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空六六六  作者: 浮草堂美奈
第一章 出逢ノ語リ
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ユキ・クリコワの出逢い2

『こないだゆーちゃんが描いてくれた真田兄弟、超かっこよかったあ』

『ありがとー! 気合い入れたんだよね』

『今度オリキャラの女主人公で無双の小説描くから挿絵描いてくんない?』

『超オッケー』

 SNSに返信を終え、スマホを切る。

 こんこん、とノック。

「ゆーちゃん、入るわよ」

 母親だ。

「何?」

 わざと舌打ちをする。

「ゆーちゃん、今日で学校を一か月休んでるでしょ……? 担任の先生がいらしてて……」

「具合が悪いの! 帰って貰って!」

 怒鳴る。

 担任が帰ったのを確認すると、リビングのゴミ箱を蹴っ飛ばす。

 ゴミが撒き散らかされる。その中に混ざっていたボツのイラストにますますイラつき、椅子をひっくり返す。

 加湿器を倒すと、銀色のカバーが外れた。

「ゆーちゃん、何してるデス?」

 来やがった。

 奥の、前は物置だった部屋から。

 長い白髪、雪のように白い肌、赤い瞳。

「うるさい! お姉ちゃんなんか嫌いなんだよ! 死んじゃえ!」

 姉はしつこく続ける。

「物を壊す良くないデス。同じマンションの人もびっくりするネー」

「うるさい!」

 テーブルに置きっぱなしのコーヒーをぶっかけると、白髪から雫を滴らせながら言った。

「具合悪いっていってたのに、元気デスヨ?」

 完全に頭に血が上った。

 わあっと声を張り上げて、彼女は泣きだした。

 大声で。部屋中に響くように。

 姉は慌てて寝室の母を呼びに行く。

 しかし、母は眠たそうに言った。

「ちょっとイライラしてるだけよ。気にしなくていいの」

「だけど、このところ毎日ダネ。心配デス」

「気にすることないわよ。めんどうくさいじゃない」

「もー頼りにならないデス」

「頼りにならなくていいもん」

 そのやり取りを聞きながら、捨ててあったイラストを手に取る。

 先日友人にあげたイラストのボツだ。

 何枚もある。

 これだって。

 これだって十分上手いのに。

 激しく泣き声を上げる。

 その時。

 時計の秒針が止まった。

 ベランダに、ゴシック調黒いロングドレスの女が立っていた。

 女はシルクハットを手に取った。左手にはステッキ。

「私は最上級悪魔が一人、鉄の女王、メフィスト・フェレス。ここをけ」

 呆然。

 見ていると、女の背後を何かがゆっくりと降りて行った。

 毛むくじゃらの体、顔の真ん中に20センチほどの口があり、後はのっぺらぼう。

「何……あれ」

 メフェイスト・フェレスは怒りのような笑顔を見せた。

「やはり介入してきたか! だが止められはせん! 止めさせはせん! 契約を行うぞ!」

 窓がステッキで叩き割られた。


時間停止タイム・アウトだ」

 そう呟いた納に、蛍は叫ぶ。

「納! 何あれ!?」

 マンションの棟の間から、毛むくじゃらの化け物が下りていくのが見えたのだ。

「わからない。だけど、メフィストは邪魔する者はことごとく殺せと言っていた」

 そう言った瞬間、納は階段に向かって走り出した。

「あんな化け物! 殺せるわけないじゃん!」

 納は走りながら答える。

「この世に存在する者はみんな目に見える。目に見えるということはみんなこの世に存在する。この世に存在するもので、死なないものはいない」

 階段に突き当たる。

「ちょっお前、階段苦手って! 今エレベーター呼ぶから!」

 蛍の言葉を待たず、納は一飛びに踊場まで跳び下りた。

「先に行くよ」

 再び踊場まで跳び下りて行く。

 蛍はあーもう、と言った。

「ほんっとお前ってそういうヤツだよ」


「ちょっ……待って……あたしはお姉ちゃんが死んでほしいとは言ったけど、本気で殺そうなんて」

 彼女は狼狽する。

 メフェイスト・フェレスは構わずに入ってくる。

「残念ながら、本気で殺すつもりだったのだ」

 ニィと笑みを作る。

「不愉快な存在を悉く抹殺し、血塗り道を行こうとも。それが己が人生の汚点とは考えない。ごく純然たる障害物の排除、それだけ」

 ドン、と母親の寝室の扉が開く。

「そうだろう? ユキ・クリコワ」

 母親が床に倒れる。

 その体から、血がどくどくと流れる。

「た……たすけて……」

 母親がうめく。

「そんな難しい言い方されてもわからないね」

 彼女は悲鳴を上げる。

「お姉ちゃん!」

 躊躇わず、白髪に返り血を浴びながら。

 姉は、ユキ・クリコワは。

 割った一升瓶の尖った面を、母の喉に振り下ろす。

 鶏を絞めるような絶叫。

「なんでなんでなんで!」

 母親の背を踏みつけて、ユキは言った。

「あなたたち私を侮辱した。報復されるの当たり前だね」

 メフェイスト・フェレスとユキ・クリコワは向かい合う。

「丈夫な体と引き換えに、君は私の下僕しもべとなり、私は君の下僕となる」

「いいよ。願ったり叶ったりだね。やっぱり人間、捨て鉢になったらいけないね」

 ユキ・クリコワは妹に向き直った。

「ゆーちゃん、私あなたを殺します。メフィストにそう願った。だけど、その前にお話があります」

 妹が握りしめていたボツイラストを指差す。

「その絵についてです」


≪空六六六ぷらす! さん!≫


ユキ「ハーイ! メインヒロイン、ユキ・クリコワちゃん登場だネー!」

蛍「メフィストがヒロインじゃなかったんだ」

ユキ「お待たせしましタ! お待ちかねの巨乳ヒロインダヨー! ぽいんぽいんだネ!」

納「あー、ちょっと言い難いんだけど……作者からこんな手紙が……」

『巨乳は大好きですが、十代女子の巨乳は燃えないので、今後はダブルヒロインでいこうと思います。大人のおねえさんの巨乳に顔を埋めたい』

ユキ「散々待たせていい度胸です。首を洗って待ってるね、作者」

納「シリアスなモードだと、語尾がひらがなになるんだな」

蛍「シリアスモードになるハードル低すぎじゃね?」


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