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神愛  作者: 近野万智
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神見習い


やっと18歳。この人生も、既に折り返している。これが最後の人生だ。我の名前は神道陽。しかし、これは我の仮の姿である。真の姿は神見習いである。頭がおかしいわけではない。我の父は神だ。今は神になるために人間界で修行をしているのだ。30年間、人生をおくることで、人間の物事の考え方、感情、行動パターンなどを学んでいる。神は誰よりも人間のことを理解してなければならないからだ。この人生は三回目、いや、三人目といった方が正しいだろうか。それにしても、人間の生活というものは実に退屈だ。毎朝満員電車に揺られ、学校へ通い、勉強をして帰って寝る。ただでさえつまらないのに、我はこれを三回繰り返したのだから一層退屈である。しかし、そんな生活もあと12年で終わりを迎えるのだ。なぜなら三人目の人生が終われば修行が完了し、父を引き継ぎ神になれるからだ。。

「春の暖かい日だまりにつつまれ……」

今日は4月2日上東大学の入学式。もちろん日本で一番頭の良い大学、そしてもちろん我はトップ入学。

「……新入生代表 法学部 法律学科 一年 神沢陽」

我の新入生代表の言葉で式は無事終了し、ホールから外へ出ると部活動やサークルの勧誘活動のために上級生が待ち構えていた。ちょっと前までは一年生として下っ端活動をしていた輩がもう先輩面をしている。

「おつかれ!噛み噛みだったけど簡潔でよろしかったぞ。」

「噛んでねーよ。」

この背が高い黒髪長髪の女は藤堂玲奈だ。高校の時からの同級生で、我の唯一の【友達】と呼べるような存在である。【友達】と言うと語弊があった。玲奈は人間にしては知能が高い、その点においては我と話が通じやすい、というだけのことである。

「冗談じゃん!てか、陽は部活とか何か入るの??」

「部活はまずない。だるいからな。」

「じゃあうち気になるサークルあるから明日一緒に見に行こ!!」

「…一人で行けよ…、僕忙しいもん。」

面倒くさい。なぜこの女は我を誘うのだろうか。

「いいから行くの!じゃ、また明日ねっ!」

そう言って玲奈は我に無理矢理約束を交わさせ、人混みの中へ去っていった。その時、周囲の男子学生は玲奈に釘付けであった。玲奈は人間界で言う、美しい容姿であり、どうやら男に人気があるらしい。我には恋や愛など、まだわからないが、高校の時も同じようなことがあったので、玲奈がモテるということは知っていた。しかし、ここで忠告しておきたい。人間界の男性諸君、騙されてはならない。玲奈の表面的な美貌はワナである。他の女性は知らないが、玲奈の場合、結局、男はワナにはまり、フラれるのだ。だから玲奈が誰かと付き合ったことは一度もない。プライドが高いのだ。いずれにせよ、我には縁のない話だ。そもそも、我は恋などしない。

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