意志を持った「神器」の過去
大暴れして封印された異世界の「神器」が、現実世界への憧れを抱く話。とても短いので、すぐに読めます。
「お前の悲しみも、わかる。だからこそ、今は眠るといい」
ーーいつか、その怒りや悲しみを癒す「誰か」が現れるまで。
永い、永い。
真っ黒で、真っ白な世界で。
神器は、夢を見た。
その世界は、懐かしいようで、全くここと違う場所。
見たことのない家。自然。生き物。
視界に入るものすべてが、物珍しい。
その中に、1人の少女が現れた。
少女は、神器の知る少女と似た「何か」を持っていた。
この少女に会えば、何かが変わるかもしれない。
そんな期待が、胸を埋め尽くす。
しかし、この身には封印がなされている。解除には、封印を施した本人か、その血を引き、封印の鎖を断ち切れる者が必要だった。
神器は訴え続けた。
この声に応える者が、現れることを。
そして出会った。
封印を解いてくれる男に。
ようやく、夢の少女に会いに行ける。
神器は、目覚めた直後。
この世界から、姿を消した。