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獣様と私  作者: あむ
獣様と私
3/13

3.師匠と弟子と

渡したクッキーは、ものの見事に一瞬でなくなったでござる。

これでお腹すいてないって言うんだから、不思議。

けどまぁ、食後な獣様が満足気だからよしとしよう力作のクッキーだったしね。



『ところで、お前、逃げないのか?』


満足気に毛づくろいまで終えて、獣様が再度尋ねてきた。

いや、逃げられるなら逃げたいけど。…師匠も待ってるだろうし。


「檻に鍵がされてるので逃げれませんでござる」

『鍵は開いてるぞ?』

「はぃ?」


言われるまま扉を見れば、確かに、鍵は開いていた。

人一人通れる程の扉は、普通に手で押せは開いた。

え、何、もしかして始めから開いていたの??

確かにこの大きさなら獣様は逃げれないだろうけど……え、私、逃げていいの?




『ところで娘、お前、俺の言葉がわかるのか?』


扉と檻と獣様をきょろきょろ見ながら、どうすべきか考えていたら獣様に話しかけられた。

やっぱり、いい声だなぁ。


「あぅ、はい。ばっちりでござるます」

『お前は、獣の声が聞こえるのか』

「あぁ、えっと、いえ、動物の声が聞こえたのは今日が初めてでござるすけど、まぁでもきっと、昨日師匠に掛けられた魔術のどれかの効果かなぁと思うでござります」

『魔術?』

「はい。日ごろから師匠の魔術実験につき合わされてるんでござるけど、昨日は私の注意力が散漫すぎるとかで、視力・聴力・嗅覚力やなんかの強化魔術を掛けられまして。その効果かなと思われまする」


そうそう、昨日はいつもよりもミスを多くやらかしたから、なんかいろんな術を掛けられたんだよねぇ。

おかげでキノコは探しやすったけど、残念ながらキノコにしか注意がいってなかったから攫われちゃったんだねぇ。……ダメじゃん、私…。


今さらながらへこむ私をよそに、獣様は話を進める。


『師匠とやらは魔術師なのか?』

「はい、…あ、いや、魔術師のようで薬師のようで呪い師で研究家で探検家?あとは、ええっと……あれ、あの人結局何なんでござろうか?」

『…自分の師匠ではないのか?』


悩む私に、呆れたような声を出す獣様。

でも、あの人を一言であらわすのはなかなかに難しいのですよ。

一言であわらすなら…


「…変態、かな」

『……』

「…あ、村の人からは西の森の賢人とか、奇人とか呼ばれてた気がしますのござるです!」


一言であらわすなら一番的確な言葉だと思ったんだけど、獣様にアホな子を見る目をされてしまった。

獣なのに、なかなか表情に富んでらっしゃる。


『西の森……ダン=ヴァンディか?』

「え、師匠をご存知でござらっしゃるか?」

『あぁ。あのジジイ、まだ生きてたのか』


獣様から師匠の名前が出てびっくりした。

師匠ってそんなに有名人?それとも獣様が博識なだけだろうか?

それにしても、師匠の名を口にした獣様はいかにも不機嫌そうだ。師匠と何かあったんだろうか?


「師匠って今おいくつなんでござしょう?」


先ほどのジジイ発言に疑問を持ったので尋ねてみる。


『詳しくは知らんが、200は超えてると思うぞ?』

「に、にひゃく……」


絶句だ。なんてこった。そんなご高齢だったとは…料理の塩分控えないと……。



『しかし、ダンが弟子をとるとはなぁ』


私が今までに師匠に出した献立に自責の念に駆られているうちにも、獣様は会話を続けていた。


『いつから弟子になったんだ?』

「12の頃に、母のお使いで師匠の家に行ったら、なんかうっかり気に入られてしまって、そのままうっかり弟子になってたでござるます」

『……うっかり』

「うっかりです。

 あれから、奇人の弟子だってことでさっぱりモテなくなりました」

『そうか……』


あぁ、また獣様にアホな子を見る目をされている…。

ホントのことなのになぁ。


『まぁモテる云々は知らんが、ダンがお前を気に入った理由はわからんでもないぞ』

「え!? 獣様もロリコンってやつでござったか!?」

『お前、馬鹿だろ』


師匠が私を気に入った理由は今までさっぱりわからなかったけれど、師匠の年齢を聞いて確信した。200歳の師匠にとって12の私はベストなストライクゾーンだったに違いない! それがわかるってことは獣様も同じくロリコンなのだと思ったんだけど、違うのだろうか?

なんにしろ、こうまで馬鹿と断言されると、悲しいね。


『とりあえず、その言葉遣いを何とかしてくれ。さっきからずっと気になってたんだ』

「言葉遣い…でござりまするか?」

『その語尾のやつだ。無理に丁寧にしようとしてるのがバレバレだし、ひどすぎる。耳障りだ。

 あと、獣様ってなんだ?俺を崇めたいのか虐げたいのかさっぱりわからん』


なんか怒涛の攻撃をされた。

確かに、目上のヒトへの話し方って難しいと思ってたんだ。こんなことならもう少し師匠の言うとおり、師匠をもうちょっと敬って話してればよかった…。


「えっと、では何とお呼ばれすればよろしいのでらっしゃいまするか?」

『…フェルだ。あと、もう普通にしゃべってくれ。何が何やらわからなくなってるぞ』

「じゃ、フェル様で。よろしく~」

『……』


…またため息をつかれた。何でだろ?



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