好敵手
「何をする気だ。」
「別になにもしないよ、俺は見習いとかじゃなくて暇潰しに来てるだけだからね、」
我をからかっているのか?我は桜庭をにらみつけた。
「そんな怖い目で見ないでくれよ。ただ君と一緒にいた方が退屈しなさそうだからさ。でも玲奈ちゃんと桜ちゃんはちょっとタイプだから興味湧いちゃった。」
「あの二人をどうするつもりだ。」
我が二人をどうこう思うとかは抜きに、我の回りにいるからという理由で迷惑をかけたくなかった。
「悪いようにはしないさ、誰と恋しようが俺の勝手だ。」
確かにこいつは今【人間】ということになっているのだから下手な手出しはできないはずだ。
「じゃあ、はやく戻ろうか。昼休みが終わっちゃうよ。」
部屋に戻ると玲奈と白咲さんが笑いながらおしゃべりをしていた。我はその姿をしばらくボーッと眺めてしまった。
「神道くん、なにやってるの?早く食べよう?」
白咲さんが僕に話しかけてきてハッとした。
「あ、そうだね、」
我の目の前に奴が座ってにやついていた。本当に気味が悪いやつだ。
「おーーっい!一年生の諸君!!GWの新歓旅行は先輩たちがお金を全て負担するので安心して全員来たまえっ!」
馬場ちゃんがこちらに歩きながら大きな声で叫んでいた。
「まじすか!太っ腹っす!馬場ちゃん先輩!!」
桜庭が言った言葉に馬場ちゃんはまんざらでもなさそうな顔をした。
「本当にいいんですか?すごい助かりますけど。。」
我は馬場ちゃんに再確認した。
「だって新歓旅行は一年生のためのものだからねっ!当たり前だよ!」
これは入った甲斐があったかもしれない。
「このサークル入ってよかった!一年四人だけど、仲良くやってこーな!」
桜庭がなんとも薄っぺらい言葉を吐いた。
「桜庭、漫画の読みすぎかよ、普通そんな臭い言葉いわないから、」
「こらっ!陽!イケメンにカッコいいこと言われたからって悪態つくなっ!」
玲奈は気楽でいい。白咲さんにもクスクス笑われた。我はこれからこの二人を守らなければならないのか。
「冗談だよ、、」
我は仕方なく負け犬のような捨て台詞をのこした。
「みんなで行きたいから風邪引かないようにしてよっ!」
玲奈が仕切り直しのような雰囲気でそんなことをいった。
新歓旅行までの一ヶ月はあっという間に過ぎていった。