第1話
俺はギルバート・コールドウェル、16歳。
アルカナム王国の極北を治めるコールドウェル辺境伯家の長男であり、日本からの転生者だ。
この世界では、16歳になったら【職業獲得の儀】が行われる。
【職業獲得の儀】とは、神の力により才能を可視化する儀式であり、これでその者の未来がほぼ決定すると言っても過言ではない。
今日はそんな重要な儀式の日であるというのに、俺の親や弟妹達は皆、冷めた目でこちらを見つめていた。
―教会―
「ギルバートよ」
俺の父、ローワン・コールドウェルが重々しく口を開く。
「お主は魔術の名門と名高い我がコールドウェル家の長男だというのに、その才能は弟妹の誰よりも劣る。
この【職業獲得の技】で魔術系の職業を獲得しなければ………わかっておろうな?」
「はい、父上。今度こそご期待に応えてみせます」
我ながらまるで心の籠っていない発言だが、それを看破できない父は、満足したのか神父を呼び寄せる。
どうやら体良く演じてやるだけで満足するらしい。
全く、ゲームで見たときも思ったが、相変わらずバカな奴だ。
この世界は俺が転生する前にやり込んでいたゲームである、『ピラティス・オンライン』というVRMMOの世界だ。
その世界において、職業はこう定義されていた。
“血筋、及び本人の願望で決定される”
不確定要素があるのになぜ子供の職業をコントロールできると思っているのだろうか。
本当に疑問である。
「あのー……職業授与を行ってもよろしいでしょうか…?」
ピリピリとした空気感に気圧されたのか、神父がおずおずと申し出てくる。
「ああ、問題はない。やってくれ」
神父の掲げた水晶玉が強く光り輝き、その瞬間、熱い何かが体のなかに流れ込んだ。
「出ました。職業:【剣士】です」
「………」
「………」
「………」
父、俺、神父、全員が沈黙する。
「【剣士】…?」
父が拳を強く握りしめながら話す。
「…魔術系職業ではないだと………
魔術系でなくとも高位の職業だったならば許してやったものの……初級だと……?
神父様。なにか間違いでもあったのでは…?」
「…授かる職業の内容は、本人の経験が影響することも稀にあります」
父がこちらを睨んでくる。
咄嗟に目を逸らす。
【剣士】って絶対前世の影響でしょ……
「お前………修行をサボっていたな!
遅れを取り戻させてやろうと私自ら鍛錬につきあってやったというのに…
私の苦労を無駄にするとは……恥を知れ!恥を!」
こちらを見る父の目はだんだん鋭く、そして冷気と怒気を帯びたものとなっていく。
空気は張り詰め、重々しく、ピリピリとしたものになっていく。
しばらく説教が続いた後、父上はこう言い放った。
「…お前には失望した。お前にコールドウェル家の長男を名乗る資格などない。
今日をもって貴様との縁を切る。もう2度とコールドウェルの姓を名乗れると思うなよ」
「まっ、待ってください父上!いくらなんでも性急すぎませんか?」
「お前の荷物はこちらで処分しておく。だからさっさと出ていけ。二度と目の前に現れるな」
父はそう言った後、俺を教会から追い出した。
どうやら荷物をまとめる時間すらくれないらしい。
―コールドウェル辺境伯領 北の森―
「あーーー…やっとあいつらから離れられた。清々《せいせい》するわ」
コールドウェル家は代々王国に使える名門の魔術師の家系であり、ドラゴンやリヴァイアサン、バハムートなど様々なモンスターの脅威から王国を守ってきた。
父はその名声に溺れたのか、はたまた維持しようと必死だったのかは知らないが、やけに面子を気にしていた。
だからか父は魔術が禄に使えない者を蔑み、懲罰を与えていた。
家に魔術以外の訓練道具が無かったことからもそれが伺える。
一種の洗脳教育だから理にかなってはいたのだろう。
転生者の俺にとっては馬鹿げた行動にしか思えないが。
「しかしどうしたものか……」
家を追い出された俺は路頭に迷っている。
辺境伯家の長男と言えど、落ちこぼれだったため大したコネはない。
頼れる人もパッと思い浮かばないし…
とりあえず稼ぎが必要だろう。
「まぁ、冒険者かな」
前世のゲームの知識を活かせるのはこれだろう。
前世での職業は【剣聖】を選択していたからな。
もちろん不安がないとこもない。
総プレイ時間5万時間超えとはいえ、流石に画面上で見るとの実際にやってみるのでは、色々とかなり違うからな。
それに前世・今世ともに剣術の経験はないし。
だが、幸いというべきか、魔術の鍛錬のおかげである程度の戦闘の経験はある。
まぁ、何をするにしてもとりあえず街に向かう必要がある。
「でもその前に……スキルを試してみるとしますか!」
俺は、丁度いいモンスターを探しに森の奥へと向かった。




