序章
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序章
これは罰なのですか?
目の前に立つひとの目の色も髪の色も肌の色さえ違うのに
目が離せない
瞬きさえ忘れ 湧き上がる涙を隠す事さえ忘れみつめてしまう。
リスタート
果てなく続く草原でふと見上げた空の青さ
大きな鳥が太陽を背にピューと鳴いて飛んだ
『あの子を産んだのはこんな空の日だったわ』
ふと浮かんだ声
降り注ぐ膨大な記憶に自分の感覚を奪いとられる
前世の記憶と呼べば良いのだろうか?
平凡でも幸せな人生の落とし穴は奈落の底と呼べるものだった
岐路は小さな命の喪失
一緒に2人で生きるんだ
光を失って行く女に
自分の悲しみに蓋をしてでも懸命に諭し支えようとしてくれる貴方の優しさ
裏切って自分だけ楽になりたかった
流れ出た血は致死量に達し
身体は冷たく固まり始めていた
命の火はすでに消えていたはず…
そこにあった記憶は何だったのか?
魂の記憶?
周りの人が慌てふためくなか
涙に濡れる白い顔に静かにのばされたふるえる指先
触れた刹那
私の身体を掻き抱くと
空間が震えるほどの慟哭
貴方のあんな声は初めてだった
『…死なないでくれぇ…
……俺を置いていかないでくれ』
アァー
私はなんて事をしてしまったんだろう
幼く家族を失い 育ててくれた祖母を失ったのは社会人になった年
これからだったんだと悲しく笑った貴方
この人と家族になりたいと願い
共に年を重ねると約束したのに
私はまたこの人を孤独にしてしまった
この人の子を守れず
この人との約束も守れず
私の罪は全てここにある
1人死に逃げ 死ねば子供に会える気がして
アァ 消えてください
この人の中の私
全て私が持っていきますから…
あの時とは違うこの世界
貴方にまた出会うなんて
何も記憶のない貴方
記憶のある私
心が悲鳴をあげる
これがあの時貴方にした罪の……
罰ですか?