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建国の技師  作者: kay
第一章 修理屋の少年と貧民街の少女
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精霊の導き

 エッダが出て行ってしまったことをアリッサさんに伝えると、それも仕方がないことだと言われた。



「魔力持ちが身近にいるならまだしも、あの子はそうじゃなかったみたいだしね」


「うん……」


「そんなに気落ちすることはないわ。精霊の加護がある者は必ず何処かで巡り合うものよ」


「そうなんですか?」


「あら、だって捨てられていた貴方を拾ったのはザームエルでしょ? それに、研究で缶詰になっているのが常態化しているザームエルですら私と会ったしね」



 昔、養父に僕が拾われた時のことを聞いたことがあった。養父はその時のことをおぼろげな記憶を探りながら、ぽつりと誰かに呼ばれた気がしたと言っていたけれど、それも精霊の導きだったのだろうか? 



「じゃあ、僕がエッダを見つけたのもそうだったのかな?」


「たぶんね。同じ町にいる限り、貴方たちの縁は続くと思って間違いないわ……」



 エッダを見つけたときは、精霊の導きとかそんなことは考えもしなかったけれど、もしかしたらエッダに加護を与えている精霊が助けを求めて僕を呼んだのかもしれないと思うことにした。

 長い年月を生きてきたアリッサさんにも、僕らのような形で出会った同胞がいたのだろうか……。

 どこか遠い記憶を思い出すように、遠くを見つめるアリッサさんに僕はそれ以上何も聞くことが出来なかった。




 精霊語の勉強も一通りの目途がつき、今日のところはこれで帰ることにした。

 アリッサさんに今日までに出された課題が終わったことを告げると、次は簡単な魔導具を作ってみるかと聞かれた。



「え、まだ精霊語も全然覚えてないのに、いいの?」


「あら、だって簡単な命令の単語は覚えたんでしょ? それにね、今後は教える内容が濃くなるだけだもの、問題はないわよ」



 エッダが居なくなったことで気落ちしているからという気づかいなのかとも思ったけれど、そうでもないようで、アリッサさんとしては、エッダは同胞だから保護はしたけれど、元気になって帰って行ったのならそれでいいみたいだった。

 僕に対しては、本気で弟子としての扱いになるみたいで、今までみたいにゆっくりと片手間で教えるのではなく、実践的な方向で教えた方がいいと判断したみたいだった。

 エッダのことは気になるけれど、本人がこちらに頼らない以上は手を出すのは野暮というものだろう。



 アリッサさんとの今後の方針も決まったし、ついに自分で魔導具を作ることが出来るのかと考えると、つまらなかった勉強も楽しみになってくる。



「じゃあ、また明日来ます」


「そうだ、坊やにいいことを教えてあげる」



 帰り際にアリッサさんから、こんなことを言われた。



「今日みたいに自分の直感は信じた方がいいわよ。精霊の加護を無くしたこの地でも精霊はきちんといるの。とっさの時の直感はそんな彼らの声だと思いなさい」



 エッダを追いかけた際に、彼女を勘で追いかけたことをどうしてアリッサさんが知っているのだろうか。驚いたけれど、アリッサさんは魔女だし、僕が知らない魔導具や魔法も知っているから、おそらくそれらの手段を使って知ったんだろうなと思った。

 アリッサさんのこの一言が、その後の大きな助けになることを、僕はまだ知らない。





 エッダと別れてから数週間経った頃のことだった。

 相変わらず養父がやっている修理の手伝いと、アリッサさんのところでの魔導具製作の勉強で行ったり来たりをしている毎日だった。

 最終目的は旧世代の魔導具を作るためなのだけれど、僕は簡単な精霊語しか使えないために、まずは簡単な魔導灯を作ってどのように魔力が作用するのかということがら実験することになった。

 けれど、僕の体質が邪魔をして持っている魔力を外に出せないから、魔石を使った現在使われている形式の魔導具を使っての実験をすることになった。


 やり方は簡単。魔法陣に刻まれた単語を書き換えるだけ。

 例えば、光を示す単語を風を表す精霊語に書き換えると、さっきまで光っていた魔法陣から風が起きた。

 魔力と効果を表す精霊語を書き換えるだけで、僕は問題なく作用するのはすごい発見だと思った。

 効果が分かるようになると、今まで捗らなかった精霊語の勉強が進むようになり、僕はますます魔導具の仕組みにのめりこむようになった。



 まぁ、そんなことをやっていると、付き合いが悪いと文句を言ってくるのがワイリーで、たった二週間遊ばなかっただけなのに、しびれを切らして僕の家にやってきた。



「最近、ルッツは付き合いが悪い!! さては女が出来たんだな?」


「女なんかできてないよ。ちょっと魔導具の実験にハマってただけで」


「実験って……。お前、外にも出ないでそんなことやってたのか?」


「べ、別にいいだろ。楽しいんだもん……」



 そんな感じでワイリーには呆れられてしまった。

 養父にも今回ののめり込み具合が異常に見えたらしく、勉強はいいから遊んで来なさいと言われてしまった。自分だっての集中し出したら三日三晩食事すらしないくせにと思いつつ、僕はワイリーと遊びに行くことにした。



 ワイリーと遊びに行くといっても、この町にはそれほど遊べるような場所はない。外は蒸気と煤で始終薄暗いし、かろうじて時間をつぶせる場所といえば屋内市場しかない。

 案の定、ワイリーは旨い屋台を見つけたから一緒に行こうと言ってきたので、昼食には遅い時間だったけれど、僕は昼食も食べていなかったから一緒に行くことにした。


 ワイリーに案内された店は、七不思議を聞いて回ったこともある十二番通りだった。

 二人して鶏肉を串に刺して焼いたものをかじりながら、取り留めもないワイリーの愚痴を聞いた。もっぱら、女将さんが口うるさいとか手伝いをしろとか、彼女が欲しいとか、雑貨屋の娘さんがかわいいとかそういう話だった。



「そういえば、この前鍛冶屋のガンツってやつが六番通りに行ってきたって言ってたんだ。俺たちも行ってみないか?」


「え、六番通りって、貧民街とつながっているって話がある場所でしょ? そんなところに行ったら、危ないよ!?」


「バカだなぁ、ルッツは! 危ないところに行ってこそ男の中の男って言えるんだぞ!」



 そんなことは絶対にないと思うけれど、ワイリーはどうしても鍛冶屋のガンツという人を見返したいようだった。多分、ワイリーは揶揄われただけだと思うんだけど……。



「それにさ、六番通りって魔導具の部品が売ってる店が多いって話だぜ?」


「ああ、その話なら聞いたことはあるけど、六番通りなんだ?」


「そうそう、ルッツも行ってみたいよな? 危なかったら、すぐに引き返せばいいんだし、良し! 行くぞ! ルッツ!!」


「ええ!?」



 っていうか、何故か僕も一緒に行かなきゃいけないような話の流れになってしまっている。

 飛ぶように駆けていくワイリーを僕は六番通りに入る前に引き留められればいいなぁと思いつつ、ワイリーの後を追ったのだった。


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