第3話
哲人は語り始める。
「大手企業に入りたい学生はたくさんいると思うんだけど、入ったところで何をするかだよね。入るだけが目的なら大手に就職しても活躍できないと思うし。もちろん大手に行きたい気持ちは分かるけど、中小企業の人も大企業の人も同じサラリーマンじゃん。会社に雇われてお金をもらってることには変わりないよ。もちろん、年収で言ったら大手企業の方が多少いいと思うけど、そんなの微々たるものだと俺は思うけどね」
哲人は喋り終わると一気にコーヒーを飲み干した。菜々子の方をまっすぐ見て哲人は言う。
「いっぱい稼ぎたいから大手企業に行きたいってんなら、起業してたくさん稼げよって思うな」
菜々子は納得しないような顔で飲んでいるカフェオレを置いた。菜々子は口を開いた。
「起業するのはリスクがあるし、起業しても成功する人なんて一握りでしょう。たまにテレビに取り上げられてる若い社長さんなんて、たくさんいる起業家のトップクラスの人じゃないの?若い頃から志を持って起業するのは立派なことだと思うけど、私にはできないな」
哲人はまだ何か言いたそうな顔をしたが、言葉を発するのをやめて、一息ついた。