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第十一話:お忍び紅葉祭で一暴れ

何じゃ!?これは!!作者?!どういう事じゃ?なに読めば分かるじゃと?

「・・・・・おぉ、紅葉が美しいのう」


牛車の中から見える紅葉は色鮮やかに映り、風に揺られて舞い上がっていた。


「・・・・風流だな」牛車の外で紅葉を眺めている飛天の声が聞こえた。


声を出しただけで、周りから、きゃあ、きゃう、などと言った悲鳴が聞こえてきた。


くっ、やはり、恐れていた事が起きてしまったか。


城を出る際に飛天の服装を陣場織りから、薄青の狩り衣を着せ、髭も剃らせ、の手入れもさせたので女中達が騒いだ。


城の中で、こんな騒ぎなのだから城下町に出たら結果は、目に見える。


事実、城下町に降りた途端に周りから小娘共の黄色い悲鳴が聞こえてきたのだからな。


そうなる事を懸念して牛車の中に押し込もうとしたが断られてしまったので、気が気ではない。


じゃが、それと同時に飛天が自分の夫である事が嬉しくてたまらない。


自分の夫が、ここまで人気があると妻の妾も鼻が高いというものじゃ。


「・・・・・・」むっ、飛天め、妾から離れようとしておるな。


「これ、飛天。どこに行く気じゃ?」


「少しだけでも駄目なのか?」


「・・・・・どこに行く気じゃった?」


「城下町で世話になっていた店に用があるんだ」


何やら、女の臭いがするのう。


しかも二人分のな。


「別に肉体関係も恋慕もないから安心しろ」


妾の心を読んだように言った。


主に恋慕の気がなくとも女の方にはあるのじゃ!?


駄目だと、言おうとした矢先に


「・・・・・・空牙様」妾より先に飛天に声を掛けた者がいた。


人間でいうなら二十前半と十代前半じゃな。


見た目は、色白で着ている着物も粗末じゃった。


しかし、姉か母と思われる娘の身体だけは、いわゆる“ボン!キュッ!ボン!”じゃった。


飛天に抱かれるようになってからは、妾の胸も少しは膨らんだがとても太刀打ちできそうにない。


もう一人の娘は童顔に幼児体系じゃが、どこか艶があり美しく見えた。


誰かに恋をしておるな。


直感で分かった。これでも人妻。


恋する乙女の見分け位は出来る。


「水藻殿、お葛殿」飛天の声に耳を傾ける。


むっ、二人とも飛天の知り合いか。


恐らく、城下に降りた際に知り合ったという娘達じゃな。


「まさか、こんなに早くまた、お会い出来るとは・・・・・・」二人の娘は涙で潤ませた瞳で飛天を見た。


この二人、飛天に恋をしておるな。


「・・・・・飛天、この娘達か?そなたが会いたがっていた者達とは?」握っていた扇に力が入った。


「あぁ。城下で世話になった水藻殿とお葛殿だ」


妾の声から怒りを察しながら平然と答える飛天。


どうせ、出て行った着物からして浪人、偽名を使ったのじゃろうな。


飛天がやりそうな事じゃ。



「空牙様、そちらの牛車の方は?」妾の事を言っている事が分かる。


「こちらは、俺が新しく仕える事になった貴族の姫君だよ」


すぐに否定しようとしたが今宵は、忍びで来た事を思い出し止めた。


この時間を我慢すれば良いだけ。


我慢じゃ。我慢。


「貴族様っ」二人の娘は慌てて頭を下げた。


「そんな畏まらないで。今宵は、姫の我儘で忍びだから」


苦笑する飛天の様子に更に扇を握り締めた。


が、我慢じゃ。こんな事で怒っては女帝の誇りが許さん。


「・・・姫、お体の具合がよろしくないようで?」


妾が我慢しているのを感じ取った飛天が、気遣うように牛車に近づいた。


「・・・少し目眩がしました。そろそろ戻りたい」声を押し殺して答える。


「畏まりました。では、早々に帰る準備を・・・・・・・・・・・」


飛天は、離れていた女中達を呼び帰る支度をさせた。


「申し訳ない。姫君の具合が芳しくないので、これで失礼するよ」


二人の娘に事情を告げ別れようとする飛天。


「準備が出来ました」女中達の声がした。


「では、これで」一礼して妾を乗せた牛車と身を翻す飛天。


「あ、あの、空牙様、待って下さいっ」去ろうとした飛天を呼び止めた。


・・・・・・・嫌な予感がするのは気のせいか?


娘達の瞳が潤みを更に増したぞ。


「「・・・・・・わ、た、私、私は!空牙様を、お、お慕いしています!」」


・・・な、なんじゃと?


ひ、飛天を、妾の夫である飛天を、慕っているじゃと!?


握り締めていた扇が音を立て二つに折れた。


ゆ、許さん。許さぬぞ。


飛天は妾だけの男。


他の誰にも渡さぬ。


誰にも・・・・・・・・・・・・・・・・渡さぬ。


牛車の外に出ようとした時に


「お久し振りですね?お侍さん」


ん、誰じゃ?一体?


「・・・・・お前ら、二度目はないと言わなかったか?」不機嫌そうな声を出す飛天。


「・・・・えぇ。覚えておりますよ。ですが、諦めが悪い性分でして」


牛車の中から聞いたが、品のない下劣な声じゃ。


「・・・・お前らに情けを掛けた俺が馬鹿だった」


牛車の外から苦しそうな飛天の声が聞こえてきた。


飛天を苦しめる不届きな奴らは、妻である妾の敵。


娘達の前に飛天に仇なす輩を成敗するとするか。


「・・・・・飛天」牛車の中から声を掛ける。


「何だ?俺はこの屑を掃除するから邪魔をするな」


殺気立った声の飛天に身震いした。


この声、妖獣大戦を思い出すわ。


「主の敵は妾の敵じゃ。どうじゃ?ここは夫婦で協力して屑を掃除せぬか?」牛車から身を出す。


「・・・・良いだろう。足を引っ張るなよ?」隣に立つ妾を愉快そうに眺める飛天。


「心配には及ばぬ。たかが数百の屑など他愛無い」


目の前には、数百の屑がいたが大した数ではない。


「水藻殿、お葛殿。こっちへ」二人の娘を女中達に手渡す飛天。


「主ら、覚悟は出来ておろうな?我が夫、飛天夜叉王丸に刄を向けるとは」


数百の屑に動揺が走った。


娘達も飛天と妾を凝視するように目を見張った。


まぁ、当然であろうな?


「さぁ、行こうか?月黄泉?」


すらりと刀を抜く飛天。


「おぉ、大暴れと行こうか?飛天」掌で狐火を作り上げる。


ふふふふ、久し振りに憂さ晴らしじゃ。







・・・・・・・十五分後


「はぁー、久し振りに大暴れして愉快じゃった」


女中に扇であおがせながら飛天に笑い掛ける。


「俺としては暴れ足りないんだがな」


地面に倒れる屑を足蹴にしながら飛天は不機嫌そうに言った。


まぁ、後ろで控えている娘達に血生臭い現場を見せたくなかったのであろうな。


さてと、屑の掃除には終わったが娘達の件が残っておったな。


「・・・・・面を上げ」娘達を呼び寄せ顔を上げさせる。


「・・・・・水藻とお葛と言ったか?」


「は、はいっ」怯えた眼差しで妾を見る二人。


「飛天が城下に居た際、世話になったそうだな。礼を言うぞ」


「飛天が世話になった件で我が夫に恋慕の情を抱いた罪を許してしんぜよう」


ふふふふ、こう言えば娘達も諦めるじゃろうて。


本来なら飛天に恋慕しただけで極刑じゃが、寛大な心を見せてやろう。


「夜叉王丸様に世話になったのは私共です。そして夜叉王丸様を恋い慕う気持ちに変わりはありません」


「・・・・・・・なん、じゃ・・・・・・・・と」


妾は言葉を言う事が出来なかった。


普通なら、忘れるとか、もう致しません、と言うはずなのに、この娘達はそれをしない。


初めは呆気に取られたが直ぐに分かった。


嗚呼、そうだ。この娘達は妾と同じだ。


好きな男の為なら、死も厭わない。


まさに恋する乙女は無敵の強さを持つ。


同じ女として感心するが引けない。


飛天は妾の男。今もこれからも・・・・・・・・


他の女になんぞ渡さぬ。


「・・・・・そうか。では仕方ない。主らを・・・・・・・・殺す」


狐火を丹念に作り上げる。


「せめてもの情けじゃ。痛みもなく燃やしてやる」


じっと二人は妾を見つめていた。


「・・・・・では、さらばじゃ」狐火を放とうとしたが飛天が二人の前に出た。


「・・・何の真似じゃ?飛天、そこを退け」動揺したが必死に隠した。


「お前の嫉妬で殺されるような娘達じゃない」


「・・・・・嫉妬、か。主の全ては妾の物じゃ。例え恋慕の情だろうと見逃す訳にはいかぬ」


「俺なら好きにしろ。だが二人に手は出させん」今度は動揺を隠せなかった。


「何故じゃ!何故そこまでして庇い立てする?主は妾より、その小娘共を取るというのか?!」


涙で瞳が熱くなり嗚咽が止まらなくなった。


「今のお前と、この二人を選べと言うなら俺は迷わず二人を選ぶ」


今度こそ言葉を失った。


妾より、あの小娘共を迷わず取る。


頭の中で回り続けた。


「勘違いするな。俺はお前が嫌いな訳じゃない」


呆然とする妾に飛天は冷静に語った。


「お前は女帝だ。民の幸せを考えるのが王としての務め」


「一時の感情で守るべき民の命を奪うなど愚の骨頂だと玉藻にも言われたはずだぞ」


母上の言葉が脳裏に浮かんだ。


『月黄泉、覚えて置きなさい。王たる者、守るべき民に手を挙げるは、もっとも恥べき行為よ。常に民の幸せを考え政をしなさい』


“守るべき民に手を挙げるは恥べき行為”


妾は、今、その教えを破ろうとしていた。


例え、嫉妬であろうと民に手を挙げようとした。


だから、飛天は妾より、小娘を取ると言った。


妾は、愚かな女帝だ。


守るべき民の幸せを考えずに民を傷つけようとした。


・・・・・こんな妾は女帝失格じゃ。


飛天に嫌われても仕方がない。


・・・・・・・だけど、だけど、狂おしい程に飛天が恋しくて堪らないのも、また事実。


母上なら上手く、この場を治めたじゃろうが、妾は出来ない。


所詮、妾は女帝になる資格のない女子。


涙が止まらずに溢れていると、瞼をゴツゴツした手が優しく拭ってくれた。


「・・・・・飛天」


「お前、また自暴自棄になってるだろ?」


「・・・・・だったら、何じゃ?」触れられた手を振り払うように顔を背ける。


「主に見捨てられたら自暴自棄にもなるわ」拗ねた口調で答える。


「・・・言ったはずだ。嫌いな訳じゃないと」


しかし、強引に顎を捕まれ視線を合わせられた。


「お前は感情が直情すぎるだけだ。後は女帝としての才能はある」


「それにな・・・・・・・・・・・・」ニヤリと口端だけで笑う飛天。


「玉藻が傍に居るから大丈夫だ」


母上が?母上は那須に居るはずじゃが?


首を傾げる妾。


「おい、玉藻。そろそろ出て来いよ」咽喉でくつくつ笑いながら飛天は、明後日の方を向いた。


飛天の視線を追うと


「はーい。月黄泉?元気だった?」


一人のあでやかな上臈じょうろうの立ち姿が幻影のように浮き出て来た。


柳の五つ衣に紅の袴をはいて、唐衣からごろもを重ねた


「・・・・・・・・は、母上!?」


が立っていた。



なにが読めば分かるじゃ!?こんな展開など許さんぞ!?

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