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命を継ぐ者。 〜 Inherit the Life. 〜  作者: すにた
第八章 それぞれのフロンティア。
54/143

星が落ちた国で。 〜7

 自然災害由来の人災がポーンサワンを一瞬で壊滅させた。


 だが、ポーンサワンを壊滅させたのは、小惑星「2039AA」の本体ではなかった。


 核弾頭搭載ミサイルによって砕かれた本体と比べると、極一部分の小さな小さな破片のいくつかに過ぎなかった。


 小惑星「2039AA」の本体と言える一番目に大きな部分は、ラオス人民民主共和国の首都ヴィエンチャンの北方約100km、ナムグム川を堰き止めて作った貯水池(人工湖)へと落下した。


 二番目に大きな部分は、同国の古都ルアンパバーン下流の辺りでメコン川本流へと落下した。


 いずれも幸運であり、不運でもあった。


 ーーー幸運。


 それらの大きな流星破片は、ルアンパバーン、ヴァンヴィエン、ヴィエンチャンなどの主要な都市を直撃する事はなかった。おかげで、瞬時に住民が蒸発して、身体丸ごと掻き消される悲劇は起こらなかった。


 ーーー不運。


 一方、特に、一番目に大きな部分は、大量の水が貯まっている人工湖に高熱源と化して飛び込んだ。これで無事に済むわけがない。当然、直後に巨大な水蒸気爆発が起こる。


 加圧水型原子炉の蒸気機関から漏れ出す超臨界圧水の様に、超膨張するパワーは、ありふれた戦術核兵器を軽く超えるレベル。更に、大型の燃料気化爆弾の様に、グラウンド・ゼロを中心に大気を押し退けて、真空に近い環境を作る。肺を持つ地上生物であれば、近くにいたのなら、熱波を喰らわなくても肺を潰されて直ちに生命活動の終了を余儀なくされる。


 最も大きな落下部分が起こした衝撃波は、ナムグム1水力発電ダムの堤(高さ75m、長さ468m)を、周辺の山ごと一瞬で掻き消した。いや、直接的には運動・質量エネルギーが"熱エネルギー化(解放・転化)"されたせいで大量の水が一瞬で気化=大膨膨張=大爆発させた。だから、衝撃波が周辺を通り過ぎて、押し退けられた大気が限界点へ到達した後に、爆発の中心部(グラウンド・ゼロ)へ戻って来る頃には、ダムと言う巨大な人工物は跡形どころか痕跡までも完全に失われていた。


 二番目に大きな落下部分が起こした衝撃波は、サヤブリ発電ダムの堤(高さ32m、長さ810m)を、周辺の尾根ごと一瞬で吹き飛ばした。


 それよりも小さな落下部分のほとんどが、ラオス人民民主共和国全土へと散らばった(少数は昆明の南方やヴェトナム社会主義国の北部へ届いた)。当然、落下した"星"と同じ数だけの大きな爆発が引き起こされた。


 また、"星"が空中で爆発した場合は、より広範囲に破壊をもたらした。


 カルストっぽい、巨大な石灰石で形成されているラオスの山群(ヒマラヤ山脈最東部のお隣の)を広範囲に崩した。それによって、アジア・ハイウェイを含む国内交通インフラが壊滅した。勿論、人民共和国へと繋がる貨客鉄道の多部分を占める多数の鉄道トンネルは崩れ、高架の鉄道橋を倒した。


 グラウンド・ゼロからそう遠くない距離にある、ルアンパバーン、ヴァンヴィエン、ヴィエンチャンなどの都市も決して無傷で済んだ訳では無い。


 まず、黄金の「タートルアン」の上部構造の一部がメコン川対岸のタイ領土へと吹っ飛ばされた。もちろん、原型を伴わないほどのダメージを伴っていたので、誰もそうだと気が付かなかった。ヴィエンチャン最古の寺院「ワット・シーサケット」は風圧で持ち上げられて、回転しながら崩壊した。ヴィエンチャン道路1号線の起点にあった記念碑はメコン川の川底目掛けて吹っ飛ばされた。ラオス証券取引所は、意外にもメコン川に面する壁ほぼ無傷で済んだ(ガラスは全て砕け飛んだが)。


 続けて、ノーンカーイ〜ヴィエンチャン間で国際河川のメコン川を渡るタイ・ラオス友好橋の橋脚が傾き、続けて中央部が張力に耐えられずにスポンと外れた。そのまま、悠久の流れに飲み込まれて消えた(だが、その後に発生する河川の水量低下現象のせいで、タイとラオスの両岸から視認出来る様になる)。


 更に、遠く離れたチエンラーイ県チェンコン〜ボーケーオ県フアイサーイでメコン川を渡る第4タイ・ラオス友好橋は、ここまで伝わって来た地面の揺れで一度上に持ち上げられた後に、上流方面へ橋脚ごとあの(・・)ピタゴラス・イッチの仕掛けであるかの様に静かに(パタンと)倒れた。


 これでラオス中部〜西部は完全に陸の孤島と化した。人民共和国へと至る山岳地帯の幹線の全て崩れ、ポーンサワンからヴェトナム社会主義国へ至る幹線も通行不能となった。タイと結ばれる友好橋も5本中の2本の使用不可状態が確定している。


 これによって、地上からのラオスの災害支援が困難となった。空からの支援は、舞い上がった大量の塵が航空機のエンジンを破壊する為に今のところは不可能だ。また、塵同士の摩擦が引き起こす激しい雷は飛行だけでなく、電波を使ったコミュニケーションをする上でも大きな障害となる。


 現状では、タイと結ばれる残り3本の友好橋とラオス日本大橋(建設中に大決壊して、国境を越えてカンボジア領の村々にまで多大な洪水被害をもたらしたセーピアン・セーナム・ノイ水力発電ダム跡地近く)の受けたダメージが少ない事を期待するしかない。


 実際、ナムグム川(の貯水池)から発生した水蒸気爆発の爆圧は、ヴァンヴィエンや首都ヴィエンチャンを襲ったのだ。大きな爆風は多くの文明の産物とそこに住む人々を吹き飛ばした。冗談抜きで、地上にあったものを成層圏へ届く勢いで吹き飛ばした。


 これほどに巨大な爆風が届いて何事もなく済むわけがない。


 ただし、平野部に限れば、掛け崩れなどはなく、せいぜい住宅が崩壊・崩落しただけだった。


 構造物の下敷きになったまま、命を失ったり、深刻な傷を負って救助されるのを待っている方々には申し訳ない。だが、第一撃を何とか凌げた瓦礫の上にいる者達は、災害救助が行われるまで生き延びられる食料の確保にさえ成功すれば生き残れる事が確定した。不幸中の幸いであった。


 だが、ラオスの国土の大半である山岳地帯では、そんなに甘く時代は進まない。第一撃を何とか凌げても、残念ながらまだ惨事を生き抜いた事にはならない。直ぐに二次的、気を抜いたタイミングで必ず三次的な連鎖災害が引き起こされので、決して気を緩める事が出来ない。


 いや、山岳地帯では気を緩めなくても緩めても必ずしも生き残れる訳ではない。どちらかと言うと、本人の努力よりも運の要素の方が強そうな生き残りゲームが始まるのだ。


 このゲームは強制参加。しかも、途中退場はアナログ的に即死亡と言う、著名なゲーム・マスター「茅場晶彦」であっても顔が真っ青になる類いのデス・ゲームでもある。


 これが流星被害の現実だ。しかも、墜ちて来た物体が氷の塊でなく石の塊だった。地表へのインパクトの衝撃はそれだけに巨大だ。下手したら、ラオスを踏めた周辺国での大地震や火山の噴火が引き起こるトリガーとなる可能性さえある。


 実際、タイ北部には、断層が存在し、その隙間から温泉が湧き出しているエリアも多数存在している。このエリアは日本国と比べれば地震の発生頻度は低い。しかし、だからと言って完全に無縁と言う訳でもない。


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