第十六話:予想は的中
今回も短いですが、楽しんで下さい。
妾と側室の二人を乗せた牛車はただ延々と前を歩んで一刻は経ったであろうか。
何か可笑しいな。
懐から二百年前に飛天から送られた金の懐中時計を見つめた。
「・・・・・やはり飛天の仕業じゃな」
飛天から貰った懐中時計は時計と同時に魔力などを感知する優れ物じゃ。
もっとも妾から逃げる為に開発したそうじゃが・・・・・・・・・・・
「どうして分かるんですか?月黄泉様」二人が妾の持つ時計を覗き込んできた。
「この時計が鈍く光る時は何かしら魔術が発生している時じゃ」
「恐らく母上が泣き付いて飛天がやったという所じゃな」
本当は母上が頼まずとも自らやったであろうがの・・・・・・・・・
「それでどうするんですか?」
「この手の術は火か土の術で解ける」
「火なら月黄泉様の狐火で解けるのでは?」
「妾の力だけでは無理じゃろうな」
「どうしてですか?」
「飛天の事じゃから妾の狐火に備えて手抜かりはないはずじゃ」
事実、あ奴が仕事や戦で手を抜いた所など見た事がない。
「じゃあ、どうするんですか?」
不安そうに尋ねる二人の側室。
「・・・・・ふむ」暫し思案して
「お主ら、土と火の術は使えるか?」
「は、はぁ。一応、二人とも使えますが?」
「ならば妾に力を貸せ」
「妾の狐火と主らの狐火と土遁の術を融合させて飛天の術を破るのじゃ」
「そんな事が出来るんですかっ?」二人は身を乗り出してきた。
「うむ。かつて一度だけじゃが飛天とした事がある」
妖獣大戦の時に飛天の風の術と妾の狐火を合わせて妖狸を一瞬で消滅させた時があった。
後に飛天から
『この術は他の術とも融合できるから機会があれば試してみろ』っと言われた。
今がまさに試す機会。
「良いか?失敗は許されんぞ。この一撃で決める気でやるのじゃ!!」
妾の言葉に緊張した表情で頷く二人。
「・・・・・では用意は良いな?」
再度、確認をする妾に二人はしっかりと頷いた。
それを確認して妾は意識を集中して狐火を放った。
「・・・・・狐火!!」
「狐火!?」
「土遁の術!?」
妾の後に水藻が狐火を放ちお葛が土遁の術を放った。
三つの術は一つになり弾けるように閃光を放ち辺りを光りで包んだ。
「・・・・くっ」あまりの眩しさに目を手で覆う。
やがて光りが治まり瞳を開けると霧が消えていた。
「どうやら術を払う事に成功したようじゃな」
水藻とお葛に視線をやると二人とも唖然としていた。
「なんじゃ?どうしたのじゃ?」
妾が尋ねると二人は
「あ!え、と凄い術だと思いまして!!」
成る程。確かにこれを見れば唖然とするか。
「じゃが、これで終わった訳ではない。飛天を奪い返して決着が着く」
「「はっ、はいっ」」二人は身を引き締めた。
「その調子じゃ」
満足して牛車の中に入ると牛車は再び歩み始めた。
待っておれよ。飛天。必ず行くからな。
後、四、五話で終わるかもしれません!?




