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建国の技師  作者: kay
序章
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史記Ⅱ

 魔力持ちが生まれなくなるにつれて、帝国の主戦力であった魔法騎士団は姿を消し、魔法使いは下級の魔法しか使えないものばかりになっていった。

 だが、魔力持ちの子供が全くいなくなったわけではなかった。

 帝国のはずれには、まだ魔力持ちが生まれる場所があったのだ。

 そこは先の大戦後に帝国に組み込まれた、その地を治める領主ですら名を知らぬような寒村であった。



 先の大戦の皇帝は既に亡くなっており、孫が皇帝の位を継いでいた。その皇帝は竜族の呪いによる国力の低下を懸念しており、魔力持ちの確保の命を出した。

 

 領主達は皇帝の命を受け、ある領主は都に行けばよい待遇で暮らせると囁き、ある領主は罪人の如く魔力持ちを浚い、皇帝の命を遂行した。

 都に集められた魔力持ちたちは、以前の魔力持ちが行っていた治水工事や道の整備、開拓事業などの公共事業に回されることになった。


 このころの皇族や貴族たちには魔力持ちは既に居らず、過去の魔力持ちの実力を伝え聞いている者が多く居たために、重労働に回されている魔力持ちが実は自分たちよりも強い力を持っていることを知っていた。それと同時に、魔法の力の恐ろしさも知っていたために、皇族・貴族たちは彼らを恐れた。そして多くの皇族・貴族らは、その恐怖心から彼らの力を正しく管理するという名目で彼らを押さえつけ、彼らの自由を奪い次第に奴隷のように扱うようになっていった。


 時が流れるごとに、魔力持ちたちの待遇は悲惨なものになり、皇族や貴族たちの魔力持ちを奴隷のように扱う風潮は国民の中に浸透していくことになった。

 原因となったのは貴族たちからの魔力持ちの扱いだけではなかった。

 ある村で魔力持ちが連行されるところを見た村人たちは、魔力持ちになれば奴隷のように連行されると考えた。

 ある村では人の寿命を過ぎても老いぬ魔力持ちの寿命の長さを気味悪がった。

 ある村では虐げられた魔力持ちが暴走した結果、各地に大きな被害をもたらした。

 魔力持ちに関わると不幸が訪れると、帝国の各地で魔力持ちに対する差別が生まれていったのであった。






 先の大戦から数世紀後に即位した皇帝は、帝国の武力の衰えに危機感を抱いていた。

 帝国の各地では魔力持ちたちが反乱を起こしており、各地でふつふつと沸きあがるように反乱勢力が勢力を増している状態であった。

 反乱勢力には、虐げられ労働に駆られていた魔力持ちの他に、先の大戦で国を滅ぼされ奴隷に落ちた獣人をはじめとする他種族たちも含まれており、帝国はその反乱勢力の鎮圧に乗り出してはいたが、魔力持ちたちが放つ魔法や神出鬼没な戦略を練る元奴隷だった他種族に手を焼くことになり、じわじわと戦力が削り取られているのが実情であった。


 そんな中で、反乱勢力に対抗すべく技術者を集めた帝国の中で新たな力となりえる発見があった。

 西方の鉱山で発見された鉱物が、過去の遺産となりつつあった魔道具の動力源になりうる可能性を持つとの報が入ったのだ。

 魔力持ちが多い時代には、魔法や魔道具は生活には必要不可欠なものであった。だが先の大戦以降の帝国はかまどの日は火打石で火をつける、井戸の水を汲むなどの原始的な水準にまで下がっており、魔道具が使えるようになるということはかつての魔法がもたらしていた文化を取り戻すことに等しく、帝国の知識人たちはその報に湧いた。


 報告された鉱物は、血のように赤い色をしている結晶体で魔昌石と名付けられた。何らかの原因で魔力を貯め込んでいるこの鉱物の発見からしばらくした頃には、魔晶石を使った魔道具が帝都で実用されるようになった。

 皇帝は進んで西方の領主に命じ魔晶石の採掘に乗り出した。

 それと同時に、魔道具作成の技術者の育成を図り、魔晶石を使用した武器なども開発されることになり、次第に国力は回復していった。

 こうして魔晶石の発見により帝国は再び繁栄をみせ、各地の反乱勢力を圧倒するようになっていったのだった。



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