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建国の技師  作者: kay
第一章 修理屋の少年と貧民街の少女
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魔道具と魔法


「魔導具を作るって言ったって、何で作るのさ……。紙切れとか、板とかそんなのしかないよ?」


「魔導具の構造ってね、結構単純なんだよ。魔導具の動力源になるものと、どんな風に動かすかを書いた魔法陣があればいいんだ」


「で、ここにある砂が動力源っていうのになるかもしれないってこと?」


「そう。まぁ、ここが鉱脈だったのかは僕にはわからないから、試してみるしかないけど」



 そんなことを言ったものの、僕の持ち物で使えそうなものといったら、小銭と帰りに夕飯の食材でも買って帰るために必要なものを書き込んだ紙片くらいなものだった。あとは、男たちに取り押さえられた時に破けた上着の袖部分しかない。

 エッダも僕と似たようなもので、護身用のナイフをいくつも仕込んでいたことには驚いたけれど、貧民街ではこれが普通といわれてしまうと、そういうものなのかと納得するしかなかった。

 僕らは他にも何か使える物がないかとあたりを見回して、薄暗い瓦礫の山を掘り起こしてみたものの、得られたものは家屋で使われていただろう板くらいなものだった。


とりあえず拾った板に魔法陣を描き、本来魔石をはめ込む場所にその辺の砂を置いてみることにした。エッダも興味を持ったのか、僕の手元を覗き込んでいる。



「……光ってるのか? これ」


「……光ってないね」


「ってか、魔法陣が砂に埋まって見えなくない?」


「エッダさんの、おっしゃる通りで……」



 結果は無残なものだった。エッダの指摘の通り、魔法陣が砂で隠れて見えなかった。どうなんだこれはという視線を向けられて、僕は小さくなった。


「あ、そっか。良く考えれば木は光らないもんね!」



 そう言ったらエッダに叩かれた。……痛い。

 魔導具は魔石が光ったり、魔法陣が光ったり色々あるけれど、そうなったら光りそうな素材を使うしかない。

 手持ちの素材だとかろうじて使えそうなのは布だな! 

 でも、書くものもインクもない……。さっきは板だったから削って魔法陣を刻んだけれどと考えて、目についたものはエッダに借りたナイフだった。



「ってぇ……」


「ちょっ、何してんの!?」



 おもむろにナイフを掴んだ僕に、今度は何をするのかと呆れ顔だったエッダが目をむいた。

 ナイフを滑らせたところが一瞬熱くなったと思ったら、すぐにじくじくと痛み出した。



「え、今度は布に書いてみようかと思って? インクもないし、代わりにするなら血かなぁと……」


「だからって、こんなにザックリ掌を切る馬鹿が何処にいるんだ!!」



 思っていた以上に深く切りすぎてしまったみたいで、ひじのあたりまで血が伝ったのを見て慌てて止血してくれた。

 良く考えれば僕はスリ傷だらけだから、そこの部分の血を使えばよかったんじゃないかと、叱られてから気が付いた。

 散々叱られつつも、上着の袖だった部分の布きれに何とか血で魔法陣を書ききって、集中すると説教は耳に届かなくなるって本当だなと思っていたら、頭を叩かれた。

 っていうか、僕叩かれ過ぎじゃない?



「これで、完成! えっと、び、微妙に光ってる?」


「ないよりマシ程度には光ってる」


「……それを言われると心苦しいんだけど」



 ありあわせの素材でここまで出来たんだから、僕としては大成功だと思うんだけどなぁ……。

 これで、一応とは言えども光源を確保することができた。

 ワイリーが無事なら助けを呼んでくれると思うんだけど、結構な時間が経っているにも関わらず助けは来ないみたいだった。もしかしたらワイリーの方も大変なことになっているかもしれないし、早くここから脱出しなきゃいけないと思った。

 気が進まないけれども、助けが来ない以上、自分たちでどうにかしなければならないと、気持ちを切り替えて僕らは暗闇が続く坑道へと足を踏み入れることになった。



 真っ直ぐに延びる坑道は真っ暗で、急ごしらえで申し訳程度の光源でもかなり助かった。

壁面には落盤防止の支え木があって、どちらの方向から来たか分からなくならないように傷を付けながらゆっくりと進んだ。

 


「ないよりマシな魔道具もどきの癖に」


「魔道具もどきでも、実際助かってるんだからいいじゃないかー」



 ゆっくりと進んで、

 ただ、魔石があまり含まれていない砂だったみたいで、頻繁に中身の砂を交換しなければいけなかったけれど、着実に前に進むことが出来ている。中身を交換するたびに光り方が少しだけ強かったり弱かったりしているので、前に比べて光り方が若干強めな場所の砂は、二人してズボンのポケットに入れることにした。

 ベルトをしていなければ砂の重さでずり落ちそうになるけれど、光源が無くなる方が怖い。

 


「アンタ、魔力持ちなんでしょ? 魔法使えたりするんじゃないの? なんか、呪文でぱぁっと明るくなるように出来ないわけ?」


「えぇ……。そんなことが出来たら、怪我したりするような苦労しないってば」


「いや、怪我は自分でざっくりやった結果でしょうが」



 お互いの表情も見えない闇の中で、エッダの呆れた声が僕の耳に届く。



「魔法ってそんなに難しいものなの?」


「アリッサさんは難しいとは言わなかったけど……。単純に僕の才能というか体質が魔法を使うには適さないと言うかなんというか……」


「要するに才能がなかったと?」


「うっ……。魔力だけは人一倍あるのは確かなんだけど……」



 事実は事実なので、最後の方は言い訳のように口を濁した。

 アリッサさんよりも多い魔力を持っているのに、何故か魔法が使えない僕なので、エッダの率直な意見はチクチクと胸に刺さる。



「アタシも魔力があるんだっけ?」


「あるよ。ためしにやってみる?」


「やらないでいるよりもいいんじゃないの? 教えてよ」



 まぁ、そんなこんなで暗闇の中での魔法講義が始まったわけだ。

 多分難易度的にも、消費魔力も大したことない光源の魔法くらいなら問題ないだろうと思い、エッダにやり方を教えた。

 とは言っても、何ら形式ばった呪文がある訳でもないし、魔導具みたいに魔法陣を書くわけでもなく、精霊にお願いするだけと言ったら、簡単すぎると言われた。

 だって、アリッサさんにはそういうものだって僕は教わったんだもの。

 養父は魔導具の他に魔法も研究の対象だったみたいで、僕にも形式だって教えようとしたけど、造語だか用語なんだか専門的過ぎて分からない部分が多々あって、さっぱり解らなかった。

 そんな難解なものをエッダに教えようと思っても、無理だと言うと頭を叩かれた。

 なんか解せない!


 半信半疑ながらも、僕が言った通りにエッダが『光れ!』と言うと、閃光のような光がパッと奔り一瞬で消えた。



「凄いよエッダ! 一発で成功するなんて!」


「……」


「エッダ?」



 何かが倒れる音がして、手元の魔導具もどきの光で足元を照らすとエッダが倒れていた。

 エッダの頭部だけに局地的な落盤事故が起きたのかとも思ったけれど、そんな様子もなく、まさにばったりと言った感じで倒れている。口元に手の平を持っていったら、普通に息をしていたし、さっきまで普通に話をしていたから病気や怪我も考えにくいし、考えられるとしたら魔法を使ったことが原因だろうとアタリを付けてみた。

 そういえば、アリッサさんの魔法の講義の中で自分の内包する魔力を消費しすぎると貧血のような症状が出ると言われたけれど、エッダの様子を見たところアリッサさんが言っていた症状を更に通り越しているようにも思える。

 もしかしたら頭を打っているかもしれないけれど、手提げ鞄を枕代わりにした。なんにせよ、エッダが起きないことには動くに動けないのだ。





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