第4話
菜々子は哲人に食ってかかるように続けた。
「私はそんなに偏差値の高くない大学だし、学生時代にこれといって自慢できるような活動もしていないけど、やっぱり大手企業に入っていいお給料もらいたいし、世間体も気になるし。大手企業に勤めていますって言ったら、やっぱり私を見る目も違ってくると思うし」
菜々子はまだ話し続ける。
「それに、稼ぎのある男の人と結婚して幸せになりたいと思っているし。そうするには大手企業に入ってそういう男の人と出会うのが一番いいかなと思う」
やはり現代日本の女性の幸せは稼ぎのある男と結婚して家庭を築くのがいいようだ。菜々子はハッとした顔で哲人の方を見て気まずそうに言葉を発した。
「哲人さんはどちらの大学でしたっけ」
「T大」
菜々子は驚いた表情をして聞き返した。
「あのT大学?赤門で有名な?すごいじゃないですか」
「全然すごくないよ。一浪しているし、留年しているし」
哲人はT大学の理系学部に在籍している。大学に入学したばかりの時は真面目に授業に出ていたが、だんだん講義が面白くなくなり、大学に行かなくなった。それでも単位は友人に頼んで落とさずに4年生に進級できた。理系学部は、3年生もしくは4年生になると研究室配属がある。哲人はまあまあ興味のある研究テーマを扱っている研究室になんとなく配属を決めた。
「でも留年するなんて思ってもみなかったな。」
哲人はまた話し始めた。