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命を継ぐ者。 〜 Inherit the Life. 〜  作者: すにた
第八章 それぞれのフロンティア。
73/143

墜ちる㕶星、拾う百萬星。 〜10

 ラオスの山々の頂を雲が覆い続ける雨季。


 時より大粒の雨が大地を殴りつける様に降る。


 町中でも、ちょっと歩いただけで足下がすぐに泥だらけになる。


 オートバイのタイヤと泥よけの間に、しつこい粘土でこびり詰まって走れなくなってしまう。


 草葉の陰や森林の葉々では、大量の吸血ヒルが私達や家畜が近付いて来るのを待っている。


 そんな、誰にとっても不愉快な天候が長く続いていた。


 10月の終わり、罰ゲームの様な季節が終わる兆しがやっと見え始めた。


 嫌な時期が終わって、好ましい時期が始まる。


 普段であれば。


 南部の平野(ヴィエンチャン)から最南部メコン沿いの都市(サワンナケートなど)に住む、大多数のラオス人民は乾季の訪れの大望している。


 涼しくて過ごしやすい季節がやっと巡って来ると。


 そして、外貨を携えたガイジン(※1)もラオス領内を訪れる。それは、ラオス人社会ではやや枯渇気味だったお金が僻地の村々へも届くと言う事でもある。


 全国土でガイジン観光客、最近では「インバウンド」とか呼ばれる連中が溢れる。蔓延る。


 ーーーただし、「インバウンド」と違って、お金の方は溢れる程に沢山は届かない。とても皮肉な事に。


 涼しく過ごしやすい季節の到来を喜ぶのは、何も南部の平野に住む人民だけではない。北部の山岳地帯に住むラオス人民も似た様なものである。


 ただし、彼等にとっての乾季はちょっとだけ寒い。寒気も一緒に訪れるので本の少しだけ警戒もする。手放しで喜ぶ訳ではないのだ。


 夜はキチンと着込んでから就寝しないと風邪を引くなるからだ。特に子供達。それと酒を飲んでそこら辺で見境なく寝始める大きな子供達。


 風邪は万病の素である。特に発展途上国の社会では、とても身近にある「死」へと繋がる病の素となるのだ。


 実際、全国土に散らばる薬屋が、パラセタモール系(アセトアミノフェン)の風邪薬の在庫を確認し始める時期でもある。


 ただし、この年だけは、全てのラオス人民が、間もなく到来するだろう喜びの季節(乾季)そのものを警戒していた。


 それは、今やラオス社会全体が戦時へと転げ落ちているせいだった。


 ラオス北部から、人民解放(・・)軍が人民共和国国籍保持者である筈の「人民(同胞)」を、地域軍閥であるラオス政府による支配(圧政)から「解放(・・)」してあげる(・・・)為に南下の真っ最中である。


「あげる」「あげる」と実に、余計なお世話が(はなは)だしい。反吐が出るほどに押し付けがましい。


 幼馴染みの美少女が、毎朝欠かさず主人公の男子を目覚めさせてあげる(・・・)類いのお節介ならば、(はなは)だしくない。それどころか、とても尊い。何時でもウエルカムだ。


 しかし、金と軍事力だけ携えた成金野郎が突然に、それなりに平和に生きている人々に向かって「お前は不幸だ。助けてあげる(・・・)」と唱えて殴り込み(カチコミ)を掛けてくるお節介は、迷惑千万(はなは)だしいだけでなく、卑しさまでもが上積みされる。


 まるで、(こく)った美少女にフラれて、恨みを(つの)らせて反社会性行為に身を投じる経験の浅い雄の無様さと同程度に(あさま)しい。もちろん、(あさま)しいだけでなく、醜怪醜悪(はなは)だしくもある。


 雨季が終わると、北部山岳地帯の大地が乾燥する。定期的に降る大雨が減り、最後は降らなくなる。


 大地が乾燥すれば地盤が引き締まり、徐々に安定し始める。特に、水捌けの良い山岳地帯ではその傾向は顕著だ。


 実際、ラオスでは山岳地帯の国道の整備は、基本的に乾季にのみ行う。それは、乾季以外の時期にどれだけ高頻度で工事を行ってもまったくの無駄であるからだ。


 雨季に降る大量の雨のせいで山肌は次から次へと崩れる。崩落する。瓦礫が国道上に積もって通行不能となる。折角舗装したアルファルトを破壊するだけでなく、国道のアルファルトを支えていた地面そのものが地滑りで消滅してしまう事も珍しくない。


 直しても直しても、次から次へと壊れる。補修費と労力とやる気の無駄である。だから、雨季の間は全ての補修工事を中止・放置するのが慣わしである。


 いや、むしろ、雨季に工事作業を強行しては工事従事者がとてつもない危険に曝される。そればかりではなく、作業の振動や工事用重機の重みが、雨季の大雨を受けてで弛んでいる地盤そのものを崩してしまう可能性が高い。直すつもりが、逆に破壊を促進し、インフラ全体を崩壊させてしまいかねない。


 ラオスの雨季は、泥濘が全土で発生するだけでは済まない。例えば、ラオス山脈地帯は、ヒマラヤ山脈と同様に、それを構成する岩盤強度が物凄く低い。とてつもなく脆い。


 水墨画などで広く知られる、人民共和国の"南方カルスト"が山脈を形作っている。あの美しい風景は、地盤の脆さと儚さを同時に表している。


 山岳地帯を支える構成材が多分に石灰石質である事から、ちょっと圧力が加わっただけでヒビが入って崩壊するし、不意にバラバラになって崩れる。ネパールやラオスの山岳道路にトンネルが少ないのは、国庫の金欠だけが理由ではない。掘削中の事故発生率がとても高く、更に完成させた後の維持と運営もとてつもなく困難であるからだ。


 つまり、雨季にラオスを好き好んで攻める阿呆はそう多くないと言う事。


 圧倒的な量を誇る人民解放軍による、東南アジアの最貧国との戦争が短期間で終わらなかった最大の理由。それはラオスが雨季と言う天然の防壁に守られていたからだ。


 雨季が終われば、ラオスを守る自然的な要害の一つは消失する。そうなると、今度は人民解放軍の攻撃ターンへと局面が変化する。


 人民解放軍がやっと本気を出すのだ。ラオスとの国境周辺に、約二週間かけて集積した大量の戦力と物資が戦線に投入されてしまう。おそらく、事実上はタイ王国軍で構成されている「ラオス・タイ連合軍」が、何とか押し留めている前線が、そう遠くない未来に北部から南部へ移動する事になる。


 ラオス・タイ連合軍が先に奪取した要害の地であるトー山脈(プゥー・トー)。そこを良い急ぎで逆向きの要塞へと作り替えているのも、雨季明けに予想される人民解放軍の大攻勢が予想されているからだ。


 間違いなく、トー山脈(プゥー・トー)は遠くない未来に人民解放軍によって再奪取される。ただし、少しでも、1日でも1時間でも、再喪失を先延ばしする為の処置を施したい。


 どのみち、ラオス・タイ連合軍のパワーだけでは人民解放軍の侵攻を止められる筈がない。だから、後方であるタイランド湾に面するタイ王国からヴィエンチャンまでのルートを確保する為だけに、多くの犠牲を支払って前線を必死になってラオス北部で持ち上げているのだ。


 ラオス・タイ連合軍が策定した戦争行為に於ける勝利条件は、民主主義国家群からの支援軍が上陸するまで持ち堪える事だけだ。


 もし、大戦力がタイ王国のサッタヒープ港やレムチャバン深海港へ到達すれば、戦局は一変する。


 人民解放軍は、互角の戦力同士での戦闘を祖国の命運を賭けた条件で経験した事がない。基本的に弱い物を(なぶ)るか、義勇軍として、何時でも戦闘から自分の都合で撤退出来る条件しか本格的な戦争に参加した事がない。


 だから、彼等が(・・・)誇るハデなスペックでデコレートされた至極立派な(量より質の)軍隊は、キラ星の如く輝く民主主義国家群の兵器群と直面すると、ついつい怯んでしまう(面子の問題で、間違ってもその事実を認めないだろうが)。


 後方に控える彼等の(・・・)指揮官はそうでもないかも知れない。しかし、少なくとも実際に命を磨り減らして戦っている、彼等の(・・・)現場の兵士の大多数は、怯まずにはいられない。


 自分達が使用している最新兵器の大半が実は違法コピー品である事は、幹部教育を受けた野戦指揮官でなくとも、情報入手が手持ちのスマホ頼りと言う下っ端のレベルでも承知している。そして、自分達を狙って引き金を引かれる兵器が違法コピー品ではなく、元ネタである正規生産品である事も承知している。


 結果として高確率で初陣で潔く散りまくるDQN兵(勇者達)でもない限り、間違いなく戦闘に対する積極姿勢が日に日にゴリゴリと削がれて行く。


 人民解放軍もその事実は十分に弁えている。だから、雨季に拘わらず攻撃面での不利を承知でラオスへ侵攻したのだ。


 民主主義国家群からの支援軍と、同時に供与されるだろう最新兵器が、タイ王国のサッタヒープ港やレムチャバン深海港へ到達する前にラオスの首都であるヴィエンチャンを落としたい。不良品率が少なく、スペック通りの機能を発揮する正規生産の兵器群の前に自分達を曝さずに済むと考えての事である。


 その頃、タイランド湾入り口では、民主主義国家群からの支援海軍の艦隊と人民解放軍・海軍の艦隊による睨み合いが続いていた。ただし、民主主義国家群側が圧倒的に有利だった。


 中央突破も挑めず、陽動戦力も捻り出せない人民解放軍・海軍の艦隊は、友邦国(従属国)であるカンボジアのシハヌークヴィル(世界自由平和共栄深海)()への入港もままない。ただただ、物資を海上で無駄に食い潰すと言う無駄は日々を送っていた。


 仮に、出し惜しみせずにスリランカを母港とする人民解放型空母を投入していたとしても、状況好転しなかっただろう。何故なら、民主主義国家群はタイランド湾に、軽空母とは言え、真面なキャリアプレーンを三隻も擁していただけでなく、マレー半島からタイとマレーシアにある陸上の空軍基地からの支援を受けられたからだ。


 人民解放軍・海軍。特に水兵達は、既に長く続く洋上生活に嫌気がさしていた。それまでの心の支えとしていた、シハヌークヴィル港への上陸が二週間も遅れている。これは、水兵的には、特に泳げない者が圧倒的多数を占めると言う不思議な海軍の水兵達にとっては、どうやっても妥協不能な不満であった。その不満は、艦隊内で一刻一刻と高まっていった。幹部達はその不穏な圧力を背筋と首筋で感じ、とてもいたたまれない気分で狭い艦内通路を往復していた。


 人民解放軍が目論んだ電撃戦。それは今のところラオス・タイ連合軍に阻まれていた。更に、タイ王国が雇い入れた日本国の民間軍事会社(PMC)の田原航空警備保障と御殿場陸上警備保障の参戦によって、トー山脈(プゥー・トー)要塞が陥落してしまった。


 この想定外に人民共和国は、首都白京で日本国大使を真夜中に呼び付けて、6時間待ちぼうけを食らわせてから、夜が明けてから厳に抗議した。


 日本国大使は、「民間企業のすることでありまして〜」、「資本主義国家では一民間企業の営利追求行為を止める権限を持ち合わせていない訳でして〜」、「誠に遺憾であります〜」と伝統芸のノラリクラリで受け流した。結局、人民共和国はペルソナ・ノン(PNG)・グラータを通告して複数の外交官を同時に国外追放に処す事しか出来なかった。


 複数の(・・・)外交官を同時に(・・・)国外追放すると言う行為は、民主主義国家の外交ではかなり珍しい。


 日本国は、これを人民共和国の混乱と取った。合衆国は、これを人民共和国の弱気と取った。


 日本国は、合衆国とは違って、人民共和国を社会的にではなく人間的に眺めていた。つまり、日本国は、人民共和国が時に間違いを犯したり、想定外な自身の行動に当惑したり、困惑したりもして当然と察していたのだ。


 ーーー人民共和国の一部勢力は、将来的に日本国を交渉相手の一つとして保持し続ける事に(こだわ)っている。


 少なくとも、日本国大使はその様に受け取った。もちろん、その印象は胸の中に秘めた。何故なら、報告書にわざわざ書いて見せてやる(・・・・・)事で、人民共和国側の老人達の血圧を敢えて上げる必要はないと考慮したからだ。


 人民共和国であっても、上から下、右から左まで一枚岩と言う訳ではない。国家の政体に関係なく、何処の国であっても、辛うじて国家としての行動方針を何とか保っているに過ぎない。ただし、岩の板は大小ではなく、強弱。"弱い岩"に属している者への処罰の程度は、国家の政体に大きく関係する。


 民主主義国家であれば、極めて悪質(外患誘致)であると判断された場合は、"弱い岩"に当たる人物達の政治的な将来は断たれる。だが、政治以外の分野へ鞍替えすれば、その分野なりの栄達の道が残されている。「野」や「民」とへ下れば、そこではそこに於けるそれぞれ異なる社会が存在し、当然の様に異なる文化が育まれているからだ。環境が変われば岩に強いも弱いもない。民主主義国家では岩の強弱は決して不変ではない。何故なら、多様な分野とは。右翼的から左翼的まで幅広く存在しる為に、上下と言う力の関係などは簡単に引っ繰り返るからだ。


 しかし、独裁制国家であれば、独裁者の虫の居所が悪い時に"弱い岩"に当たる人物が目に付いたと言うだけで、不運にも政治的な将来を完全に断たれてしまう事もある。同時に、社会的な立場までもが失われる場合も多々ある。場合によっては不運な"弱い岩"は人知れず、物質的に消滅させられているかも知れない。知れないと言うのは、そう言う場合は一切痕跡を残さずに本当に何もかが消滅してしまうので、後から科学的に検証する手段が皆無であるからだ。


 民主主義国家で生きる"岩"が、独裁制国家に生きる"岩"の切実度(本気度)頻繁に読み違える(理解出来ない)のはそのあたりが原因だろう。


 反主流と言うロマンの追求には、フォークダンスや合唱と言う楽しみは全く含まれない。民主主義国家で生きる"岩"には、これすら分かっていない可能性すらある。そう言えば、大昔に、そんな甘い夢を見て、日本国からソ連に亡命した若い男女(カップル)が不法入国とスパイ容疑で早々に銃殺されたと言う出来事があったな。


 特に社会主義や共産主義を掲げる独裁制国家に生きる"岩"の人生はなかなか辛い。人知れずに闇に潜んで、七年地中に籠もるセミの様に、ただただ、地上に出て羽化するチャンスを(うかが)い続ける様な辛い生き方である。そして、羽化するチャンスはほとんどの"岩達"に訪れないと言う事実も知っておくべきだ。そして、万が一にも羽化するタイミングを見誤ると、軍隊の水平射撃に追われたり、戦車に踏まれて終わるんだから。


 そんなこんなのワレワレには今ひとつピントが来ない事情の作用によって、ラオス戦線は突然に激しさを増していた。


 トー山脈(プゥー・トー)要塞が陥落して、ウドムサイ南部に限れば榴弾砲で直接攻撃可能な位置への敵の進出を許してしまった。人民解放軍・陸軍は、ウドムサイの継ぎ接ぎだらけの滑走路を死守する為に、前日までとは違った奮闘を見せ始めた。


 人民解放軍・空軍でも、とうとう主戦力のAVIC・J-20「威龍」が姿を見せ始めた。民間軍事会社(アリンタラート)の爆装したFA-18「ホーネット」の飛行隊を蹴散らし始めた。結局、タイ王国空軍がサーブ社製のJAS 39「グリペン」の部隊を全ての爆撃対隊の護衛に付ける所まで戦局がエスカレートした。


 制空戦闘機としてのJAS 39 C「グリペン」はとても優秀で、同じサーブ社製の早期警戒管制機340 AEW&Cとの協業でステルス機への対処を行っていた。トー山脈(プゥー・トー)要塞に置いた対空レーダーが運用を開始してからは、効率は更に上がった。


 FA-18「ホーネット」の飛行隊を飛ばせば、必ずAVIC・J-20「威龍」が現れので、発見もし易い。来るか来ないか悩む必要がなかったせいだ。


 また、AVIC・J-20「威龍」の戦術には大した幅が狭いと判明してからは、かなり効率的にカウンターを掛けられる様になった。


 まあ、時代劇ドラマ「水戸黄門」の印籠シーンを予期するくらい確実。


 一度だけ、JAS 39 C「グリペン」の隙を突いて、AVIC・J-20「威龍」が早期警戒管制機340 AEW&Cに接近を成功させた事があった。ただし、その時は、田原航空警備保障の三菱・F-3Eの編隊がどこからともなく現れ、早期警戒管制機の周辺に電子デコイを多数発生させて、襲撃者達にとっての獲物のロストさせる様に状況を誘導した。


 一連の攻防で、民主主義国家群は、AVIC・J-20「威龍」への造詣を深めて行った。


 予想はされていたが、AVIC・J-20「威龍」には、民主主義国家群では把握し切れない(フォロー出来ない)程の多用性が与えられていた。まさに、「威龍ファミリー」と言う状態にまで発展していた。


 1) 低空侵攻型「威龍」。

空気抵抗を現象させる事で加速性と横風への耐性を上げた変種。具体的には主翼と垂直尾翼が一目で分かるほどに小型化されている。その代わり推力の増大を求めてカナード翼を大型化させ、擬似的な複葉機的な状況を模倣している。ただし、損なわれた安定性を補って直進性を高める為に下部のベントラルフィンが大型化されている。旧ソ連のMiG-23の様に、離陸後に折り曲げてあったベントラルフィンが展開する仕組みと推測されている。三菱・F-3Eと交戦したのは、この「威龍」である。


 2) 強襲爆撃型「威龍」。

大昔にあったF-16XL、またはインド・HAL製のデジャスの様な主翼が大型化された変種。機体中央下部のペイロードベイ以外に、つまり主翼下にステルス外板を纏わせた対地ミサイルや爆弾を山盛りで積める。発見当初は、空気の薄い空域での機動を考慮した超高空型の後継と誤認されていた。


 3) 制空戦闘型。

全長を大胆に縮めて機体強度と上げ、機体重量を下げた変種。搭載燃料と搭載武器は格段に少ないが、FA-18「ホーネット」であれば常時相対的に有利な位置を占められる機動力を発揮する。民間軍事会社(アリンタラート)の評価によれば、最大の脅威と判定されている。ただし、この運用に徹する期待に果たしてステルス性を併せ持つ意義があるかどうかは印象が割れる。


 4) 大型爆撃型「威龍」。

翼とボディなど全てを拡張した変種。一度しか捕捉されていないが、合衆国の可変翼超音速戦略爆撃機、ロックウェル製のB-1B「ランサー」と同程度の全長と覚しき「威龍」。AVIC・轟炸十型「天鹅」の後継機の可能性が高い。ただし、国境を跨いでラオス領空まで進出した様子は見られない。


 これ以外に、過去に超長距離型の変種や超高空型の変種などの「威龍」が確認されている。この勢いでは、低軌道用(宇宙戦闘機)「威龍」と言う変種がいてもおかしくなさそうである。


 田原航空警備保障から派遣された朝間ナヲミ三佐の評価では、制空戦闘型「威龍」が最大の脅威とされていた。タイ王国空軍の戦闘機隊が先手を取られる形で戦う場合、味方機が多数であっても、少数精鋭の敵機に圧倒されかねないと本音を漏らした。


 御殿場陸上警備保障から派遣されたネモト陸将補の評価では、低空侵攻型「威龍」が最大の脅威とされていた。多数の地上拠点にこれで、ステルス機にあるまじき大編隊を組まれる飽和攻撃を仕掛けられたら、タイ王国空軍が差し違えるつもりで迎撃し続けても確実に多勢に無勢で押し切られてしまうと怖れた。


 結局、ラオス戦線に参加している面々の望みは、タイ王国のサッタヒープ港やレムチャバン深海港へ一刻も早く民主主義国家群からの支援軍が上陸ことであった。


 なお、日本国を出航して、南シナ海からフィリピン海へと転進した合衆国・海軍の第七艦隊は行方知れずとなってた。もちろん、人民解放軍も、最大の脅威の現在位置を血眼になって探していた。だが、それでも「鶉隠(うずらがく)れの術」で身を隠す第七艦隊を捕捉出来ずにいた。


 合衆国・海軍の第七艦隊の影響は、今の所、ラオス北部の戦況へは何らの影響も与えずにいた。

※1= タイだと"ファラン(ฝรั่ง)"と言う一言で欧州、合衆国、ロシアなどにいる、いわゆる白人全般を指す的確な言葉がある。同種の言葉がラオ語にもあるだろうと思っていたら、どうやら存在しないらしい。単に、外国人=コン(ຄົນ)タンプラテート(ຕ່າງປະເທດ)としか表現しない模様。もちろん、タイ語では正確にはコン(คน)タンプラテート(ต่างประเทศ)、またはカオ(ชาว)ターンチャート(ต่างชาติ)。やはり、タイ語とラオ語は相当な部分が重なる言語同士だ。そして、表現力的にはタイ語の方がかなり高度な発展を遂げている。

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