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第五話:酒場の用心棒

うぃーす。夜叉王丸だ。今回は、二人の過去が分かり俺の行動に注目だ。   じゃあ、読んでくれ!!

「・・・・・・くぁー」まだ明けない時間帯に彼にしては珍しく目を覚ました。


『あー、城から出たんだっけ?』辺りを見回しながら夜叉王丸は思い出した。


「顔を洗いに行くか」気怠そうに身体を動かし階段を降りた。


店の裏側に小さな小屋と井戸があった。


井戸水で顔を洗う。


「あー、タオル忘れた」顔を洗い終えた後に、拭く物を忘れた事に気付いた。


「これを、どうぞ」背後を振り向くとタオルを持った水藻がいた。


「ああ、これはどうも」軽く会釈してタオルを受け取る。


「朝が速いんですね。空牙様は」


「たまたまです。いつもは昼過ぎに起きます」苦笑しながら返答する。


「そうなんですか?そうは見えませんが?」気品ある笑みを浮かべた。


『・・・・この娘、元は由緒ある家の出だな』夜叉王丸は、眉を潜めたが尋ねなかった。


「すぐに朝食の準備をして来ますね」そんな夜叉王丸に気付かず水藻は、店の中に入った。


「飯が出来るまで城下の様子を見るか?」水藻の後を追うように店に入り二階に続く階段を登った。


「おぉ、いい眺めだ」朝日を浴び輝く城下町を見下ろしながら夜叉王丸は、煙管を蒸かした。


「たまに、早起きしてみるのも悪くないな」そんな事を思っている夜叉王丸。


一方、こちらは夜叉王丸が不在の城。


「月黄泉様、朝でございます。お目覚め下さい」女中が耳元で起こす声が聞こえたが、無視した。


ふんっ。誰が起きるか。


飛天から引き離した仕返しじゃ!


「月黄泉様、お目覚め下さい」身体を揺さ振られたが無視した。


何があっても、絶対に起きんからなっ。


「・・・・・起きろ。月黄泉、朝だぞ」耳元で囁かれた声は忘れる訳がない。


待ち侘びていた声。


飛天の声!!


バッと起き上がり周りを見回す。


声は聞こえたのに飛天の姿はなかった。


これは、どういう事じゃ?


「・・・・・やっぱり狸寝入りでしたか」妾を起こしに来た女中が腕を組んで睨んでいた。


その手にある物は・・・・・・・・・・・・


「月黄泉様が愛用していた“飛天様時計”ですわ」妾の視線に気付いた女中は、意地悪な笑みを浮かべた。


お、おのれ・・・・・どこから持ってきたんじゃ?


「“飛天様”の声を録音して更に加工して目覚ましにしてた、なんて“飛天様”の耳に入ったら、どうなりましょうね?」悪女さながらの言葉じゃな。


「さぁ、早く起きて仕事を始めて下さい」用件だけ伝えると女中は出て行った。


うぅぅぅ、飛天・・・・・・・・・助けてくれ。


そんな月黄泉の悲痛な叫びも知らない夜叉王丸は


「・・・・・頂きます」水藻とお葛の作った朝食を食べようとしていた。


「お味はどうですか?」


「味加減も良くて美味しいですよ」飛び切りの笑顔を向ける夜叉王丸。


「はぁー、良かった」ほっと溜め息を洩らす水藻。


「空牙様のお口に合わなかったらどうしようかと思いましたわ・・・・・・」豊満な胸に手を当てる水藻。


その仕草で十人中十人の男が鼻血を出すだろう。


「ご安心ください。こんな美味い飯が気に入らないなんてありません」


「まぁ、空牙様は世辞が上手いですね」赤い頬に手を当てる水藻。


「いや、世辞じゃありませんよ」仲慎ましい夫婦のような光景だ。


「空牙様、ご飯のお代わりはどうです?」横から声がした。


お葛だ。紺色の瞳には、うっすらと炎が揺らめいていた。


「いや、まだ残っているので大丈夫ですよ」


「では、お味噌汁のお味はどうですか?」


「ちょっと、お葛、空牙様を急かさないの」水藻が嗜める。


「ちょうど味噌汁を頂こうとした所ですから」目で大丈夫と言う夜叉王丸。


「・・・・んー美味い」優しく、お葛の頭を一撫でする。


それは、歳の離れた妹や娘にする仕草だった。


「・・・・・ありがとうございます」気難しい表情だった。


「・・・・かわやに行ってきます」席を立ち外に出て行った、お葛に苦笑する水藻。


「いつの間にか年頃の娘になっていたのね」


「まるで年頃の娘を持つ父親の発言ですね」笑みを洩らす。


「・・・・・私が父と母の代わりなんです」表情に影が差した。


「父と母は、先の戦で亡くなってしまって・・・・・・・・」


『・・・・妖獣大戦か』すぐに察する夜叉王丸。


妖狐、妖猫、妖鳥族を始めとする娘達を妖狸一族が、拉致したのが原因で起きた戦。


夜叉王丸の友人で妖王、魎月を先頭に戦ったが、内部からの裏切りや争いで敗北は必至だった。


それを聞いた夜叉王丸が援軍を連れ形勢は逆転。


この戦で大勢の民間人も犠牲になった。

またこの戦で、夜叉王丸は月黄泉と嫌々ながらに結婚した。


「・・・父は、妖狐の軍の組頭を務めていました」だから言葉使いに品があったと納得する。


「父が死んで母が女の手で私とお葛を育てて暮れたのですが、数年前に病死してしまって・・・・・・」茶色の瞳から、涙が溢れだした。


「父と母が亡くなってから私とお葛に前々から色目を使っていた呉服屋が、言い寄って来たんです」


『俺が追い払った妖狐の男達か』一週間前に倒した男達を思い出す。


「私もお葛も結婚する気はないのですが、力ずくで物にしようと・・・・・・・・・・・・」


『まるで、時代劇のような話しだな』などと不謹慎極まりない事を思った。


『こういう話しだと、店に居候して悪者を退治するんだよな』・・・・・何か良からぬ事を考えているようだ。


『よしっ、決めた』何を決めたかというと


「私がこの店の用心棒を致しましょう」である。


「・・・え?」突然の言葉に戸惑う水藻。


「そのような話しを聞いたら放って置けません」などと大義名分を並べているが本心は・・・・・・・・


『一度で良いから、時代劇みたいな展開で用心棒をやりたかったんだよな』不埒な考えだ。


「で、でも、お金は・・・・・・・・」


「金は入りません」きっぱりと宣言する。


「・・・・・私が水藻殿とお葛殿を命に懸けて、お守り致します」片膝を付き水藻に頭を下げる夜叉王丸。


まるで、姫君に忠誠を捧げる騎士のような光景だ。



「く、空牙様!」慌てて夜叉王丸を立たせた。


「今の言葉に偽りは、ありません」左目の闇で水藻を見る。


「・・・分かりました」闇を真っ直ぐに茶眼で受け止める水藻。


「・・・・・この店を守って下さい」契約の言葉を紡ぐ水藻。


「承知しました」契約は結ばれた。


こうして何とも言えない感じで夜叉王丸は、店の用心棒になった。


そんな事を知らない月黄泉は、女中に脅されながら政務をしていた。

むー!他の女子達には優しい癖に妾には素っ気ないのは何故じゃ!?     なに?その束縛な性格を直せじゃと?       ふざけるな?!他人にとやかく言われる筋合いは無いわい!         なら無理じゃと?きぃぃぃさま!!        この場で焼き殺されたいのか?!         これ!待たんか!!

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