16,イベント終了?
「秘密実験バージョン完結編」はなかなか好評なようだった。
他でもない噂の?倉岳拍子が絶賛の感想を送っていた。
▼良い点
難しい謎に見事な解答を与えている。
▼悪い点
オリジナルには書かれていない登場人物のキャラクター性が創作されている。ギリギリのところだと思うがやりすぎるとなんでもありになってしまう一歩手前。
▼一言
どなた様か存じませんが見事な完結編でした。
与えられたヒントと条件の中でどれだけ面白い物語を完成させられるかの勝負でしたが、更に大きく設定を膨らませた快作と言っていいと思います。
SF方向に走りすぎた嫌いはありますが、多少整合性を壊しても突出した部分がある方がホラー的で気持ちいいです。かなり「ホラー」を分かっていらっしゃる愛好家の方とお見受けします。わたしも存分にホラー的趣味を満足させていただきました。
わたしも元々オリジナルの「無形人間」には注目していて完結を楽しみにしていましたが、ようやく完結しましたね。
100点満点です。
ありがとうございました。
「相変わらず偉そうにくどい文章だよなあ?」
と言いつつ、翌日学校で大介はこれ以上なく上機嫌だった。
そう、この倉岳拍子という人は気に入った作品があると割とこまめに(自分の作品同様)長い感想を書いて送っている。
実は浩樹=リュウ・ライターも短編に褒めちぎりの感想を一度もらったことがあり、やっぱり相当嬉しかった。まあ1作切りで、「お気に入りユーザ」にも登録してもらっていないが。浩樹は「お気に入りユーザ登録」してやったのに、やたらと褒めるくせに、けっこうシビアだ。だいたいこの人は女の作者に甘い。感想を送るのもお気に入りユーザに登録しているのも8割以上女だ。いい年したおじさんのはずだが、職場に全然若い女がいないのだろう、いまだに女に対して幻想を抱いて、絶対独身だ。
今回は珍しく男(?)の作者の作品を褒めちぎっているが。
なんか腹が立つので浩樹はもう一度大介に訊いた。
「ねえ。あの完結編書いたの、やっぱり大介君なんじゃない?」
「ええ〜? 違うって言ってるじゃんかよお〜〜」
と言いつつ、その顔にはあからさまに
『そうだよ〜〜ん、俺様が作者様なんだよ〜〜ん』
と書いてあるようで、まったく、しゃくだ。
これまでの完結編には「くだらない」とか「つまらない」とか「面白くない」とか「ゴミ」とか、
「一言悪口」みたいな感想ばかりが多く目立ったが、今回は肯定派も否定派もちゃんと「自分の意見」を述べた感想が多い。感想受付の設定も(ユーザからのみ)に設定されたままで(←浩樹は過去の犯罪を思い出して胃が痛くなる)、感想はちゃんとユーザ名を名乗って書かれている。
シリアスなホラーファンが集っている感じで微笑ましいが、ただ、寄せられる感想の数はこれまでと比べるとずいぶん少ない。そして、
アクセス数は日を追って半減していった。
それもしょうがない。だいたい「小説家になろう」の作品はいったん完結してしまうと、その時はアクセスが跳ね上がるが、それもせいぜい3日程度の間で、その後ははっきり激減していき、人気ランキング上位のごく少数の定番人気作を除いては、1日のアクセスが1、2、……0、なんてのが当たり前になってしまう。まあ次から次に新しい作品が発表されてデータがリストの後方に下がっていくのだから仕方ないが。そうしてすっかり日の目を見なくなってしまった過去の傑作名作も多くあるはずで、もったいないことだ。
「秘密実験バージョン」で「無形人間」は完結したと見なされ、もはや新しい更新はなく、「真・無形人間」はどんどん古い作品になっていき、また誰も顧みない過去作になってしまうのだ。
寂しいが、
どうやら「無形人間」のイベントはこれで終了のようだ。
浩樹には結局桐山容堂本人からのコメントが何もないのが物足りないし、やっぱり尻切れトンボのままで、残念だ。
ところで、
「秘密実験バージョン」を書いた作者の元に、物語から抜け出した殺人鬼は現れなかったのだろうか?