野いちごとウサギさんと 後編
獣様の呼び方は主人公の気分に次第で変わります。
ご了承ください。
そんなこんなでお弁当と食べ終えた私たち。
食後はまったり過ごしたいというフェル様は放っておいて、私は一人、当初の予定である野いちご採りに精を出す。
あちらこちらを飛んでいる蝶々さん―-精霊さんに導かれるまま探せば、すぐに野いちごが群生している場所が見つかる。うん、精霊さん、便利。
まぁそんな風に精霊さんに注視するあまり、いつもより余計にこけたりぶつかったり落ちたりしたような気もするけど、たいした怪我もなかったし、まあいいか。
それより、いつもより大量に野いちごが採れたのが嬉しい。
精霊さんの助けがあったってのもそうだけど、帰りもまた獣様に乗せてもらうから、少々重くても平気ってのが私の収穫意欲を刺激したんだね! うん、獣様、便利。
師匠に魔術をかけてもらって、脚力とか腕力を増強してもらって収穫に望む、ってのもありなんだけど、どうも私って魔術が利きにくいらしくて、すぐに効力が切れちゃうんだよね。そのせいでしょっちゅう師匠の魔術実験に付き合わされるんだけど…それはまぁべつの話か。
けど、いつ切れるかわからない魔術の効果を使って出掛けるってなんか心もとないんだよね。
脚力アップで遠出したら途中で効力が切れて自力で戻らないといけなくなったり、腕力アップで大量の荷物抱えてたのに切れちゃって身動き取れなくなったり…。……師匠、不便。
そんなこんなでカゴいっぱいの野いちごゲット!!
なんだか思ったより時間がかかった気がするけど…フェル様が哀れみの目で見てるのもそのせいかな?
ま、いつもより多くの災難に見舞われた気がするもんね…。でも、今日は木にはぶつからなかった!!
…木のない空き地に居たから当然なのかも知れないけど。しかも、代わりに切り株にぶつかったけど。
いいのさ。私はポジティブに生きる!!
帰ろうとしたら、あのウサギさん親子がまた巣から顔を出してくれた。
しかも、どうぞと言わんばかりに栗を差し出してくれた。
「え、くれるの? いいの?
さっきはいろいろゴメンネ。ありがとう、大事に食べるね」
巣を壊したり、子ウサギを食べそうになったり、むしろ迷惑をかけたのはこっちじゃないかと思わないでもないけど、くれるっていうものはありがたく頂きます!!
丸々と膨らんだ栗は、見るからにおいしそう。全部で5つとちょっと少ないけど、あのウサギさんにしたら大事な貯蔵食料だったに違いない。大事に食べなければ!!
「野いちごのタルトと、栗のパイ……うん、それにしよう。
あとは紅茶はちょっと濃い目に入れて、ほんの少しミルク垂らして……」
『そのよだれを何とかしろ』
帰ってからのおやつレシピを考えていたら、いつの間にか獣仕様になったフェル様に冷たい目で見られていた。
あ、よだれが地面にまで落ちてた…。
余談だけど、帰り道で私を乗せた獣様が穴に落ちた。
獣様でもそんなミスするんだね。
ドンマイって声を掛けたら、なんだか非難がましい目で見られた。
……私のせい??
獣様、かわいそう。
あと、普通に薬草採取は忘れてます。帰ってから師匠に怒られるのは必至。ドンマイ。