24,最低のオチ
_________
7月×日。
今日未明、新潟県○○市のトンネル内で○×市の工場従業員 山口濱治さん(36)が遺体で発見された。遺体の損傷が激しく、山口さんは現場から40キロ離れた自宅近くの工場へ徒歩で早朝出勤する途中、車に引っかけられ、遺体発見現場までそのまま引きずられていったと見られる。詳しい状況を県警が捜査中で、山口さんを引きずってきたと見られる車両の発見に務めている。
_________
休み時間、大介は携帯電話で浩樹の書いた「真・無形人間完結編」を読んで、大喜びした。
「おおっ! すっげえー! 面白れえじゃん! 浩樹君、やったな!、傑作じゃんか?」
すげえすげえと大喜びする大介を、浩樹は思いっきり寝不足でしわしわした目でムスッと眺めていた。
「なんなんだよ?」
浩樹は思いっきり不愉快に大介をなじった。
「大介君、君、なんでそんなに元気なんだよ? ていうか、なんで生きてんだよ?」
「悪りい悪りい」
と、全然悪びれずに大介は謝った。
「いやあ〜〜、浩樹君が頑張って書いてくれたおかげかなあ〜〜? すっかり快眠して元気はつらつになっちゃったよ。はっはっはー」
白々しい大介の態度に浩樹の機嫌はますます悪くなっていく。何を言いやがるか、朝登校してくると先に教室にいた大介は浩樹に開口一番、
「よっ!、おっはよおー、大先生!」
と、思いっきり上機嫌に挨拶したのだ。昨夜殺されかかって?べそをかいていた奴の顔か!?
どうやら担がれていたようだ、と考えざるを得ない。
「真・無形人間」のイベントもすっかり下火で、頭のいい、大介はもう一盛り上げしてやろうと企てたのだろう。更新も削除もコメントの書き込みも誰でも自由自在なのだから!
大介はあっけらかんと笑っている。太った頬がてかてかと実に健康的だ。
「まっ、いいじゃないか。いや、マジでさ、傑作だと思うぜ? こんな精神のねじれまくった暗黒小説、よく書けたよな? いや、脱帽だ。はっはっはっは」
浩樹は暗い瞳で、
こんな奴、絶交してやる、と思った。
倉岳拍子よりのメッセージ
※ ※ ※ ※ ※
▽いやあ、ごめんなさい。
えーと……、全部説明しますね。
わたしたち、みんなグルです。
えーと、「桐山容堂」をお気に入りにしていた作家たち、全員です。
すみません。君を除いて。
えーとですね、
言い出しっぺはわたしです。ごめんなさい。
桐山容堂さんがあんなことをしたものだから、ちょっと腹が立ちまして、盛り上げるのと一緒に、ちょっと困らせてやろうかと悪巧みしまして、
さっそく「逆お気に入りユーザ」にリストされた作家さんたちにメッセージを送りました。チームを組んで盛り上げませんか?と。ところが君の場合………
桐山容堂個人にメッセージを送っていたでしょう?
真面目なファンだなあと思って、悪巧みに誘うのに気が引けちゃいまして。そうしたら「ディープ・レッド」君が、君を自分のクラスメートの友人だと教えてくれまして、申し訳ないんですけれど君には観客役を引き受けていただこうかと………。
「カンニング・レクサー」も「星輪クラリス」も「無名のモンスター作家さん」も、それぞれホラー常連作家たちの変名です。それぞれ他の作家さんの作風を真似したりして楽しんで書いておられたようですが。お察しの通り「無名さん」は「ジェイソンXYZ」さんです。彼はそのまんまですね(笑)。
それぞれにひどい悪口の感想を送っていたのも、大半は我々自身です。一般の読者さんたちはなかなか評価したり感想送ったりしてくれませんからねえ? その目的はこれをイベントとして盛り上げるためです。ひどい手口でしたが、アクセス数を見る限り成功だったと威張ってもいいんじゃないでしょうか?
あ、わたしの書いた「悪魔の未完小説」は、言うまでもなくでっち上げです。すみません。
もちろん「ジェイソンXYZ」さんも左右揃ってピンピンしています。そうそう、彼のユーザページを「炎上」させるのは苦労しました。単純に物量作戦でしたからね。一番積極的に参加してくれたのはジェイソンXYZさん本人です。それは俺の役回りだろうと、自ら立候補してくれました。
「桐山容堂」のユーザページをジェイソンXYZさんにクローズしてもらったのも、「霧山洋堂」の名前で「真・無形人間」を開設したのもわたしです。これはよりイベントを盛り上げるのと、本家桐山容堂に対する嫌味です。自分の作品投げ出してどうするんだよお?と。ねえ?
元のユーザページのログインパスはこっそり元に戻しておきました。
そうだ、このイベントは君と「ディープ・レッド」君の競争でもあったんですよ?
君に渡したメモは同じ物をディープ・レッド君にも渡していました。彼にはたっぷり時間があったので有利でしたね。アイデアを整理して、自分なりの設定を盛り込んで分かり易く面白いエンターテイメントに仕上げていました。
「リュウ・ライター版完結編」もわたしは好きです。きっと君にとっては時間がなくて不本意だったと思いますが、科学者の狂気が生々しく出ていて、なかなか迫力があって怖かったです。ありがとうございました。
ああ、念のため言い訳させてもらいますと、君にも書いてもらったのはディープ・レッド君の要望ですからね? わたしは彼の「お芝居」におつき合いしただけです。クレームは彼にたっぷり付けてください。
さて。
まあこのイベントもここらが潮時でしょう。
「霧山洋堂」のページはわたしが開設した物ですから(本家には無断ですけれどね。丸投げしちゃってるんですから、いいですよね?)これまでに発表された「完結編」をそれぞれ独立した作品として収録し直そうと思います。もちろんディープ・レッド版も、リュウ・ライター版も、よろしいですよね?
というわけで、変更したログインパス教えてください。
君を本気にさせるために余計な手間になっちゃったなあ(笑)。
これで、ねえ? 本家さんがちゃんとした完結編を書いてくれればいいんですけれど、ねえ?
奮起を期待して待ちましょう。
それではまた。
リュウ・ライターさんの新作も楽しみにしています。
※ ※ ※ ※ ※