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第三話:誰にも渡さない

三話を更新じゃ。今回は妾が、どのくらい飛天を想っているのか分かるぞ(笑)では、存分に楽しめ!

ゴロツキを退治した夜叉王丸は約束通り、飯を作り直してもらい食べていた。


「はー、美味かった」食事を終えた夜叉王丸は、一服した。


「本当にお礼は、いいんですか?」娘、お葛は一服している夜叉王丸に尋ねた。


「ん?別に金に困ってないから」そりゃ、妖狐の里を治めていれば金には、困らないだろう。


「は、はぁ・・・・・」夜叉王丸の態度に、お葛は戸惑った。


「ふぅー、腹も満足したし行くかな」煙管を、くわえたまま、テーブルに金を置いて立ち上がる。


「あ、あの!母が、母が帰って来るまで待ってもらえませんか?」去ろうとする夜叉王丸を呼び止める。


「いや、そろそろ帰らないと、やばくてな」時刻は、正午を少し過ぎたが、前に無断外出をして月黄泉が大騒ぎした事があるので帰ろうとする。


「まぁ、近い内に飯を食いに、また来ると思うぜ」お葛の頭を優しく一撫でして店を後にした。


「・・・・・・・・」夜叉王丸が立ち去った後、お葛は、胸の騒ぎがと上気した頬に、しばらく戸惑った。


一方、城では・・・・・・・・・・・・


「・・・・・ふ、ふふふふふふ。や、やっと、終わった」あの大量にあった、書類の山を、全て片付けた月黄泉。


その姿は、締め切り日にギリギリ間に合った漫画家のようだ。


「・・・・・今、起こしに行くぞよ。飛天」ふらつく足に力を込めて寝室に迎う月黄泉。


これで寝室が、もぬけの殻だと知ったらどうなるのだろうか?


「・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、や、やっと着いた」やっとの思いで、寝室に辿り着く妾。


いつもなら大した距離でもない道が、険しい山道に感じた。


やはり、無理をして一気に片付けたのが、効いたのか?


だが、飛天を起こせるのなら、この位・・・・・・


襖を一枚、挟んで寝室がある。


この襖を越えれば、愛しい飛天に会える。


に手を掛けるが、途中で力が抜け始めた。


そ、そんな、もう目の前なのに・・・・・・・・


後、一歩なのに・・・・・・・・


後、一歩で力尽きてしまうなんて・・・・・・・・・・・・


ひ、飛天・・・・・・・・・・・・・・・ぱたり


床に倒れた妾は夢の中に旅立ってしまった。


一方、そんな哀れな月黄泉を、知らない夜叉王丸は、揚々と城下から、帰ってきた。


「まだ、外れてないようだな」安堵の溜め息を吐きながら城の中に入る。


「・・・・お帰りなさいませ。夜叉王丸様」城の中に入ると女中と出会った。


この女中には、何かと世話になっている。


「城下に遊びに行っていたのですか?」


「あぁ。誰も起こしに来ないから、勝手に起きて飯を食いに行った」多少、皮肉を込めて返答した。


「そ、それは申し訳ありませんでした」焦る女中に夜叉王丸は笑みを浮かべた。


「今度からは、頼むぜ」女中の肩を叩きながら、自室に迎った。      


「そういえば、月黄泉は、どうしたんだ?」この時間なら、仕事を終え一休みしているのだが、執務室には居なかった。


「・・・・・ん?」自室に迎いながら、考えていると床に倒れている月黄泉が、視線に入った。 


「おい、どうした?」床に片足を着いて、月黄泉を揺さ振る。


「・・・・・んー」揺さ振れた月黄泉は、眠いとばかりに寝返りを打った。


「こんな所で寝たら、風邪を引くぞ」再度、強く揺さ振るが月黄泉は起きる気配がない。


「はぁ、仕方ないな」溜め息を吐きながら、十二単衣を着ている月黄泉を軽々と抱き上げた。


自室の襖を片足で開けて中に入ると、傍にあった座布団を枕にして月黄泉を寝かした。


「・・・・・・んっ」寝返りを打つと裾の間から、白い雪のような肌が見えた。


普通の男なら生唾を飲むのだが、夜叉王丸は、気にぜずに陣場織りを月黄泉に掛け部屋を出た。




「風呂にでも入るか」自室を出て上半身、裸のまま風呂場に向かった。



『飛天、起きろ』布団で心地よい寝息を、たてながら眠る飛天を優しく揺らす。


『んー、も、もう少し・・・・・・・・』寝たりないと飛天は毛布を引っ張る。


『ダメじゃ。皆、もう起きている』頭まで被った毛布を強引に引き離す。


『うー、まだ寝たかったのに・・・・・・』文句を言いながら、妾の頬に手を伸ばした。


『・・・・・・・』半分、寝呆けた状態で妾の唇を塞いだ。


毎朝、人知れず行われる口付け。


妾に口付けをして飛天は、覚醒する。


飛天の口付けは、毎朝、甘くて優しさに溢れていた。


一度、唇を離したが再び塞がれ布団に押し倒された。


『・・・・・飛天、朝じゃぞ』言葉とは、裏腹に心では期待していた。


『朝食の前に、お前を食べる』貪るように妾を求める飛天。


朝から淡い官能の一時が・・・・・・・


「・・・・・・・ん?」唐突に妾は目を覚ました。


「せっかく良い所じゃったのに・・・・・・・」愚痴を零しながら、妾は思い出した。


「そうじゃ!飛天を起こしに行った途中で、力尽きてしまったんじゃった!」急いで立ち上がる。


「ん?」辺りを見回して寝室では、ない場所だと気が付いた。


「ここは、飛天の部屋ではないか」滝を描いた掛け軸、質素な木の机、このように質素な部屋は飛天以外に考えられない。


そして何より、煙草の臭いがプンプンする。


初めは、嫌な臭いだったが何時の間にか、大好きな臭いに変わっていた。  


恐らく、飛天が起きて妾を自分の部屋に、寝かしたのであろう。      


身体に掛けられていた、陣場織りを強く抱き締める。


くぅー、飛天の臭いがして気持ち良い・・・・・・


ん?


くんくんくん


微かに、臭う女の臭い。


まさか、妾の他に、女を囲うつもりか?!


陣場織りを掴むと妾は、部屋を飛び出した。


許さんぞ、飛天は妾だけの男。


誰にも渡さない。


他の女子に渡す位なら、無理心中をするまでじゃ。


あ奴は、妾の愛しくて止まない夫なのじゃからな。


手当たり次第に部屋という部屋を捜し回った。


城の者たちは、訝しんでいたが、気にしている余裕など無い。


くそっ!何処におる?


中々、見つからないので、苛立ち始めた。


「くそっ!何処におるんじゃ。飛天!?」つい怒鳴り声を出してしまった。


「呼んだか?」後ろを振り返れば、湯上がりの飛天が立っていた。


い、いきなり背後に立でない!


しかも濡れた髪に色気があるぞっ。


「なんだ?俺を探してたんじゃないのか?」飛天の色気に、酔っていると頭上から声が聞こえた。


「そ、そうじゃ!お、お主の羽織りから、女子の臭いがしたぞ!?」噛み付くように、問い詰める。


「・・・・・あぁ。さっき女中と話してたからな」しれっと答える。


「本当か?」まだ信用できんな。


「まぁ信じないなら、それでも良い」傷ついたように肩を竦めると横を通り過ぎる。


「ま、待て!誰も信じないなど言っておらん!」着物の裾を掴みながら叫ぶ。


「・・・・・わ、妾にとって、主は愛して止まない男なのじゃ。

だ、だから、他の女子に取られるのでは、ないかと心配だったのじゃ」頬が熱くなるのが分かった。


「ん?そんな心配しなくても大丈夫だ」ポンッと優しく頭に手を置かれた。


「お前の事は“玉藻”から頼まれてるからな」むっ、また母上の名を出しおったな。


玉藻・・・・・・妾の母にして、妖狐の里の創設者で九尾の狐。


飛天を母上に紹介しに行った時に恋仲だったと初めて知った。       


二人の出会いは、飛天が人間だった頃に、人間界で傷を負った母上の看病をしている内に恋が芽生えたようだ。


今でも、女の美しさを誇る母上は稀に、飛天に会いに来る。


現在、母上は、那須で大御所として色々と力になってくれている。


何度か那須に行ったが、妾が留守の間に、二人が夜伽をしていたのを知ってからは、足を運んでいない。


「まぁ、玉藻は玉藻。お前はお前だ。気に病む事じゃねぇよ」頭に置いた手で優しく撫でられた。


母上に対する劣等感の気持ちが顔に出たか?


「じゃあ、俺は飯前に一眠りするから」妾から羽織りを奪うと自室に戻って行った。


結局、上手く交わされた気がして仕方がない。


・・・・・・まぁ良い。何れは、問い詰めてやる。


お主は、他の誰の物でも、母上の物でもない。


お主は、お主の身体も、魂も、全て、この月黄泉の物なのじゃからな・・・・・・・・


誰にも渡さない。


絶対に・・・・・・・・


拳を握り締めながら決意を新たにした。

はぁー、あの馬鹿、また暴走しやがって・・・・・・・・・・・       まぁ、想いは本物だから良いかな?        四話は、俺の活躍に期待してくれ。

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