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第二話:朝食前に一暴れ

この物語の飛天夜叉王丸男爵だ。         いやー、こんな人生破綻者の俺が小説に出て良いのか正直、迷ったぜ。   まぁ、始まった以上は流れに身を任すが、面白くなるように努力するぜ!?

「・・・・・ZZZZZZ」皆が朝食を済ませ働き始めている中、月黄泉の夫である夜叉王丸だけは今だに床から起きなかった。


時は午前十時と完璧に朝寝坊だ。


普通なら女中の誰かが夜叉王丸を起こしに来るのにまだ誰一人として部屋を訪れていなかった。


そのせい(お陰?)で夜叉王丸は今だに夢の世界の真っ只中なのだ。


どんな夢を見ているのか夜叉王丸は終始、笑顔を絶やしていない。


何故、夜叉王丸を誰も起こしに来ないのかと言うと月黄泉が女中達にあれこれと仕事の山を押し付けているからだ。


理不尽と言えるくらいの横暴にも女中達は我慢しながら自分が夜叉王丸を起こしに行くのだと決意しながら仕事を片付けていた。


女中達に仕事を押し付けている月黄泉も自分が愛しい夫を目覚めさせると必死に仕事を片付けている。


しかし、そんな努力も虚しく夜叉王丸は自分から目を覚ました。


「・・・・・ふぁーあーよく寝たな」黒い寝巻をだらしなく着くずしながら夜叉王丸はノロノロと立ち上がった。


「さてと城の奴らは仕事の最中だから城下に下りて飯でも食うかな?」不精髭の生えた顎に手を当てながら夜叉王丸は呟いた。


「そうと決めれば行動あるのみだ」寝巻を脱ぎ捨てると青い陣場織りに黒の袴を履いて腰には大小の太刀を差して準備を終えた。


「さぁて、どんな城下か楽しみだぜ」      


愉快な笑みを浮かべながら夜叉王丸は三の丸の窓から飛び降りた。


「・・・・・・これで、終わりじゃ」最後の書類に判を押してやっと仕事を終えた。


「ふー!」朝から執務室に山積みにされた書類の山と格闘する事、四時間・・・・・・・・長い道のりじゃった。        


なに?あれだけの書類の山を四時間で片付ける方が凄い?


ふふふふふ、愛の成せる力じゃ・・・・・・・・


仕事も片付けたし心置きなく飛天を起こしに行ける。


襖を開け部屋から出ようとしたら外にはこれまた信じられない位の書類の山が行く手を阻んでいた。


「・・・・・・・・」あまりの量に妾は唖然とするしかなかった。


こ、こんなに片付けられる訳がないっ!?


明らかに女中達が妾の邪魔をしようとしているのは明白じゃった。


おのれー、そうまでして妾を飛天の元に行かせない気なら・・・・・・・・


受けてやる!


必ず書類の山を片付け飛天を起こしに行ってやる!


そうと決まれば行動あるのみじゃ!?


目の前にそびえ立つ書類の山に妾は戦いを挑む。


待っておれよ。飛天。必ずお主を起こしに行くからな!?


一方、そんな事をまったく知らない夜叉王丸は城下の中を散策している最中だった。


「昔の日本の面影があって良い場所だな」


江戸時代の風景や市場を見て夜叉王丸は満足な笑みを浮かべていた。


「飯屋は・・・・・・・・・・・・おっ見つけた」辺りを見回し手頃な店を見つけると漆黒の長髪を風に撫でさせながら店の中に入った。


「いらっしゃい!」のれんを潜ると元気な少女の声が夜叉王丸を出迎えた。


「飯を頼む」近くにあった席に座り娘に注文をする。


「畏まりました。少々お待ち下さい!」盆を持ちながら頭を下げると店の奥に消えた。


娘が立ち去った後に夜叉王丸は懐から通常の倍はある銀の煙管を取り出した。


火を点け煙管を美味そうに吸った。


「お待たせしました」しばらくして盆にさばの味噌に白菜汁、白米、少量の漬物が出された。


「おぉ、美味そうだ」煙管を横にある箱に置き箸を掴み頂こうとした瞬間に


「ぎゃあ!?」のれんを超えて男が夜叉王丸の座っていた机に直撃し料理が宙に舞った。


地面に落ちた料理は見るも無残な形で目の前に出された。


「どけよ!大旦那と若旦那のお出ましだ!?」のれんを超えて悪人面した二人の妖狐の男が店の中に入って来た。


「娘さん。女将はどこかな?結婚の返事を聞きたいのだが・・・・・・・・」大旦那と呼ばれた男が気丈にも睨む娘を見下ろした。


「・・・・・母は、買い出しで留守です。返事も私も母も変わりません」


「何時まで強情なんだい?お葛ちゃん。

ま、そんな強情な所が私も父も好きなんだけどね」若旦那の声が耳に触れた。


『・・・・気色悪い奴』心の中で嘔吐の真似をする夜叉王丸。


「しかし、こうも強情な態度ばかりは頂けないから少し、お仕置きをするしかないかな?」若旦那が指を鳴らすとチンピラ達が店の中で暴れ始めた。


「や、止めて下さいっ」客は夜叉王丸しか居ないから怪我はないが店内は、無茶苦茶にされている。



必死に制止を呼び掛ける少女を二人はニヤニヤと笑いながら見ていた。


『少々、目に余るな』しばらく黙って見ていたがあまりの横暴に夜叉王丸は腰を上げた。


「・・・・・・・」机を投げようとした男に膝かっくんをした。


「うおっ!」男は床に膝を着き、間を置かずに投げようとした机の下敷きになった。


「お前ら少し、おいたが過ぎるぞ」長煙管を口に挟みながら夜叉王丸は娘を自分の背中に隠した。「お侍さん、下手な正義感は身を滅ぼしますよ」大旦那は夜叉王丸を見ながら脅し文句を言った。


「生憎と正義感なんて持ってない」左から右に煙管を持ち変えながら答える。


「・・・・・ほぉう。するってと、何か見返りを望むのですか?」


「・・・・まぁ、食い損ねた飯を、もう一度つくり直してもらいたいかな?」


「たかが、そのような理由だけで私共に喧嘩を売るのですか・・・・・・?」夜叉王丸の言葉に唖然とする一同。


「まだ理由が欲しいなら、お前らみたいな奴らを見てると、頭に来るから成敗する」煙管を弄びながら答える。


「・・・・・面白い。ならばお相手しましょう」大旦那は眉間を抑えながら外に出た。


「ここで待ってな」後ろで震える娘の頭を撫でながら夜叉王丸も外に出て行く。


「・・・・・先に言いますが、後悔しますよ」夜叉王丸を見ながら最後通告だと言った。


「そういう事は、俺を負かしてから言え」煙管に再び火を点けながら返答する。


「・・・・・やれ」大旦那の命令にチンピラ達は短刀を出し襲い掛かった。


「・・・・・・」真っ先に突っ込んできた男を交わすと背中に蹴りを入れそのまま走った。


二人目は煙管で頭を殴り三人目は上段回し蹴りで転倒させた。


突然、はじまった喧嘩に市場にいた者は驚いたが、すぐに野次馬となった。 


「くそったれが!」チンピラ達は、夜叉王丸と距離を取り、狐火で攻撃をはじめた。


「骨も残さず焼き殺してやる!?」チンピラ達が一斉に、狐火を放った。


「ほぉう。そっちがそうなら俺も炎を使うかな」無邪気な笑みを浮かべ、気を念じて地面から黒い炎の龍を召喚した。


「あいつらを黒焦げにしてやれ」チンピラ達に指を差す。


狐火を一口で食べると龍は真っすぐにチンピラ達に襲い掛かった。


「う、うわぁー!?」チンピラ達は一目散に背を向けたが全員、仲良く空に舞い上がった。


「もう少し骨のあるチンピラを雇いな」煙管に火を点けながら言った。


「・・・・そうですな。では次に会うまでは用意しておきます」大旦那は面白そうに笑いながら若旦那を連れて帰って行った。


「大丈夫か?嬢ちゃん」夜叉王丸は娘を案じた。


「は、はいっ」先程の様子を見ていた娘は夜叉王丸に怯えたが、すぐに治った。


「あ、ありがとうございます・・・・・・」娘は頭を下げ礼の言葉を呟いた。


「さっきも言った通り、飯を食いたいから、助けただけだ」くわえた煙管を口から離し白煙を吐いた。


「じゃあ、すぐに作り直すので待ってて下さいっ」なぜか赤面しながら娘は店に戻った。


「これで、やっと飯が食える」夜叉王丸は安堵の笑みを浮かべた。


その笑みは、背格好に似合わない輝かしい笑顔で野次馬達は暫し魅了された。


一方、そんな城下での夜叉王丸の活躍を知る由もない月黄泉は、ひたすら書類の山と格闘していた。

俺の活躍はどうだった?正直、腹が減ってたから、ちぃーと手加減できなかったが・・・・・・・・   まぁ、それは置いといて三話を楽しみにしていてくれ!!

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