ連合軍が送り込んで救助隊のヘリコプターが近接信管による大量の破片を浴びて帰投した。


 二日目は、人民解放軍の追撃部隊がラオス・タイ連合軍による地上攻撃機の空爆を受けて一時的に活動を鈍らせた。


 三日目では、ラオス・タイ連合軍の地上攻撃機を巡って、ラオス・タイ連合軍と人民解放軍の戦闘機同士の空中戦が始まった。


 四日目で、ラオス・タイ連合軍の戦闘機の稼働率が急激に落ちた。タイ王国空軍のロッキード・マーティン・F-16Vやサーブ・JAS-39の飛行隊による戦闘行動を、遂に維持出来なくなったと言う事だ。


 そこで、ラオス・タイ連合軍は、日本国の田原航空警備保障への航空優勢確保に向けた支援を正式に要請した。


 それによって、朝間ナヲミの5機の三菱・F-3Eとタイの民間軍事会社「アリンタラート」のノースロップ・グラマン・FA-18A/Bの全5機がウドン・ターニー空軍基地に集結した。


 この時点で、アリンタラートは、既にFA-18を2機、保有する攻撃機の三割を喪失済みだった。


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