逸話:また会うその日まで
今回は、夜叉王丸も月黄泉も出ないので、御了承ください。
『拝啓 突然、姿を消す事をお許し下さい。
私としても、まだ留まりたかったのですが、どうしても出来なくなりました。 しかし、貴方達を悩ませていた奴らは、退治いたしましたので安心して下さって結構です。 貴方達と過ごした一月は楽しかったです。
また、会える日を楽しみにしています。 どうか、お元気で・・・・・・・・
浪人 時雨 空牙』
「・・・・・・」最後まで手紙を読み終えた水藻は、丁寧に手紙を畳んで床に置いた。
「・・・・・空牙様」お葛は、涙で充血した瞳から再び涙を流した。
「・・・・・お葛」水藻も耐えられなくなり、涙が溢れんばかりに零れ落ちた。
あの用心棒が訪れてから一月余り、二人は毎日が楽しかった。
母親のように優しく、父のように威厳があり強く二人を護ってくれた用心棒。
そんな用心棒に恋心を抱いていたが、想いを告げる前に消えてしまった。
暫らくの間、涙を流していたお葛だったが、涙を拭いた。
「・・・・・姉さん。泣くのは、もう止めよう」
「空牙様の手紙に書いてあったじゃない。『また会える日を楽しみにしている』って、だから、お店を開けて待っていようよ」
「・・・お葛」水藻は、幼いと思っていた妹の成長ぶりに目を見張った。
泣き虫で自分が慰めていた妹が、自分を慰めているのだ。
「空牙様は、また会うって手紙に書いたんだから、必ず来るよ」
「だから、二人で待っていようよ」姉の手を握り力説する、お葛。
「・・・・・そうね。泣いていても、何も始まらないものね」涙を拭いて妹の手を握り返す。
「うんっ。空牙様なら必ず来るよ」
「・・・えぇ。そうね・・・・・・じゃあ、二人で夕食の準備をしようか」
「うん!」一緒に立ち上がり夕食の準備を始める。
・・・・・また会える。
何時の日になるのか分からないけど、また、必ず会えると信じている。
・・・・・だから、また会えた、その日には、美味しいと言ってくれた料理をご馳走しよう。
そして、その時に自分の想いを伝えよう。
受け入れられるかは、どうかは、分からないけど、それでも貴方に自分の想いを伝えたい。
だから、その日までは、二人で頑張ろう。
二人の姉妹は、互いに用心棒への想いを胸に、頑張ろうと誓った。
そんな二人を励ますかのように、夜空に高く昇った上弦の月が店を照らしてくれた。
次は、オールキャラが出る予定なので楽しみにしていて下さい。