少年の始まり
大変長くなってしまい申し訳ありません。
現実ではかなり忙しいので、更新ペースは遅めです。
しかし、読者様の意見は積極的に取り入れるつもりなので、訂正や感想があったらコメントお願いします。
少年は駆けていた。
必死の思いで駆けていた。
周りには瓦礫が所々に落ちている。
炎の熱が肌を焦がす。熱い。
それでも駆ける。
「はぁっ、はぁっ、に・・い・・さん・・・」
たった1人の肉親の名を呼びながら、少年は走る。
煙と熱のせいでまともに目を開くことができない。
それでも、兄を求めて走り続けた。
崩れた不安定な階段をのぼり、ようやく求めていた場所に辿り着く。
そこには、2つの影があった。
1つは、自分が求めていた兄、そしてもう1つは、謎の黒い影、一言で表すなら、「異形」。
その異形の腕らしきものが、兄を貫いていた。
「・・・兄さんっ!!」
少年は叫ぶ。すると、異形がこちらを振り向いた。そして、
「キヒヒッ・・・」
少し笑ったかのような声を出すと、燃える炎の中に消えていった。
「兄さんっ・・・」
崩れ落ちる兄に走り寄る。
胸を貫かれてはいるが、まだ息がある。
「・・・ロイド・・まだこんなとこにいたのかよ・・・」
口から血を流しながら兄が喋る。
「兄さん喋らないでっ!、早く逃げよう!」
兄を担いで逃げようとする。
しかし、
「馬鹿言うなよ・・ロイド・・胸貫かれちゃあ、流石の俺でも・・・無理だ・・・」
少年にも分かっていた、しかし、諦めたくなかった。
「嫌だよ、兄さん・・・まだ剣だって途中じゃないか・・・それに、兄さんがいなくなったら、誰が国を背負うのさ」
泣きながら、少年は兄に言う。
「剣なら大丈夫だ・・お前には才能がある・・・国は・・お前が背負ってくれりゃ、問題ねぇよ・・・ロイド」
兄がそう言ったところで、崩れた瓦礫が2人の進路を塞ぐ。
「チッ・・・レーヴァテインっ!」
兄が右手に握りしめた漆黒の剣を振るう。
剣から炎がはしり、瓦礫を砕き、道を作る。
「クソッ・・・今のは・・・堪えたな」
兄が膝をつく。
「兄さん、あと少しだよ・・行こう」
そう言うが、兄は立ち上がらない。
「ロイド・・・こいつを持って・・・行け」
兄は右手の剣を少年に無理矢理持たせる。
「え・・・でも・・・」
少年は剣を握りしめたまま動こうとしない。
「なんだ・・・それだけじゃ足りねぇか?・・・なら、こいつも持ってけ」
そう言って兄は自分が纏っていたローブを少年に着せる。
「国を背負ってた俺が着てたんだ・・・これを着りゃ、お前も背負えるさ・・・国も・・・俺の命も・・・」
「・・・兄さん・・・」
「いいか、ロイド・・・命ってのはなぁ・・・生きてるやつのもんを背負うもんじゃねぇ・・死んだもんの想いを・・・背負うんだ・・・だから・・・俺の命・・・背負って生きろ」
「・・・」
少年は兄の言葉を聞いたまま動かない。
「早く行けっ!」
兄が叫んだ。
そして少年は走り出した。
兄が作った道を。
「ロイド・・・生きろよ・・」
少年に届かないであろうその呟きを兄が発した瞬間、城が完全に崩れ落ちた。
夜空の下、少年は泣いていた。
兄が遺した剣を抱き、ローブに顔を埋めて。
「少年、強くなりたいか」
不意に声がかけられる。
女性の声だ。
「大切なものを、もう何も失わない力が、欲しいか」
顔を上げると、蒼い髪の女性が、こちらを真っ直ぐ見据えていた。
「欲しい・・・力が・・・俺は・・・強くなりたい!」
女性の目を見返して言う。
「流石は、あいつの弟か・・・少年、名前は?」
「ロイド・・・ロイド・アルカディア」
強い意志を持った少年の声が夜空に響いた。
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「あれが、キャメロット・・・聖杯があそこに・・・」
高い丘から、巨大な街を見下ろして、白髪の少年が呟く。歳は16くらいだろうか。
腰には漆黒の剣を携え、黒いローブを纏っている。
「ラウンズ士官学院・・・あそこで最強になれば・・・」
少年は右手を強く握りしめる。そして、巨大な街"キャメロット"に存在する"ラウンズ士官学院"に向け、一歩を踏み出した。
今回の作品だけは前の2つは違い、最後まで書き切るつもりです。
更新ペースは遅めですが、待っていてくれたら嬉しいです。