第十二話:女帝VS大御所
更新がまた遅れてすいません(爆)
皆が起床して妾も同時に起き上がり、目と鼻の先にある飛天の部屋に向かった。
勿論、愛する夫の飛天を起こす為じゃ。
本当なら昨日も一緒に寝たかったのだが、思った以上に政務に手こずり叶わなかった。
部屋に入ると煙草の臭いが充満していたが平気だ。
「飛天、朝じゃ。起きてたもれ」
頭から布団を被り眠っている飛天を揺さ振る。
「・・・・・眠い」
布団を被ったまま気怠い声が返ってきた。
女帝自らが起こしに来たのにその態度は何じゃ!?
「駄目じゃ、今日は“二人だけ”で遠乗りに行く約束したはずじゃ!?」
妾の怒鳴り声で布団が捲れた。
「ッ!!?」
天が眠っていた布団の中には、寝巻きを振り乱し銀の髪と金色の九尾を惜し気もなく晒し出して眠る母上の姿が・・・・・・・・・・
「んー、飛天。寒い〜」
母上はすりすりと妾の飛天の胸板に頬擦りをした。
「・・・・・・あら?どうしたのかしら?月黄泉?女帝とも在ろう者が眼を吊り上げて布団を握り締めてるなんて?」
わざとらしく、今気付いたように話す母上。
「身体が震えてるわよ?もしかして寒いの?」
「寒いなら火鉢でも使って温まれば?私は飛天の胸で温まるから♪」
・・・・・・ぶっち
「この・・・・・・・泥棒狐が!!」
我慢できずに狐火を母上に放つ。
勿論、妾の愛する飛天は避けておるぞ。
狐火は母上を直撃したが異変に気付いた。
「・・・腕を上げたようだけど、まだまだね」
くすりと笑いながら母上は妾の狐火を指で弄んだ。
「たかが“銀狐”の分際で、この“仙狐”の私に勝てると思ってたの?」
そう、母上の階級は妖狐の中では最高位の仙狐(天狐、空狐)で対して妾は仙狐に遙かに劣る銀狐の位。
「実の母を泥棒呼ばわりするとは、良い根性してるじゃない?」
指で弄んでいた狐火に軽い息を吐いただけで炎が倍の大きさになった。
「受け止めてみなさい」
放たれた炎は大砲の弾のように大きかった。
「くっ・・・・・・」
急いで結界を張ったが直ぐに破壊され爆発を起こした。
「きゃあああ!!」
爆発の衝撃で部屋の外に弾き出された。
「あらあら、可愛い悲鳴を上げちゃって」
膝を着く妾を面白そうに見る母上。
くっ、おのれ、母上。
「おい、玉藻。やり過ぎだぞ」
妾をからかう母上を飛天が叱った。
さすが妾の夫、気が利くのう。
「だって母親に手を上げたのよ。お仕置きは当然じゃない?」
「俺なんて毎日のようにベルゼブルを殴ってたぞ」
胸を張って言い切る飛天。
ベルゼブル・・・・・・・・・・飛天の養父にして魔界の最高権力者の皇帝で妾の義父に当たる。
最近、魔界に出向いてないのう。たまには顔を出さぬといかぬな。
「それでも手加減してたでしょ?月黄泉のは明らかに手加減無しよ」
飛天に反論する母上。
確かに、妾の放った狐火は手加減どころか殺す気じゃったからな。
「そうだろうが、その辺にしておけ」立ち上がって妾に近づく飛天。
「・・・月黄泉」
片膝を着いて妾の頬に掛かった墨を拭ってくれた。
「・・・・・・飛天」
感動の余り涙が出てきた。
母上に虐められた妾を甘い言葉で慰めてくれるのか?期待した気持ちで待ち侘びていたが・・・・・・・・・・・・
「お前じゃ、玉藻に勝てない。諦めろ」
「それが悲しんでいる妻に掛ける言葉か!?」
怒り任せに飛天に狐火を放ったが、風の結界で阻まれた。
くそ!!情けで一度くらい焼かれろ!!
「私にも勝てないのに飛天に勝てる訳ないでしょ?」
着物の乱れを直しながら母上が笑った。
「それよりも夫に手を上げるなんて、どういうつもりよ?」
笑いから詮索するような眼差しに変わって妾を見てきた。
「・・・・・・・」
妾は何も言えずに押し黙った。
「まさか、何時も手を上げてるの?」
何も言わずにいる妾に詰め寄る母上。
その瞳は、愛する飛天を傷つけられて怒りに染まっていた。
飛天は妾の夫なのに・・・・・・・・・・・・・・・
「いや、毎日じゃない。俺が無断外出したり、帰りが遅い時だけ仕置きとしてやられる位だ」妾に代わり飛天が答えた。
「まぁ!!そんな事で仕置きされたの?!」
「私ならそんな酷い仕置きなんてしないで、優しい仕置きをして上げるのに」
優しくない仕置きで悪かったですね!!母上!?
「覚えておきなさい、月黄泉。男はね、優しくて包容力のある“大人”の女性を求めているものなのよ」
「その言い方、妾は大人の女性、淑女ではなく子供だと言っているように聞こえますが?」
「あら?分からなかったの?自分の身体を見て分からない?」
ぐっ、妾の気にしている事をよくも・・・・・・!?
「飛天に抱かれて多少は大きくなったようだけど・・・・まだまだね」
・・・・・・・ぐぐぐぐ
「そんな貧相な身体じゃお葛ちゃんにも負けちゃうわよ?」
あのような幼児体型の小娘に負けるじゃと?!
・・・・・・もう我慢できん・・・・・・・・!?
「玉藻、いい加減にしろ」
再び狐火を放とうとしたが厳しい声で飛天が母上を叱った。
その表情は何時になく険しかった。
「・・・・・・はぁい」
叱られた母上はふて腐れた子供のように頬を膨らませた。
「お前は一度、朝風呂に入って来い」
埃と汚れた妾を見ながら飛天は立ち上がって部屋を出ようとした。
『そうじゃ!良い事を思い付いたぞ!?』
「のう、飛天。たまには夫婦で仲良く朝風呂に入らぬか?主も若干だが、汚れておるじゃろ?」
着物の裾を掴んで上目使いで飛天を見上げる。
「・・・・・まぁ、たまには良いか」
「また、気紛れじゃな?」
飛天の裾を掴んで立ち上がる。
「まぁな」
否定もせずに飛天は前に進んだ。
「それでは、母上。これで失礼します」
皮肉を込めながら妾は、母上に笑いかけ部屋を後にした。
ふふふふ、これで少しは仕返しが出来たかの?
余談だが、妾と母上、飛天の三人で一騒ぎしている時に水藻とお葛は惰眠を貪っていたらしい。
次回は早めに更新できるように頑張るので感想をお願いします!?