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獣様と私  作者: あむ
獣様と私
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4.蝶と精霊と


『で、ダンがお前を弟子に取った理由だが―――

 ……聞いてるのか?』

「へぅあ!

 大丈夫です!最近の蝶はキレイだよね!!」


ちゃんと聞いてるよ! そんな話の途中だった気がしないでもないよ!

檻の外をピンクの蝶が飛んでたのを見てた、わけじゃないよ!

だから獣様、その残念な子を見る顔、やめてくだされ。


『はぁ。

 ま、それだ。その、お前が蝶だと思ってるもののせいだ』

「ピンクの蝶?」


なんだか盛大にため息をつかれちゃったよ。

で、何ゆえ蝶? 師匠の弟子の話じゃなかったけ?


『お前が蝶だと思ってるソレらは、精霊だ』

「せいれーさん?」

『そう』

「えぇ!! 精霊ってもっとこう、キレイなヒトの形で、半透明でふよふよしてるやつでは!?」


言われて、もう一度精霊だというピンクの蝶々を見る。

確かに普通の蝶とは違ってほんのり光ってるし、色もキレイだし、ほんのり透けてる。

けど……なんか、イメージと違った…。

もっと美少年・美少女な羽の生えた小さなヒトを想像してたのに…。


『…ダンはお前に何を教えてるんだ?』

「え、っと……何も?」

『弟子じゃないのか?』

「いや、弟子だと思うんだけど…」

『じゃあ、毎日何をしてるんだ?』

「ご飯作ったり、薬草採りに行ったり、畑の世話したり…」

『……』


もう返事ももらえなかった。ぐすん。

言われてみれば、弟子っぽいこと何もしてないなぁ。

お手伝いさんか家政婦か…まぁそれも失敗ばっかだけど。洗濯と掃除は師匠が魔術でやっちゃって、やらせてもらえないし。

あれ、私、この5年間、何してたんだろ?


「私、役立たず?」

『知るか』

「獣様、冷たい…」

『だから、フェルだって言ってるだろ。

 お前が役立たずかどうかは知らんが、お前は精霊に好かれる体質だ。だからダンもお前を弟子として身近に置いたんだと思う。

 今まで、精霊を見たことはなかったのか?』

「言われてみれば、たまにこんな風なキレイな蝶がいるなぁって思ったこともあったような。

 けど、こんなしっかり見たのは昨日から……やっぱ師匠の魔術のせい?」


今までは、あ、キレイな蝶って思って見たらいなくなってるってパターンばっかだったもんなぁ。

目の錯覚かと思ってたのに。


『この檻の鍵を開けたのも精霊だ。礼を言っておけよ』

「え、そうなんですか!どの精霊さんですか?」

『お前の肩にいるよ』

「おう! こんなところに!!」


いつの間にか私の肩に蝶々…じゃなくて精霊さんが。

この子はキレイなエメラルドグリーン。

よし、命名、キミの名はミドリちゃんだ! …名づけセンスないなんて言わないでね?


「ありがとう! キミはキノコ探しも手伝ってくれた子だよね?

 あの時も助かったよ。ホント、ありがとね」


言いながら、いい子いい子してあげる。つぶさないようにそっと。

そしたら、嬉しそうに光を点滅させてくれた。

何この可愛い子!!


『精霊の見分けがつくのか?』

「へぅ?」


可愛くて、頬ずりする勢いでいい子いい子攻撃をしていたら、また獣様に話しかけられた。

…獣様の存在を忘れてたなんてことないよ!? …ホントに。


「あ、はい。色も模様もみんな違うから。

 獣様にはみんな一緒にみえるの?」

『…だから、フェルだって。

 あぁ、俺にはみんな同じに見えるな。

 それもダンの魔術のせいか、それとも……』


獣様はなんだかもごもご言いながら考え込んでしまった。

なんだろねぇ?

まぁ考えてもわからないので、近くにいる他の精霊さんと戯れることにする。

檻の外にいたモモちゃん(ピンクの子ね!)の他にも、水色や青、ムラサキの子までいて、なんだかレインボー!! 順に、ソラちゃん、アオちゃん、パープルちゃんと名づけてみた。…うん、センスない……。



『お前、名はなんと言う?』

「え、私?」


急に名前を聞かれてびっくりした。

そういえば、獣様の名前は聞いていたのに私は名乗っていなかった。

うっかりうっかり。


「私の名前は――――――

 ……ぅぉはぅ!!」


名乗ろうとしたら、口の中にミドリちゃんが突入してきた。

何事かと思ったよ!!

もう少しで飲み込んじゃうところだったよ。はわわ。

思わずすごい勢いで吐き出してしまったミドリちゃんを探せば、なぜか獣様に踏みつけられていた。


「あああ!! ミドリちゃん!!」

『ミドリ?? こいつのことか?

 いいから、名を名乗れ』


なんだか怒ってらしゃられるご様子なり。なんでだろ?

ミドリちゃんも心配だけど、なんだか元気にピカピカ光ってるし、大丈夫だろうと判断。

獣様の勢いに飲まれるまま、名を告げた。


その瞬間、風が、溢れた。






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