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建国の技師  作者: kay
第一章 修理屋の少年と貧民街の少女
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坑道からの脱出

 思っていた通りだった。僕と手を握った状態ならば、エッダは問題なく魔法が使えた。

 体力と一緒に魔力が吸収されているようなのだが、肉体的な疲労感を覚えるだけで、実際にどのくらいの魔力が消費されているのかは体感できなかった。



「こんなに簡単にいくとは思わなかった」


「体調は?」


「平気」


「あーあ、酷い格好だなこれ……」


「はは、そんなのエッダだってお互い様だろ」

 

 

 明るさというのは、あるだけで安心感を与えるようで、お互いの顔を見合わせて笑みがこぼれた。互い転んだり擦りむいたりしたため、服はボロボロな状態になっており酷い格好だ。

 明るさに目が慣れたところで周囲を見渡すと、思っていた以上にしっかりとした坑道だということが分かった。手掘りで掘ったのか、岩盤にはつるはしの跡が残されており、壁面や天井は落盤しないようにと木の枠組みでしっかりと固定されていた。



「結構広い坑道だったんだ……」


「真っ暗だったから坑道って言われても手探りだったから分からなかったし、ただの洞穴に繋がっちゃったかもって考えなくもなかったしね」



 足元が見えるようになったことで、足取りも早くなってきたが二つの大きな問題があった。

 僕の魔力が尽きなければとエッダが手を繋いでいる限りエッダは魔法を使うことが出来るみたいだが、光源の魔法を発動しているときに彼女が僕の手を離してしまった場合、魔力の供給が断たれ、エッダ自身の魔力を消費して再び倒れる可能性が高いこと。

 もう一つは、闇属性の特性としての吸収だが、エッダにはまだ制御が出来ないため、僕の体力と魔力を分け隔てなく吸収してしまうことだった。

 何時、僕の体力の限界が来るか分からないため、ここは進めるだけ進んでしまおうとエッダと相談して決めた。


 途中、横道を見つけ何があるのかと覗き込んだところ、澄んだ地下水が流れ込み湖のようになっていた。恐ろしい程の透明度の水は、底の岩盤まで覗うことができた。坑道の跡地にある水場のため、何か有毒なものが含まれているのではないかと思ったけれど、底の方をゆっくりと泳ぐ白い蛇のような細い魚が見えたことで、飲んでも多分大丈夫と判断し一旦休憩した。



 休憩を終えて再び歩き出す。

休憩前よりも体が重いと感じることが多くなり、明るくなるのは良いけれども、エッダを通じての魔法を継続させるには無理があるなと思った。

そんなことを考えながらある程度進むと、壁面に扉がある場所を見つけた。壁には松明がかけられる場所があり、扉を開けてみると坑道の作業員が休憩場所に使っていたと思われる場所に出た。椅子と机には砂埃が積もっており、誰もこの部屋に訪れていないことが分かった。



「出口までの地図かな?」


「そうなら助かるな。ルッツも体力的に危ないでしょ?」



 現場に指示を伝えるための黒板の横には壁掛けの地図があり、天井や壁に古びたがランタンが釣り下げられていた。いくつかのランタンは燃料になる油が空になっていたり、天下部分が壊れていたりと使えそうになかったけれど、その辺りの修理は僕が得意とするところだった。

 両手を自由に使えるように、エッダには首筋に触っていてもらうようにして、ランタンの部品を交換していき使えるようになったランタンが組みあがった。

 後は、燃料があれば問題なく光源として使えるだろう。



「多分、燃料もかさ張るから、坑道を放棄するときに置いていってると思うんだけど……」



 棚や机の脇などを探すと、燃料が入っていた瓶があった。忘れ去られた燃料は底の方に少しだけ溜まっているくらいしか量がなく、しかも劣化して黒くなっていたけれど、地図で見た道のりを考えれば、出口まで差ほど遠い距離ではなさそうだったため、問題はないと思われた。



「光源の魔法も明るいけど、アタシは火の方が落ち着くわ」


「なんか、分かるかも。温かいしね」



 修理したランタンは問題なく点火することが出来た。後は、古びた燃料でどのくらいの時間明るく出来るのか分からないけれど、地図を頼りに二人で坑道の出口に向かうだけだから大丈夫だろう。



 坑道を地図の通りに進んでいると、曲り角から僕にとっては見慣れた魔導灯の冷たい明かりが目に入ってきた。



「魔導灯!? え、ここって、廃坑じゃないの?」


「なんにせよ、人の手が入っているってことは、助けが早くなるってことだよ!」



 一瞬出口に出たのかと思ったけれど、地図では出口はまだ先の方だ。設置してある魔導灯を見る限り、ここから先は誰かの手が入っていることは間違いなく、僕らは、魔導灯を目印に出口に向かって走りだした。



「やった出口!」



 ようやく見えた出口は、分厚い鋼鉄の扉で閉ざされていた。走り寄った僕らは、どうにか開けられないかと扉の部分を叩いていると、外から何事が起きたのかと慌てる声が聞こえてきた。扉越しに事情を話すと、警備と思われる人は大慌てで扉を開けてくれて、ようやく助かったと思った時には、僕らはへなへなとその場に座り込んでいた。

こうして僕らは坑道から脱出することが出来たのだった。



 坑道の出口は、魔石精錬所の研究施設に隣接している場所だったらしい。研究所の警備の人たちに手当てをしてもらいながら、僕らが坑道を進んでいるときの話を聞いた。

 落盤の現場になった市場では大騒ぎになっていたようで、子供が落ちたかも知れないとの情報もあり、一刻も早く救出に行かなければならない状況だが周囲の崩れが激しく、下に降りることすら難しい状況だったらしい。

 そのため、僕らはそれぞれどうやってあの場所から脱出できたのかと警備の責任者や研究所の人たちに話をしなければならず、僕は作った魔道具もどきを提出し、途中までその光源で進み、運よく作業員の休憩所としていた部屋を見つけたことで、その部屋にあったランタンに石を打ちつけて火を付け、一緒に見つけた地図を見ながら脱出することが出来たと言った。

 魔法を使ったこと以外間違いではなかったから、二人とも特に口裏合わせをすることなく話すことができ、取り調べも間違いはないだろうと判断された。


 しかし困ったことに、魔石研究所の人の中にはこんな布きれに書いた魔法陣を魔道具にできるほどの魔石を含んだ砂は何処で採取したのかとか、坑道の中はどんな様子だったのかとか、入れ代わり立ち代わり聞かれる羽目になってしまった。

 最初の落盤現場以外は、暗かったから覚えていないと言ったのに、研究所の人たちは耳を貸してくれなくて、執拗に話しかけてくる人たちを警備の人たちが遠ざけてくれる場面すらあった。

 


「君たち。親御さんたちが迎えに来てくれているよ」


「えっ」



 警備の人に親が迎えに来てくれていると言われて顔を上げると、養父と見知らぬお婆さんが迎えに来てくれていた。



「遊びに行くんじゃなかったのか?」


「遊びに行っていたんだよ。色々と大変だったけど……」



 養父は呆れた風に聞いてきたけれど、僕が怪我をしていないかを確認すると、無事ならそれでいいと言い頭を撫でてくれた。

 僕がとなりのお婆さんは誰かと目で聞くと、アリッサさんだとこっそりと教えてくれた。お婆さん姿のアリッサさんを見てびっくりしている僕とエッダをよそに、身内のいないエッダの保護者として、アリッサさんが名乗り出たらしかった。

 警備の人たちは、僕たちに向かってもう危ないことをするんじゃないぞと言うと、職場に戻っていき、その場には僕らだけが残った。





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