第3話
―コールドウェル辺境伯領 リハンメル 冒険者ギルド―
俺は、受付のお姉さんに導かれギルドの奥へと向かい、応接室のような扉のドアを開けた。
するとそこには筋骨隆々で髭を生やした大男が鎮座していた。
「よぉ、あんたが魔石を切ったっていう新人かい?」
応接間に鎮座するギルドマスターは割れた魔石を興味深そうに見つめながら話しかけてくる。
「俺は北部冒険者ギルドのギルドマスターのスコーチ・ダスクブレイドだ。よろしく頼む」
ギルドマスターが握手を求めてくる。
「ご丁寧にどうも。ギルバート・コールドウェルと申します」
握手に応える。
そのまま両方ソファーに座り、テーブルを挟んで対面する形で話す。
「コールドウェル辺境伯家の…!これは少々失礼が過ぎましたかな…
……いや、その生まれで推薦状が無いまま冒険者登録をするということは、おそらく何かしらの事情があるのでしょう。
過度な詮索はやめておいたほうが良いですかな…?」
流石だ、こちらの事情をある程度察してくれたようだ。
気遣いもできるとは、やはり上に立つものは違うな。
「お気遣いありがとうございます。
実は今日親に勘当されてしまいまして…、なので収入のために冒険者登録をしたいんですよ。
それで…なぜ直接お話したいと?
もしかして魔石になにか問題でもありましたかね…?」
「魔石はこの状況でも買い取れるから安心して欲しい。
それよりも聞きたいのは君についてだ」
鍛えられた腕がまっすぐこちらを指す。
「俺についてですか?」
「推薦状が無くてかつその年齢だと、本格的な戦闘の経験はないだろう?」
「そうですね」
「なら尚更だ…。
君、魔石の硬度は知ってるかい?」
「いえ、知りませんね」
「魔石っていうのは物質のなかでもかなりの硬度を誇る。だから普通に剣で斬ろうとすると普通は剣のほうが欠けるんだよ。
だが、技術と力さえあればできないってわけじゃない。
この切断面を見て欲しい」
そう言ってギルドマスターは俺が割った魔石を見せてきた。
そんなに珍しい物ではないがなんだろうか?
「この切断面は粗くはあるが、両方が隙間なくぴったりと合うんだ。
これは、魔石が割れたのではなく、切断された事を意味する。
君はまともな経験がないままこれをやったんだ。とんでもない才能だ。誇っていいよ」
そう言ってギルドマスターは軽く拍手をした。
しかし、いくら魔石が硬いと言えどそんなに持ち上げられるようなことだろうか?
「実力のある人にそう言っていただけるのはありがたいのですが……流石に買いかぶり過ぎですよ」
「いや、全く買いかぶりではないさ。
しかし、君は本当に謙虚だな………。
よし、気に入った!君に専属の教育係を付けよう。
かなりの実力者を割り当てるから期待してくれよ?」
ギルドマスターはニカッと笑い肩に手を乗せてきた。
「いいんですか?ありがとうございます!」
その道のプロフェッショナルから学べるのはいい機会だろう。
この機会を最大限有効活用するとしよう。
「丁度、最近遠征から帰ってきた冒険者の中で適任そうな奴がいるんだ。
話をつけてくるから、一旦ここで待っててくれ」
「いいんですか?本当に何から何までありがとうございます」
「なに、良いってことよ。新人育成もギルドの仕事の一つだからな」
そう言ってギルドマスターは応接室から出た。
―――――――
少し待っていると、ギルドマスターと一人の女性が入ってきた。
そのまま慣れたように隣のソファーに座り、こちらに強い興味があるのかジロジロと見てくる。
「あなたがマスターが話してた人?
想像してたのよりあまり頼りないのね」
黒髪のショートカットに青のインナーカラー、鍛えられて引き締まった体、高身長でスラッとした体型、だが出るところはしっかりと出ている。
顔も皆の注目を受けるであろう程に整っており、目は金色で凛とした印象を受ける。
スタイルも顔も抜群。まさに完璧な美女だ。
第一印象はあれだがそれを補って余りあるだろう。
「なにジロジロ見てんの?」
「綺麗な方だな…と思いまして」
「…褒めても何も出ないからね」
彼女は少し顔を赤らめてそう言った。
さてはこいつチョロいな?
「彼女はイリア・グリムヴァルド。このギルドのなかでも数人しかいないSランク冒険者の一人だ」
ギルドマスターから説明がされる。
「ギルバートと申します。よろしくお願いします。グリムヴァルドさん」
「イリアでいいわ、よろしく」
若干面倒くさそうに握手を交わされる。
「あなた、職業と装備は?」
「職業は【剣士】、装備はこの服とこの剣だけですね」
そう言って錆びた剣を出す。
「……あなた、これで魔石を切ったの?」
イリアさんが目を丸くして聞いてくる。
「はい。その通りです」
「マスターがやけに肩入れする理由もなんとなくわかるわ…。
とりあえずロビーに移動しましょ、あなたの装備買ってあげるから」
「そこまでしてもらってもいいんですか?」
「いいのよ。大して痛手でもないし」
「ありがとうございます!」
俺は、イリアさんに導かれ、ギルドのロビーへと向かった。




