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王都のカリム公爵の屋敷は王城の南部にあり貴族や富裕層が多い一角にある


今は結婚した アルフレッド夫婦が住んでおり

普段領地で過ごすリシュ達が夏に訪れると

離れが借り住まいとなる


両親は晩夏の頃 王城のデビュタントに間に合う様に来る予定になっている

そしたら王都で久しぶりに家族が揃うことになっている


普段ギルは 研究所内に寮があるそうでそこに住んでいる


もう一人の弟はまだ 王下学舎を卒業していないので学生寮


2人とも休暇には 顔をみせるようにアル兄様に言われているようだが…



兄様曰く「近寄りもしない」


まぁ兄様も日々忙しい人だし 家にいるのも稀なのだから 似たものだ



だからか 義理の姉である ローレンは

構う相手が出来て嬉しそうである


「リシュ 東町の辺りに美味しい氷菓のお店があるそうなのよ 今から行けないかしら?」

「斬新なデザインの宝石を扱うお店が城下に出来たそうよ 明日いってみましょうよ」

「今流行ってる本の新しいのが出たそうよ 今すぐ買いにいきませんか」


この義姉 屋敷にいるより お茶をしたり 遊びに行きたい人

特に活気ある城下の街に行くのが大好きな様子


身分ある夫人としては 色々気にかかるところだが


夏のシーズンに王都に来ても

引きこもる私を街に連れ回すのが

責務だと思っている義姉は

今も書斎で仕事するあたしを誘いにきていた



「ローレン様 申し訳ありません

今領地が 春から手がけている灌漑事業の予算補修案をたてているところで

私で長く留めると父の裁決も遅れ現場が困る事になりますので

約束は明日以降でいかがでしょう?」


リシュは書類を家令と分別しながら戸口に立つ義姉に申し訳なさそうに伝える


ぷぷーと膨れても駄目です


足元にはよちよち歩く双子の甥たちがまとわりついている


「昨日もその前も 仕事ばかりで まだどこも行けていないのに …つまらないわ

それに明日は伯爵家の晩餐会にご招待されているでしょう?朝からプリム達に磨かれるでしょうし お外には行けないわ」


仕事ばかりと攻めるべき相手は貴方の旦那様です


「 アルフレッドからはリシュは夏から社交界に参加するって 色々頼むって言われて 私とても楽しみにしていたのよ


だから 貴方が来る前から マダム と相談していっぱいドレスも準備を始めてたし」


ええ 昨日までそのマダムとドレスやらに囲まれ ずっと拘束されていましたから…


合間をみて作った時間と睡眠時間を削りやっとこの仕事も山場です

少し邪魔しないで欲しい


「ごめんなさい 必ずお姉様と過ごすための時間を作るわ

この仕事を終えれば急なものもないし

暫く仕事はお休みですから

そしたらゆっくり久しぶりの夏のシーズンを楽しめると思うの」


パァーと ローレンの顔がほころぶ


「まぁ 本当⁈ 約束ですわよ 何をするかちゃんと計画しておかなくちゃ

ふふふ 覚悟してね リシュ」


いたずらに笑い 息子たちを小脇に抱え走り去る姿は勇ましすぎませんか?

未来の公爵夫人



家令のジリフが 仕切り直しにとお茶を用意するように侍女に声をかけに退室する


いつも椅子じゃないからか肩が凝る

ふーと息を吐き伸びをして引き出しにしまわれた 招待状の束を出す


この夏の社交シーズンにリシュが参加する予定の晩餐会や舞踏会のものだ




『厳選したものだけだよ』

王都に着いた夜

アルフレッドが束になった封筒を渡した

手にずしっと重さがかかる


『こんなにもですか? それに私が存じて無い方ばかりですね』


『大丈夫 ちゃんと僕や父の知り合いだよ。やっと君を舞台に引き上げるチャンスなんだから お兄ちゃんはがんばりましたよ』


アルフレッドはお気に入りのワインをリシュの杯に注ぎ 次いで

手酌で注ぎ、二杯目のワインをあおる


美味しそう


リシュも味見しようと グラスに手を伸ばした時


『勿論 最初のエスコートは僕がするよ

その次は ギルでもいいかもね

年甲斐もなく お爺様辺りも立候補するだろうなぉ

きっと君は直ぐに人気ものになるのだろうから 申し込みが後をたたなくなるね


あぁ〜寂しいけど リシュが気にいる人がいればパートナーをいつでも譲るよ』


またかと 呆れて見返したリシュに

アルフレッドは静かに笑う



『 …彼も招待しているよ』
















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