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命を継ぐ者。 〜 Inherit the Life. 〜  作者: すにた
第八章 それぞれのフロンティア。
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星が落ちた跡で。 〜2

強く(傲慢)であれ」なる意業(虚仮威し)由来の人災が、ラオス社会を巨大なキャンバスに見立てて、途轍もなく深い傷を描き終えてから12時間後。


 太陽が西の稜線へと近付き始めた頃、タイ国道2号線の北端部近くの、ちょうどマハーチュラロンコン仏教大学(ノーンカーイ分校)へのアクセス路の手前に、日本国・航空自衛軍が保有する戦術輸送機、川崎・C-2改が強行着陸を行った。


 一度のフライパスの後、着陸アシスト用の誘導危機は皆無で、尻も翼端も擦らず美しいフォームで降りた。


 その後、同型機が3機が、最初の一機の後に続いて等しく優雅に着陸した。合計4機は500m間隔で、タイ国道2号線の下り線(西側の舗装路)に並んで止まった。


 タイ国道2号線は、見慣れた姿ではなくなっていた。全ての電灯柱、ガードレール、街路樹が撤去されてサッパリとした見通しになっていた。


 残念な事に、国境に面するノーンカーイ県には大型機が利用出来るまともな離着陸施設がない。かと言って、元々は国境に面していた、ウドーンターニー県の離着陸施設の方を利用すると目的への物資輸送にタイムロスが多くなる(ノーンカーイ県はウドーンターニー県から分離独立した、比較的新しい県だ)。そこで、川崎・C-2改が日本国を離陸した直後から、タイ国道2号線北部の整備を初めて、臨時の滑走路の整備作業を始めた。


 日本国からタイ王国までの空路では、6時間を消費してしまった。それはジェット気流に逆らって飛ぶ為に、急いだ割には結構掛かった。おそらく復路では幾分は飛行時間を短縮出来るだろう。


 川崎・C-2改は、長さは十分でも横幅が不十分な臨時滑走路へ降り立った。同機は、原型となるC-2の時代から、未舗装の不整地からでも離着陸出来る豪華なランディング・ギアを奢られていた。


 しかし、雨期末期で地盤が弛んだ、日本人の感覚では簡易舗装のアスファルト路面へ降りるのは曲芸の域の着陸作業となった。


 動きを止めた川崎・C-2改の後部ハッチから、たくさんの梱包された積み荷が急いで下ろされる。川崎・C-2改に主翼の下をくぐって入って来たトラックに、それらは小型クレーンを使って積み替えられる。


 積み荷の大半は、合金製の組み立て用パネルや梁であると見られた。


 日本国から持ち込まれたのは、07式機動支援橋だ。こちら側から対岸に向けてビーム()を渡し、その上に橋節を設置する架橋装備だ。


 中央部が崩落したタイ・ラオス友好橋の復旧で利用するのだ。タイ側とラオス側に残された二箇所を両岸として、そこに支援橋を掛ける。下から眺めれば、さも恐ろしい光景が眺められるだろう。支援物資を乗せたトラックも通過出来るだろう。ただし、強いが風が吹くと危ない。だから、風速計を同調させた信号機を添える予定だった。


 本命である、92式浮橋や重構桁(JKT)橋機材は、翌日にはウドーンターニー空軍基地の方へ川崎・C-3によって輸送される見込みだった。


 日本国が保有する架橋装備の充実と設置技術の源流は、旧陸軍鉄道部隊にあると言える。戦場で爆撃やテロなどで破壊される鉄道橋の応急修理はお手の物だった。


 実際、ハリウッド映画の「戦場に掛ける橋」で有名になったメクロン永久橋(鉄道橋)は、連合国軍の賢明な努力をいくら注ぎ込んでも最後まで不通、輸送機能を完全に奪うまでは追い込めなかった。


 一応、爆撃で破壊はされるのだ(映画の様に挺身部隊が浸透して破壊されたと言う記録は目にした記憶がない)。しかし、翌日には何故か完全復旧されて、橋の上を蒸気機関車が煙を上げて通過を再開させている。これの繰り返しで終戦を迎えた。


 これには色々なトリックがあるのだが、それを書くと投稿一回分を消費してしまうのでパスする。


 07式機動支援橋と陸上自衛軍の工兵隊を満載したトラックは、川崎・C-2改に主翼を傷付けない様に、翼下スレスレを危なげなく潜り抜けて行く。


 タイ国道2号線の北端部に残されたのは、川崎・C-2改が4機だけとなった。後はピックアップ・(三菱・トライトン)トラックを転用したた誘導車によって、北2km先にあるノーンソーンホン交差点まで導かれた。そこで上り線へとUターン。信号機も柱ごと取り外されている。近所に住む、こんな時でも陽気さを忘れない人々に注目されながら、機首を南方にあるウドーンターニーへと向けた。


 川崎・C-2改が4機は、タイ国道2号線の沿線の住宅が途切れるところまでタキシングを続けた。その後は、ランニング・テイクオフで、バンコクのドンムアン空軍基地を目指した。


 ノーンカーイをバックにして飛ぶ川崎・C-2改の輸送編隊。そして、ノーンカーイが接するメコン川の対岸では、未だに塵雲が厚く立ちこめている。


 タイ王国軍の軍用ヘリコプターが、東で西で光る雷を背景に忙しそうにメコン川を越えて行く。何とか、工兵を大量に送り込んで、大きく陥没しているヴィエンチャン国際空港の滑走路を修理させようとしている。だが、不可欠な大量の重機が持ち込めていないので、復旧見込みすら立っていない。


 仕方なく、軍用ヘリコプターをタクシーや輸送トラックの代わりに利用している。しかし、戦術輸送機レベルの輸送量とは全く比較にならない効率しか発揮出来ない。


 イロコイ程度の大きさの軍用ヘリコプター、ベル 412やシコルスキー S-92では積載量は大した事はない。それに、保有している機体数だって、先進国の保有量とは比較にもならないくらいに少ない。


 ヴィエンチャン国際空港の滑走路にクレーターを掘ってくれた流星のせいで、怪我人の緊急搬送や救援物資の大量搬入のネックとなってしまっている。小舟では何往復させても、救援物資の搬入の効率は焼け石に水だ。


 大型発電機を大量に持ち込めれば、病院の機能くらいなら早々に取り戻せる様になるのに。


 ーーー河川橋と言うインフラは、機能喪失して初めて真の価値が分かるものだ。


 遠くでは、合衆国海軍の第7艦隊(太平洋艦隊 )と第5艦隊が編成した救援部隊が、タイランド湾最深部にあるレムチャバーン深海港やサッタヒープ海軍基地を目指して移動中だ。

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