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食事を待つ間 いろんな方に挨拶を済ませ 少し休憩をしていると
「アルフレッドお兄様 あちらの方たちは騎士団の方ですか?」
リシュが庭に続く窓際に 制服姿の集りを指し訊ねた
「そうだ 家名で呼ばれていない者が多いから 制服できたのだろうね 伯もかなり愉快な顔ぶれを目指したようだし」
リシュは 首をかしげ よくわからない仕草をした
アルフレッドが声をひそめる
「今 王城は実力主義に移行しつつあるんだよ 」
「実力主義?」
馴染みのない言葉である
「我が国は先の戦いで 勝利こそしたが損失も多かっただろ 戦場に貴族の身分制度の階級主義を持ち込んだからだという声があがるようになり
軍力の弱体化を促進したと言い出すものが増えてきている
戦場で戦った人間が何より身にしみて 考えたんだ
この国はこのままでよいのかとね
もちらん、反発する声も多い
だが そうなると 社交界にも変化があらわれる」
「実力主義派は 家柄より 個人を尊重する?」
「あぁ本質はそうなるね」
アルフレッドがワインをあおる
「お兄様も そうお考えですの?」
「難しいね〜でも僕は努力しないものが嫌いだね 」
伯爵はきっと実力主義派
少し前なら こんな席に呼ばれる筈のないもの若者達に期待しているんだ
送られ招待状は何も変わらず 変容
していくのは目的
薄ら寒い怖さに寒気がした
領地にいて のんびり過ごしている間にこの国はリシュの知らないものにかわろうとしている
兄様が 私を表に引っ張りだそうとしたのは 『彼』だけが理由ではないのかもしれない
領地にいる父の言葉が思い出された
『王都で暮らす アルフレッドが言うならばもうそうすべき時が来たのではありませんか?』
あの狸親父はこの事を言っている気がしてならない
さっきまで甘く感じていたワインが 苦く感じた
「 来られたみたいだよ」
兄様の目線が一人の青年を指す
正装を身につけた カミューセルが小柄な女性をエスコートしている
周りに挨拶していると いつの間にかさっきの騎士団に囲まれていた
知り合いなのだろう 寛いだ顔で談笑している
『良かった あの人が笑ってる』
リシュの感情とは別に心が動いた
とっさに目を閉じ 俯く
ぐっと 両手を握りこみ 爪が食い込む痛みに 顔が歪む
二度と『記憶の雨』にのまれたくないのに また浮かびあがろうとする彼女の心
痺れだした手に温かいものが触れる
目を開ける 兄様の手だった
見上げた兄様の顔はとても心配そうで…
ふーーーと大きく息を吐くと
リシュはもう一度 彼をみる
カミューセル マンダン
私は終わりにしたいからここにきた