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王都の夏は 浮き立つ熱気につつまれ
人々が一番生き生きした目をしている
中でもデビュタントがあるこの季節は
国中の女性が一番輝いている
「気持ち悪い」
我慢の限界だやめて欲しい。
書類を受け取りながら吐き捨てると
「…吐きますか? 顔色は悪くないですが…昼にあんなに甘いものを食べたりするからですよ」
仕方なさそうに 護衛を呼ぼうとする アルフレッド
「 違う お前が笑っている・の・が・だ!」
片眉をあげ ため息を漏らす
「私だって笑うぐらいいたしますが?
」
護衛に下がる様に身振りをしてから主を見おろす…
「昨日まで不機嫌そうに部下をしごいて何人も使い物にならなくしたのは 誰だ?」
「さぁ そんな奴いましたかね〜 記憶にないですが?
それに訓練ごときで潰れるものは 所詮はそれまでの力量 戦場に駆り出される前で良かったではありませんか?
死線に立てば 失うのは命ですよ?」
ブツブツと今後の増員に求めるべきスキルについて話しだす。中になぜ主の悪口を混ぜるのだ 頭痛がする
「俺はなぁ〜アルフレッド?
1人でニタニタ笑うなと言ってるのだ
どうせお前がそんな顔をするのは
『リシュ』の事だろ?」
「ヘンベルム様 勝手に愛称呼びされてはこまりますね」
「お前は結婚しても相変わらずだなぁ
妻君に見放される前にどうにか出来ないのか? 」
「あれはよくできた女性ですから 貴方みたいに『つまらないこと』は
私に求めたりいたしませんよ」
「…で やっとお前の指示どおり 社交界に出てくる気になったのか?」
アルフレッドは前髪をかきあげ苦いかおになる
「カリム家を調べさせたのですか?」
どさっと背を後ろに預ける
足を組み替えアルフレッドの顔を見上げ
口元に笑みをうかべる
1言えば10わかる人間は楽でいい
だだ 何て顔をするんだ
それでは 隊長の名が泣くぞ
ため息が漏れる
長い付き合いになれば この冷徹で知られる 王下騎士団三番隊 隊長アルフレッドの弱点が 家族であることはすぐ知れる
特に『リシュ』
カリム公爵家唯一の子女
だからまだ若いと言われるのだ
アルフレッドはあの娘にそんなに執着するのだろうか
頭が足りないから 外に出さないのだろうと言われ 社交界に顔を出したのは一度だけ
夏に王都には赴くが お茶会でさえ参加せず 身内を除けば 極少数の交流しか持っていない
デビュタントの謁見の間で見た彼女は
確かに可愛いらしい女の子だったが 抜きんでた程でもない
そのあと祝宴で倒れたときいている
後に一時期流れた噂では
倒れる間際 理解不能な言葉を尋常でない様子で呟いていたらしい
どうやら 公爵家子女は病い持ちないのか
カリム家の対応ははやく そんな噂好きには 制裁を加えたとも聞いている
真っ向から カリム公爵家に喧嘩を売る人間達はおらず 直ぐに口をつぐみうわさは消された
「 『鴉』が 勝手に唄ったんだ
アルフレッドが珍しく荒れたせいで
興味をひいたんだろ 彼奴らは噂好きだ
特に今は暇だしな」
チッと舌打ちがきこえる
こいつにとったら 年長者や王家の人間は敬う対象ではないのだろうか?
俺これでも 第二継承権を持つ王子様ってやつなんだけどなぁ
やれやれ