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獣様と私  作者: あむ
獣様と私
5/13

5.キノコシチューと

「…何が……」


何が起こったのか。見れば、檻がなくなっていた。

それはもう、ものの見事に。木っ端微塵ってやつですね。え、何事??


「確かに、お前の名、頂いた」

「え?」


背後からの声に、ビビリながら振り返る。

聞いたことがあるのに、初めて聞く声。

そこに、いたのは――――――


「…えっと、どちら様でござるでするか……?」


なんだかやたらとキレイな男のヒトだった。

え、誰?


「だから、その言葉遣いはやめろと言ってるだろう?」

「え、え、もしかして、獣様…??」


にやりと笑うその声は、確かに獣様の声。しかもちゃんとヒトの言葉。

混乱する私をよそに、獣様はまた相変わらずの呆れた声。


「だから、フェルだって言ってるだろう。

 …フェルイス=ライモン=ゼル=ジャベリン」

「フェルイス=ライモン=ゼル=ジャベリン」


呪文のようなそれを繰り返すように口にしたら、身体の中に熱が生まれた。

熱風が身体の中を駆け巡り、思わず胸を押さえ、うずくまる。


「なに……?」


駆け巡った熱は、すぐにおさまった。

それでも、まだ胸の奥が熱い気がして、落ち着かない。

一体、何が起こったのか……。

問い詰めようと、原因と思われる獣様を探したら、思いのほか近くにその姿はあった。

っていうか、目の前にいらっしゃった。


「俺の真名もお前に預けた。

 ここはもう飽きたし、お前といればしばらくは退屈しなさそうだ。

 行くぞ」


一方的にそう告げて、未だうずくまったままの私の手を引く。


「え? え? あ、あの…??」


ぐいぐいと引っ張られるまま立ち上がって、檻の残骸を越え、歩いていく。

周りで精霊さんたちがチカチカと光を発しながら飛び回っている。

これは、あきらかに警戒の合図ですよ!

そう思うのに、手が、振りほどけない。


「ああ、それと」

「…あぅ」


離せない手と、止まれない足に焦っていたら、急に獣様が立ち止まった。

ぶつけた鼻が痛いでござる。人間急には止まれないでござる。


「真名はそう簡単に教えない方がいいぞ」


さっき私に真名を教えたヒトが何を……っていうか、あれ?

もしかして、私も真名を教えちゃった?

しかも、なんでか獣様の真名、思い出せないんですけど!?

これって、つまり、えっと、どういうこと……??





獣様はズンズン歩いていく。

私も、それについて歩いていく。


「とりあえず、飯を喰わせろ」

「あ、はい。それじゃあキノコシチューを……」


あとついでに、高級菓子も、少しなら分けてあげてもいいかもしれない。






師匠、キノコ狩りに行ったらヒト狩りに遭って、ヒトを拾って帰ってきました。

え、このヒト、元魔王様? 師匠は元勇者様の仲間(パーティー)の一人?

…えっと、とりあえず、シチューでも食べますか。

腹が減っては戦は出来ぬってね。あれ、二人してそんな冷たい目しないでくださいよ。

これからはちゃんと魔術の勉強もしますから!


短編のはずが思ったより長くなったので分割掲載しました。

機会があれば続編もある…かも?

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