第3章 夢落ち
午後8時過ぎ。いつもならカイトウが、ジュリーやタイホウを作戦会議に集める時間なのだが、来る所か気配すらしない。
(どうしたんだろう?) カイトウ程時間に厳しい者はいないと言われていたのに何故か10分も遅れている。
ダイニングに集まった二人はすぐに行動に移った。もしかしたら何かあるかもしれない時の為、それぞれ武器を手に取り、カイトウの部屋に向かった。
まず、ジュリーが話しかける。
「カイトウ様、もう作戦会議が始まってしまいますよ!」
返事が無い。次はタイホウが呼ぶ。
「おい!カイトウ!」
返事が無い。
「これは最終手段を…」 二人は頷き、小さな合図でドアを蹴り飛ばした。そこには、
「カイトウ様!!?」
「カイトウ!?」
床にぐったりと横たわっているカイトウがいた。二人は急いでカイトウを起こす。
「まさか……。」
タイホウは恐ろしい事を想像してしまった。
「息は…しています!」
「俺がベッドまで運ぶからお前は水とタオルを持って来い!」
「はいっ!」
闇討ちかと思われたが、外傷は何処にも無く、病気でも無い。これは…精神病だ!
「…うぅ……。」
今はどうやら悪夢を見ている様で、時々唸ったり苦しむ表情が見られる。
「水とタオル持って来ました。」
ジュリーは、水を含ませたタオルをカイトウの額に優しく置いた。その後、水に精神安定剤を溶かした物を飲ませ、タイホウの隣に座り込み、疲れ果てて寝てしまった。
翌日の早朝。眠りから目覚めたジュリーは、目の前の光景に驚いた。自分が遊空機の内部に座っている事に!隣にはカイトウがジュリーを不思議そうに見つめている。
「どうしたんだ?悪夢でも見ていたのか?」
「え…カイトウ様体は大丈夫なのですか?」
「?何も異常無いが。」 昨日のカイトウとは真逆の健康体だ。昨日の出来事は夢だったのだろうか。
「お前がいつまで経っても部屋から出て来ないもんだから、呼びに行くと机に突っ伏して寝ていたんだ。」
話を聞いてジュリーは悟った。悪夢を見ていたのは自分だった事を!
操縦席に居るタイホウがいつも通りニヤニヤしている。隣のカイトウも少し笑っていた。
「……えぇ…」
ジュリーは落ち込んでしまったが、カイトウが元気でいてくれたので嬉しかった。
「…ところで、最初の宝の島々はなんていう名前なんだ?」
「えーと…『セナ諸島』と書いてある。」
大きな地図を広げてカイトウが説明する。そして、地図をタイホウに手渡した。
「ここから南東…よし、大丈夫だ。出発!」
タイホウの合図と同時に機体のプロペラが音をたてて回転し始めた。やがてゆっくりと浮き上がり、自由に操縦出来るまでに空高く浮上する。
「セナ諸島の秘宝を盗みに行くぞー!!」
「おー!!」
こうして、カイトウ達の新しい冒険が今、幕を開けたのであった。